箱男
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『箱男』(はこおとこ)は、安部公房の書き下ろし長編小説。ダンボール箱を頭から腰まですっぽりとかぶり、覗き窓から外の世界を見つめて都市を彷徨う「箱男」の記録の物語。「箱男」の書いた手記を軸に、他の人物が書いたらしい文章、突然挿入される寓話、新聞記事や詩、冒頭のネガフィルムの1コマ、写真8枚など、様々な時空間の断章から成る実験的な構成となっている[1][2]。都市における匿名性や不在証明、見る・見られるという自他関係の認識、人間の「帰属」についての追求を試みると同時に[3][4][5]、人間がものを書くということ自体への問い、従来の物語世界や小説構造への異化を試みたアンチ・小説(反・小説)の発展となっている[3][6][7][8]。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g 苅部直『安部公房の都市』(講談社、2012年)
- ^ a b 永野宏志「書物の「帰属」を変える―安部公房『箱男』の構成における「ノート」の役割―」(工学院大学研究論叢、2012年10月)
- ^ a b c d e f g 安部公房「『箱男』を完成した安部公房氏――談話記事」(共同通信、1973年4月6日号に掲載)
- ^ a b 安部公房「書斎にたずねて――談話記事」(『箱男』投込み付録)(新潮社、1973年)
- ^ a b c d 高野斗志美『新潮日本文学アルバム51 安部公房』(新潮社、1994年)
- ^ a b c d 平岡篤頼「二重化と象徴(迷路の小説論11)」(早稲田文学、1973年12月)
- ^ a b c d e f g h 杉浦幸恵「安部公房『箱男』における語りの重層性」(岩手大学大学院人文社会科学研究科紀要、2008年7月)
- ^ a b c d e f g h i j k 工藤智哉「『箱男』試論―物語の書き手をめぐって」(国文学研究、2002年6月)
- ^ 安部公房「国家からの失踪」(インタビュー 1967年11月)
- ^ a b c d e 安部公房「小説を生む発想――『箱男』について・現代乞食考」(第66回新潮社文化講演会・新宿・紀伊國屋ホール、1972年6月2日)。新潮カセット『小説を生む発想――「箱男」について』(新潮社、1993年10月20日)
- ^ a b 安部公房「発想の種子――周辺飛行29」(波 1974年3月号に掲載)
- ^ a b 安部公房「著者のことば」(『箱男』函表)(新潮社、1973年)
- ^ a b c d 安部公房「都市への回路」(海 1978年4月号に掲載)
- ^ a b 安部公房「〈物語とは〉――周辺飛行1」(波 1971年3・4月号に掲載)
- ^ a b 安部公房(聞き手:ナンシー・S・ハーディン)「安部公房との対話」(ユリイカ 1974年8月号に掲載)
- ^ a b c 安部公房「箱男 予告編――周辺飛行13」(波 1972年11月号に掲載)
- ^ a b c d 平岡篤頼「解説」(文庫版『箱男』)(新潮文庫、1982年)
- ^ a b c d 真銅正宏「『箱男』の寓意―遮蔽・越境・迷路」(国文學─解釈と教材の研究─、1997年8月号に掲載)
- ^ 岡庭昇『花田清輝と安部公房―アヴァンガルド文学の再生のために』(第三文明社、1980年)
- ^ 田中裕之「『箱男』論(1)「箱男」という設定から」(梅花女子大学文学部紀要・比較文化編1号、1997年)
- ^ a b c d 平岡篤頼「続フィクションの熱風〔安部公房『箱男』〕(迷路の小説論8)」(早稲田文学、1973年9月)
- ^ 八角聡仁 「箱男の光学装置─写真・都市・演劇」(ユリイカ 1994年8月号に掲載)
- ^ 安部公房「都市について」(新潮 1967年1月号に掲載)
- ^ a b c d e 永野宏志「書物の「帰属」を変える (II) : 安部公房『箱男』の折込付録「〈書斎にたずねて〉」の展開可能性」(工学院大学研究論叢、2013年10月)
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