ひねり飛車 主な指し方

ひねり飛車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 08:23 UTC 版)

主な指し方

先手(ひねり飛車)

角田流
角田三男は図1-1aのように角道を開けずに▲9七角(端角)に構えてから▲8六歩△同歩▲8六飛とぶつける指し方であった。この戦型は後の1982年6月 棋聖戦予選決勝、森雞二vs.真部一男戦で先手番の森が採用して勝利し、挑戦権獲得と以降の棋聖位奪取につなげる。
先手角田三男対後手山中和正戦 昭和33年度C級1組順位戦
△ 持ち駒 なし
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先手森けい二対後手真部一男戦 昭和57年度棋聖戦予選
△ 持ち駒 歩
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丸田流
創始者は丸田祐三。後手が飛車先を交換してきたとき、8筋に歩を打たずに▲9七(丸田新手)と上がり、2歩を手持ちにして主導権を握る指し方である。△8九飛成には▲8八角でふたをして▲8六飛と回る構想。
かつてはひねり飛車における代表的な指し方だったが、相掛かりの新旧対抗型が指されなくなったこともあり、従来6二に上がっていた右を7二と上がり、9筋を突き合う、さらに飛車先交換をして来ないなど、後手の対策が進んだため、現在では上級者の対戦ではこの局面を避ける指し方になったが、定跡書などでは現在も掲載されている。
△山田 持ち駒 歩
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△三枚堂 持ち駒 なし
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後手が△6二銀ではなく△7二銀型で▲9六歩-△9四歩型であると、丸田流の▲9七角では、△9五歩▲同歩△8九飛成▲8六飛△9九龍で、△7二銀型も効いてくる。したがって先手は角を端に行く前に▲8五歩としておくと、以下△6三銀▲7六飛△3四歩▲6八銀△3一玉▲3九玉で一局となる。
後手角道が止まっている陣形ならば▲8五歩に替えて▲6六飛という手もあり、これは6四の歩取りを見せて、△6三銀と移動させてから▲9七角と上がる構想である。以下△9五歩には▲同歩△8九飛成▲8六歩△9九龍に▲8一飛成△7二銀▲9一龍で△9七龍には▲6三香がある。類似の実践として平成30年4月の新人王戦、▲斎藤明日斗vs△三枚堂達也戦がある。先手が図のように構え、以下△3四歩▲8六飛△8四歩▲6八銀△3一玉▲3九玉△7二金▲7六飛△5四銀▲7四歩△同歩▲6四角と攻めてひねり飛車側が快勝している。▲6六飛には△3四歩▲6四飛△8七歩▲9七角△9五歩▲7四歩の展開も一局である。
勝浦流
創始者は勝浦修。勝浦の別名から「カミソリ流ひねり飛車」とも呼ばれた。通常の石田流では左銀を6七に上がって攻撃に使うことが多く、ひねり飛車においてもそれが当然視されていたが、銀を5七に上がり場合によっては囲いの一つとして利用しようという指し方が考案され、一時流行した。ひねり飛車の玉の薄さを補うための工夫である。特にたこ金に有効とされ、ひねり飛車持久戦型として定跡となっている。ただし攻撃力が若干落ちるため、後手にも右金を自由に使われてしまうことがわかり、ひねり飛車を衰退から回復させるまでは到らなかった。
7八銀型(耀龍ひねり飛車)
創始者は青野照市で、青野流とも呼ばれる。通常の相掛かりの序盤では角頭を守るために7八には金を上がるが、初めからひねり飛車を狙っている場合は銀を7八に上がることもある。左金を円滑に5八に持っていける点が長所である。
近年では大橋貴洸が「耀龍(ようりゅう)ひねり飛車」と命名して工夫した定跡を研究している。
△中原 持ち駒 なし
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△中原 持ち駒 なし
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升田式
升田幸三升田式石田流と並んで多く採用し、加藤一二三中原誠を破った独特な指し方で、玉を坊主美濃(2七歩のない片美濃囲い)に囲い、飛車を7七にかまえるのが特色。
図2-1は1970年7月に行われたA級順位戦で、相手はA級1年生の中原誠。基本は図2-1のように後手棒金に対して先手升田は7六の飛車を▲7七飛と引いて対応する。このとき「升田流や、人には教えられん」と呟いたという。もし後手がここで△4五歩としても▲7六銀△6六角▲6七飛△8八角成▲同金で、却って先手がさばける形となる。実践では図2-2のように桂馬を▲9七桂~▲8五桂と活用し局面をリードする展開となった。その後後手陣が△3三角-△5四金型となって先手は▲2四歩△同歩▲2二歩△同玉▲4一角から▲6三角成などの攻防が続いた。
△ 持ち駒 なし
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△ 持ち駒 なし
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△ 持ち駒 なし
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7七金型(きんとうん戦法)
▲8六飛型の飛車交換強要策を実行するために金を上がる。飛車が金の上にある形になるので「きんとうん」。創始者は島本亮であるが、『将棋戦法大事典』(1985年)によると、この構えは先手が縦歩取り戦模様で飛車先交換した従来のスタイルでも以前からある。また後手が角換わりなどを拒否する3三金戦法なども以前からあった。
組み方は図3-1のとおり飛車先を交換せずに飛車をひねり、金で角交換と飛車先交換を防いで、図3-2を経て図3-3のように構える。以下後手が△8六飛▲同金△7一金▲8七金に△6九飛には▲8六飛とし、以下△8三歩▲7七金△5四歩▲7六飛で次にうちこまれた飛車がめし取ることができる。金の上の乗っている飛車が、フワフワと浮遊する筋斗雲に乗った孫悟空をイメージしている。島本が著書『戦慄の7七金!奇襲・きんとうん戦法』(マイナビ出版)で解説しており、本人も公式戦で数一局採用して、勝利している。プロでも立派に通用している。
△ 持ち駒 角
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△ 持ち駒 角
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△ 持ち駒 歩
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角交換型
図のように角換わり模様から△7七角成を▲同桂と取り、飛車を浮いて構える。後手の右銀の位置構えが図のように浮いていると升田式石田流のように▲9六角とする。以下△9四角に▲8五桂△7二金▲8六飛△8三角であると▲7三桂成△同桂に▲6三角成△同金▲7二銀△7一桂▲同銀不成△8一飛▲9五桂△7一飛▲8三飛成がある。
また、後手番の場合は後手一手損角換わり模様から図1-3のような展開が一例。

その他、塚田泰明・豊川孝弘らが創始したと思われる超急戦型(玉を囲わない)もある。

△持ち駒 歩
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△持ち駒 歩
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後手番ひねり飛車

ひねり飛車は通常先手番での作戦であるが、後手番でひねるやり方もある。

ひとつは横歩取り模様からの場合。横歩取り戦でもひねり飛車ができるのは通常は先手に限られるが、図のように横歩を取りにきたときに△3五歩とするもの。 図5-1の△3五歩に、▲2六飛ならば△8六歩▲同歩△同飛で、▲8七歩△8四飛▲4八銀△3四飛。▲2四歩には△2五歩▲同飛△3三桂▲2六飛△2五歩など。

他には1982年3月、先手五十嵐豊一 vs. 後手田中寅彦戦(第40期順位戦昇降級リーグ3組(C級1組)での手順で、後手は△2三歩を打たずに△1四歩として、以下▲2八飛に飛車先交換後△8五飛と構えて図5-2の局面から△3三桂~2五歩~2四歩としてひねり飛車にしている。田中はその後1988年の棋聖戦や2007年にも用いるなど、度々この作戦を復活させている。

後手(対ひねり飛車)

△持ち駒 なし
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△持ち駒 なし
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たこ金
△3三金の悪形を何とかしようと考え出された。この「たこ」は(海にいる「」ではなく)空に浮かべる「」である。この戦法は、△3三金→△4四金→△5五金もしくは△5四金と寄る。この金の威力で先手の攻め駒を押さえ込むことにある。金を「凧」のように飛び立たせ、△2二角の「ヒモ」を頼りに攻めていく戦法である。そして5四に金を置くことで、先手の6四歩から7四歩の攻撃をケアしている。
ただし、玉が薄くなるので現在では全く指されていない。
考案者は升田幸三、命名者は加藤治郎とされている。ひねり飛車の後手番は▲3六飛のタテ歩取りを見られると、△3三金と上がって歩損を防ぐことになるが、この金が使いにくいのが難点だった。そこに打開の順を升田が開発した。
カタ囲い・居飛車金美濃
日本将棋連盟コラムにもある、△2二玉型の対ひねり飛車対策陣形の代表格。△2二玉-3二金-4二銀-△3三角型に構える。
また△3三角-3二金型に組み、玉を2二まで深く囲う形から場合によっては左銀や右金を4三にもっていく「金美濃」、さらに右銀も利用して金銀4枚の堅陣とする。現在、ひねり飛車対策として最も多く指されている。
左美濃・穴熊
やや変則的な手順によることが必要であるが、左美濃穴熊に囲う場合もある。

  1. ^ Kawasaki, Tomohide (2013). HIDETCHI Japanese-English SHOGI Dictionary. Nekomado. p. 84. ISBN 9784905225089 
  2. ^ 末席幹事 (2018年12月7日). “ひねり飛車の歴史”. 将棋ペンクラブログ. 2019年9月14日閲覧。
  3. ^ 羽生善治『羽生の頭脳』第8巻「最新のヒネリ飛車」など。
  4. ^ 加藤治郎『復刻版 将棋の公式』東京書店、2001。原著は1967年刊行
  5. ^ 例を挙げれば近年の定跡書のスタンダード、羽生善治の『羽生の頭脳』第8巻「最新のヒネリ飛車」では、相掛かり腰掛銀や3七銀戦法と同じ巻で相掛かり戦法の一つとしてひねり飛車を扱っている。
  6. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ」攻めと守りP142。光文社知恵の森文庫、2019
  7. ^ 塚田泰明監修、横田稔著『超急戦!殺しのテクニック』第一章相居飛車編P58。高橋書店、1988
  8. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ 」攻めと守りP143。光文社知恵の森文庫、2019。加藤によれば古くは飛車交換が主流だったが、相手が応じなくなり▲7五歩石田流型が増えたという。深浦康市『これが最前線だ!』河出書房新社1999では、▲8六飛型もよくあるが▲7五歩はより無難な指し方だとしている。
  9. ^ 加藤一二三『一二三の玉手箱』第二章「加藤一二三のエッセイ」攻めと守りP143。光文社知恵の森文庫、2019。





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