イギリス気象庁 予報

イギリス気象庁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/11 09:53 UTC 版)

予報

気象予測モデル

洪水予報センター

季節予報

放送事業者への予報の提供

特に、大手メディアのうちの2社、BBCITVは英国気象庁のデータを用いて予報を制作する。BBCウェザーセンターでは、コンピュータまたはFAX、電子メールなどにより寄せられた情報に基づいて、予報は連続的に更新される[8][9]BBCの新しいグラフィックス英語版は、BBCの全てのテレビジョン放送の気象情報で使用されているが、ITVウェザー英語版はアニメーション化された天気マークを使用している。BBCウェザーセンターの予報士は、BBCではなく、英国気象庁に雇用されている[10]。2015年8月23日、BBCは受信料支払者にとって、その金額に見合った価値の情報を提供するために、その法的債務の一部として、英国気象庁の代わりに、競合する民間気象サービス会社であるMeteoGroup英語版と契約することを発表した[11][12]。ただし、英国気象庁のデータを使用する海事沿岸警備庁を代表して発表するShipping Forecastと、英国気象庁によるNational Severe Weather Warning(荒天警報)の発表は継続される[13]

航空路火山灰情報センター

航空気象予報業務の一環として、英国気象庁はロンドン航空路火山灰情報センター (London Volcanic Ash Advisory Centre, London VAAC) を運営している[14]。VAACは、航空産業に対して、航空機の飛行経路に侵入して航空の安全を脅かし得る火山灰雲の予報を提供するために、国際連合の専門機関の一つである国際民間航空機関 (ICAO) を中心に、世界気象機関 (WMO) と国際測地学・地球物理学連合 (IUGG) の協力の下に推進された、国際航空路火山灰監視計画 (International Airways Volcano Watch, IAVW) の一環として設立された[15][16]。世界の9か所に設置されているVAACの一つであるロンドンVAACは、ブリテン諸島、北東大西洋及びアイスランドを責任領域としている。ロンドンVAACは、衛星画像に加えて、責任領域内の全ての活火山が位置するアイスランドから送られてくる、地震観測、レーダー観測、目視による観測のデータを利用する[17]。英国気象庁が開発したNAME拡散モデル英語版は、異なるフライトレベルで警戒情報の発表時刻から6時間先、12時間先、18時間先の火山灰雲の移流拡散を予報するために利用されている[16]

大気質

英国気象庁は、独自の中長距離大気拡散モデルであるNAME英語版を用いて作成された、大気質の予報を発表する。NAMEは元々、1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故を受けて、原子力事故モデルとして開発されたものであったが、以来、多目的拡散モデルへと進化し、幅広い種類の大気浮遊物質の輸送、変態、沈着を予測することが可能になった。NAMEは平時の大気質予報に用いられるだけでなく、緊急時対応モデルとしても使用される。エアロゾルの拡散はUKCAモデル (United Kingdom Chemistry and Aerosols modelを用いて計算される。

大気質の予報は、下表に示す様々な汚染物質とそれらが典型的に健康にもたらす影響のために作成される。

汚染物質 高レベルな健康への影響
二酸化窒素
オゾン
二酸化硫黄
これらの気体は肺の気管に炎症を起こし、肺の病気を患っている人の症状を増大させる。
微粒子 大気中の微粒子は肺の深くまで運ばれることがあり、炎症を起こして心臓病や肺疾患を悪化させるおそれがある。

IPCC

2001年まで英国気象庁は、ジョン・ホートン英語版を議長とする気候変動に関する政府間パネルの気候科学に関するワーキンググループを主催していた。2001年に、そのワーキンググループの場はアメリカ海洋大気庁に移された[18]

高性能コンピュータ

数値予報業務とUnified Model英語版の運用には大量の演算を要するため、英国気象庁は世界で最も強力なスーパーコンピュータのいくつかを所有してきた。1997年11月には、英国気象庁のスーパーコンピュータは世界第3位にランクインした[19]

導入年 コンピュータ 一秒あたりの演算回数 水平解像度(全球/局地) 鉛直層数
1959 Ferranti Mercury英語版 3 KFLOPS (N.A./320 km) 2層
1965 English Electric KDF9英語版 50 KFLOPS (N.A./300 km) 3層
1972 IBM System/360 195 4 MFLOPS (300 km/100 km) 10層
1982 CDC Cyber英語版 205 200 MFLOPS (150 km/75 km) 15層
1991 Cray Cray Y-MP C90英語版/16 10 GFLOPS (90 km/17 km) 19層
1997 Cray T3E 900/1200 430 GFLOPS (60 km/12 km) 38層
2004 NEC SX-6 2.0 TFLOPS (40 km/12 km) 50層
2006 NEC SX-8とSX-6 5.4 TFLOPS (40 km/4 km) 50層
2009 IBM POWER6 140 TFLOPS (17 km/1.5 km) 70層
2015 Cray XC40英語版 16 PFLOPS 1.5 km

注釈

  1. ^ この名称は当初、旧来の正式名称であるMeteorological Officeの略称であったが、その後この略称が定着し、2000年11月に公的に正式名称として採用され[1]、使用されている。
  2. ^ United Kingdom Meteorological Officeの略。
  3. ^ 一定時間ごとの天気図を順に並べて概観し、動きと変化の激しい大気の状態を解析すること[2]

出典

  1. ^ Meteorological Office Archive”. 2013年12月5日閲覧。
  2. ^ スーパー大辞林
  3. ^ Ronalds, B.F. (2016). Sir Francis Ronalds: Father of the Electric Telegraph. London: Imperial College Press. ISBN 978-1-78326-917-4 
  4. ^ Ronalds, B.F. (June 2016). “Sir Francis Ronalds and the Early Years of the Kew Observatory”. Weather 71: 131–134. doi:10.1002/wea.2739. 
  5. ^ UK Met Office switches departments in Whitehall shake-up”. Clickgreen.org.uk. 2011年7月18日閲覧。
  6. ^ Machinery of Government Changes:Written statement - HCWS94”. Hansard. Hansard (2016年7月18日). 2016年7月22日閲覧。
  7. ^ Met Office defence: Supporting operations” (2014年5月13日). 2007年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月30日閲覧。
  8. ^ Producing Weather Broadcasts”. BBC Weather. 2010年5月15日閲覧。
  9. ^ How the weather is forecast”. The Met Office (1954年1月11日). 2007年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年5月15日閲覧。
  10. ^ Met Office loses BBC weather forecasting contract”. BBC News. 2015年8月23日閲覧。
  11. ^ “Met Office loses BBC weather forecasting contract”. bbc.com. (2015年8月23日). http://www.bbc.com/news/uk-34031785 2017年6月24日閲覧。 
  12. ^ BBC weather contract awarded to MeteoGroup”. MeteoGroup. 2017年6月24日閲覧。
  13. ^ Charters, Nigel (2015年8月24日). “BBC Weather: Why we run an open competition for the service”. BBC. 2017年6月24日閲覧。
  14. ^ London VAAC”. Metoffice.gov.uk (2008年11月19日). 2007年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年5月15日閲覧。
  15. ^ International Airways Volcano Watch”. Icao.int (2010年3月26日). 2010年5月15日閲覧。
  16. ^ a b 火山灰の輸送シミュレーションと航空路火山灰情報” (PDF) (2010年12月9日). 2016年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月24日閲覧。
  17. ^ Overview of VAAC Activities presentation[リンク切れ]
  18. ^ Pearce, Fred, The Climate Files: The Battle for the Truth about Global Warming, (2010) Guardian Books, ISBN 978-0-85265-229-9, p. XVI.
  19. ^ Mark Twain, Kevin McCurley. “United Kingdom Meteorological Office | TOP500 Supercomputing Sites”. Top500.org. 2010年5月15日閲覧。
  20. ^ Reason and Light”. New Statesman. 2008年4月22日閲覧。


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