クール・ブリタニア クール・ブリタニアの問題

クール・ブリタニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/12 03:22 UTC 版)

クール・ブリタニアの問題

「クール・ブリタニア」の真の目的はさておき、「クール・ブリタニア」という言葉は、ファッショナブルなロンドンのポップカルチャー・シーンを表現するのに一般的に広く使われるようになった。ブラーオアシススウェードスーパーグラスザ・ヴァーヴスパイス・ガールズなどのミュージシャン、あるいはファッションデザイナーやファッショナブルな雑誌、日本風のレストランYO! Sushiなどがその対象である。また、アメリカアイスクリーム会社『Ben & Jerry's』が英国国内で販売するアイスクリームの商品名を「クール・ブリタニア」と名づけた。1998年エコノミスト誌は「すでに多くの人がうんざりし始めた」と記述、2000年までにはクール・ブリタニアは「皮肉か愚弄の意味でしか使われなくなるだろう」と予言した[10]

同じような現象をウェールズスコットランドにも当てはめようと「クール・カンブリア」や「クール・カレドニア」といった用語がそれぞれに生まれたが[11][12]、その用語に内実はなく、今日に至るまで誰もほとんど聞いたことがないという状態である。

2000年代、クール・ブリタニアの収束

ブリットポップは次第に収束し、ヤング・ブリティッシュ・アーティストの活動も一段落し、流行語としての「クール・ブリタニア」は完全に死語と化した。またブレア政権も当初の輝きを失い人気が凋落し、対立する労働党の有力者ゴードン・ブラウンは近年「クール・ブリタニア」ブランドに否定的であり「伝統的なイギリス的なもの」をもっと強調するべきと考えている。芸術界やポップカルチャー界でも、クール・ブリタニア政策のクリエイティブ産業振興策はイギリス文化を質的に向上させたのか、支援すべき分野に本当に資金が回ったのかとの自問がある。

クール・ブリタニア政策でクローズアップされた観光・文化施設は、イギリスの新しい観光名所となった。近年は日本でも新しいイギリス文化、たとえば音楽シーンや舞台、デザイナーズホテル現代建築、デザイン・現代美術のミュージアムなどを観光目的に選ぶ人もいる。イギリスは単に伝統の国ではなく、「伝統とモダンが溶け合う国」との認識も広がった。

日本へのクール・ブリタニアの影響

日本でも製造業が中華人民共和国などに押される中で、1980年代から世界的大流行を果たしたビデオゲームを筆頭に漫画アニメオタク文化などのポップカルチャーを前面に押し出した形での海外からの観光客誘致や、文化に根ざした新産業創出により失業克服や産業転換をはかろうとする動きがあった国家イメージの希薄化・悪化への対処のために国家ブランド戦略を立てる動きもある。ここにはクール・ブリタニア政策のある程度の成功も影響を及ぼしている。

2002年、アメリカのジャーナリスト、ダグラス・マグレイが外交問題専門誌フォーリン・ポリシーに『日本のグロス・ナショナル・クール(Japan's Gross National Cool)』を掲載し[13]、日本国内でも話題になった。彼によれば、日本のアニメや漫画、キャラクター・グッズなどそのポップカルチャーは世界に広がっている。ただし、日本のポップカルチャーの理論化や世界への英語での発信などの不足、そして国家ブランド戦略の不在によりポップカルチャーの広がりには障害があり、また日本自体のブランドイメージは貧困なままであると述べている。

その後日本でも「クール・ジャパン(ジャパン・クール)」と呼ばれる標語が生まれた。


  1. ^ a b Stryker McGuire (2009年3月29日). “This time I've come to bury Cool Britannia”. The Observer. http://www.guardian.co.uk/politics/2009/mar/29/cool-britannia-g20-blair-brown 2013年5月22日閲覧。 
  2. ^ 「クール・ブリタニア」と「クール・ブリタニカ」 経済・社会政策部 主任研究員 太下 義之、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2009年10月19日
  3. ^ http://news.bbc.co.uk/2/hi/458626.stm
  4. ^ http://www.demos.co.uk/
  5. ^ http://markleonard.net/journalism/coolbritannia/ markleonard.net: Journalism: Cool Britannia
  6. ^ J. Ayto, Movers and Shakers: a Chronology of Words that Shaped our Age (Oxford: Oxford University Press, 2006), ISBN 0-19-861452-7, p. 233.
  7. ^ 英国の「クリエイティブ産業」政策に関する研究~政策におけるクリエイティビティとデザイン~ 木下義之、季刊 政策・経営研究、2009年、Vol.3、p.122
  8. ^ Ben&Jerry'sフレーバー、フレーバーの墓場
  9. ^ London Rules”. 2013年5月22日閲覧。
  10. ^ Leaders: Cool Britannia. The Economist. London: Mar 14, 1998. Vol. 346, Iss. 8059
  11. ^ Is it Cool Cymru - again?
  12. ^ 'Cool Caledonia' sells Scotland short
  13. ^ Japan's Gross National Cool - By Douglas McGray | Foreign Policy 2002/05/01


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