レッドグリーンテスト
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/26 22:05 UTC 版)
レッドグリーンテスト(英:Red-Green Test)は、眼科診療や眼鏡店における自覚的屈折検査(視力検査)において、屈折矯正の度数を最終決定するために用いられる検査法である。別名として、デュオクロームテスト(英:Duochrome Test)や二色テスト(にしょくテスト)、赤緑テスト(あかみどりテスト)とも呼ばれる[1]。
概要
レッドグリーンテストは、主に近視や遠視の矯正が適切であるか、あるいは過矯正(度数が強すぎる状態)になっていないかを確認するために実施される[1][2]。この検査は、光の波長の違いによって眼内での屈折率が異なる「軸上色収差」という物理現象を応用している。被験者は、赤色と緑色の背景に描かれた指標(二重丸や数字など)を比較し、どちらがより鮮明に見えるかを回答することで、網膜状での焦点位置を特定する[3][4]。
光は波長によって屈折する度合いが異なり、波長の長い光ほど屈折しにくく、短い光ほど屈折しやすい性質を持つ。可視光線において、赤色は波長が長く、緑色は波長が短い[5][6]。眼球の光学系(水晶体や角膜)を通る際、赤色の光は網膜のやや後方に、緑色の光は網膜のやや手前に焦点を結ぶ傾向にある[5][7]。正視あるいは適切な矯正がなされた状態では、赤色と緑色の焦点が網膜を挟んで等距離に位置するため、両方の指標が同等の鮮明さで見える[1][8]。
- 赤がはっきり見える ⋯ 焦点が網膜の手前にあることを示し、近視の未調整(低矯正)あるいは遠視の過矯正が疑われる。
- 緑がはっきり見える ⋯ 焦点が網膜の後方にあることを示し、近視の過矯正あるいは遠視の未矯正(低矯正)が疑われる。
- 同じくらいに見える ⋯ 焦点がちょうどよい位置にあり、しっかりと矯正が出来ている状態。
光学的には、赤と緑の焦点の間隔は約0.5D(ディオプター)に相当するとされており、この微細な差を利用して度数の追い込みが行われる[6][9]。
検査手順
一般的に最高視力が得られると推定される度数を装用した状態で実施される。
- 被験者に赤と緑の背景にある指標を提示する。
- 「どちらの色の背景にある指標がよりはっきりと、あるいは濃く見えますか?」と問いかける。
- 被験者の回答に基づき、レンズ度数を0.25D刻みで調整し、最終的に「両方が同じくらい」に見える状態、もしくは用途に応じて微調整された状態を目指す。
臨床的意義
本検査の最大の目的は、過矯正の防止にある[5][7]。特に近視の矯正において、度数が強すぎると眼球は常に調整(緊張)を強いられることになり、眼精疲労、頭痛、肩こりなどの原因となる[10]。また、生活環境や年齢に応じた微調整にも用いられる。若年層や遠方重視の場合、わずかに緑色が強く見える側(あるいは同等)で調整することがある。高齢者や近業重視の場合、調節力の低下(老眼)を考慮し、あえて赤色が少し強く見える状態で処方することで、眼球の負担を軽減させる手法が取られる場合がある[11]。
留意点
- 本検査は「色の名前」を答えるものではなく、指標のコントラストを比較するものであるため、先天色覚異常を持つ被験者であっても、多くの場合で実施可能である[6][7]。
- 瞳孔の大きさや部屋の明るさが検査結果に影響を与えるため、適切な照明環境下で行われる必要がある[6]。
- ロービジョン(低視力)患者においては、色収差を利用した視覚補助の研究も行われており、特定の色フィルタが読書速度や視認性に与える影響が学術的に調査されている[12][13]。
研究動向
近年では厚生労働省などの科学研究において、視力機能評価の標準化や、デジタルデバイスの普及に伴う眼精疲労のメカニズムの一環として、色収差と調節機能の関係が再評価されている[13]。また、乳幼児の視覚スクリーニングや、加齢に伴う視力機能変化に関する研究においても本検査の原理は基礎的なデータとして参照されている[14]。
脚注
- ^ a b c “視力検査の最後に、緑と赤のどちらがよく見えますかという質問をされますが、何を調べているのですか?”. ACUVUE. 2026年2月26日閲覧。
- ^ “【眼科検査のなぞ】その2.視力検査の時に見る「赤と緑」のヒミツを解説|Menicon Miru 仙台店|コンタクトレンズ販売店のMenicon Miru公式サイト”. www.menicon-shop.jp. 2026年2月26日閲覧。
- ^ “この検査なあに? No.2 〜赤と緑のどちらがよく見えますか?〜 – 満尾医院眼科 院長ブログ”. 2026年2月26日閲覧。
- ^ “視力検査の赤と緑は何を調べるのですか? |健康診断・人間ドック”. ユビー病気のQ&A - 病気の疑問や悩みに答えるQ&Aサイト (2025年5月27日). 2026年2月26日閲覧。
- ^ a b c “視力0.1以下の測定方法は?赤と緑のアレは何?知っておきたい視力測定の不思議2”. 東海光学公式ブログ. 2026年2月26日閲覧。
- ^ a b c d Chukwuyem, Ekele C.; Musa, Mutali J.; Zeppieri, Marco (2025), Subjective Refraction Technique: Duochrome Test, StatPearls Publishing, PMID 37276293 2026年2月26日閲覧。
- ^ a b c “Vol.4 さまざまな目の検査 | ニデック”. NIDEK. 2026年2月26日閲覧。
- ^ “レッドグリーンテスト-稲葉實のコンピューター視力検査”. bd178.stars.ne.jp. 2026年2月26日閲覧。
- ^ 公益社団法人 日本眼鏡技術協会会報(2016年)
- ^ “眼鏡やコンタクトの検査でおなじみ「赤と緑」「気球の写真」で何が分かる? 眼科医療機器メーカーに聞いた” (Japanese). 神戸新聞NEXT (2022年4月3日). 2026年2月26日閲覧。
- ^ “眼球運動の自動解析システムおよび人工知能を利用した障害部位推定プログラムの開発”. KAKEN. 2026年2月26日閲覧。
- ^ “現実空間を踏まえた複雑環境下における、個人差を考慮した光学・神経系包括視覚モデル”. KAKEN. 2026年2月26日閲覧。
- ^ a b 『網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究』近藤 峰生 (2024年3月)
- ^ 『第98回日本眼科学会総会 宿題報告屈折・調節の基礎と臨床 眼球光学系の特性』西信 元嗣(2024年12月10日)
関連項目
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