アルキン アルキンの概要

アルキン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 20:15 UTC 版)

アルキンの一般構造
最も単純なアルキン、エチン(アセチレン)の空間充填モデル

構造

π結合の模式図。アルキンは互いに直交する2つのπ結合とσ結合からなる三重結合を持つ

アルキンの2つの炭素原子の電子軌道は共にsp混成しており、それぞれ2つのp軌道と2つのsp混成軌道を持つ。各炭素原子はsp軌道を1つずつ提供し、それらが重なることによりσ結合を形成する。また、p軌道同士が重なり合うことによって作られる2つのπ結合も持っている。合計3つの C−C 結合からなるため、これは三重結合と呼ばれる。残りのsp軌道は他の原子とσ軌道を作る。例えば親化合物であるアセチレンでは水素原子と結合している。アルキン上の2つのsp軌道は互いに反対向きに位置しており、アセチレンでは H−C−C 結合角は180度である。合計6個の電子が関与しているため、この三重結合は非常に強く、結合エネルギーは 837 kJ/mol である。個別の結合エネルギーはσ結合 369 kJ/mol、1つめのπ結合 268 kJ/mol、2つめのπ結合 202 kJ/mol である。C−C 結合距離は 121 pm であり、これはアルケンの 134 pm、アルカンの 153 pm と比べ短い。

命名法

IUPAC命名法では、語幹に -yne を付加することによって命名する。つまり、対応するアルカン alkane の語尾 -ane を -yne に変えればよい。三重結合の位置は位置番号で表し、これが最も小さくなるように番号を与える。アルキンを2つ以上含む場合は数辞を付け -diyne (ジアルキン), -triyne (トリアルキン), ... とする。例えば、 は 1-ブチン 1-butyne、 は 2-ペンチン 2-pentyne、は ノナ-2,5-ジイン nona-2,5-diyne である。親化合物 HC≡CH は許容慣用名アセチレン acetylene を持つ。

アルキニル基

アルキンの水素原子を1個取り除いた形である1価の置換基はアルキニル基(—き)と呼ばれる。三重結合上の水素を除いた場合はエチニル基 ethynyl (HC≡C−) など、その他の鎖上の水素原子を除いた場合はプロパ-2-イン-1-イル基 prop-2-yn-1-yl (HC≡CCH2−) などのように呼ぶ。後者は特に慣用名プロパルギル基で呼ばれることも多い。エチニルベンゼン ethynylbenzene (HC≡CC6H5)、プロパルギルアルコール propargyl alcohol (HC≡CCH2OH) などのように用いる。

末端アルキンと内部アルキン

アルキンはsp混成軌道でσ結合を作ることにより、各炭素原子上に1つずつ、計2つの置換基を持つことができる。このうち片方が水素原子と結合しているものを末端アルキン(まったんアルキン、terminal alkyne)と呼ぶ。例えば示性式 CH3C≡CH で表されるプロピン(メチルアセチレン)がその例である。

これに対し、2つの炭素原子上に共に水素原子以外の基を持つものを内部アルキン(ないぶアルキン、internal alkyne)と呼ぶ。置換する基はヘテロ原子である場合もある。2-ペンチン 2-pentyne などがその例である。これは示性式 で表され、2つのアルキン炭素原子はそれぞれメチル基とエチル基を持っている。


  1. ^ Ohira, S. Synth. Commun. 1989, 19, 561.
  2. ^ Müller, S.; Liepold, B.; Roth, G.; Bestmann, H. J. Synlett, 1996, 521. DOI: 10.1055/s-1996-5474
  3. ^ Deadly chinese mushrooms: Amino acids revealed as cause of deaths in Yunnan province., Internetchemistry.com, 2012年2月12日


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