陽表式と陰伏式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 01:12 UTC 版)
多変数方程式がいくつかの関数関係を定義することもある。例えば F ( x , y ) = 0 {\displaystyle F(x,y)=0} のような式が与えられているとき、x と y は独立に別々の値をとることはできない。x に勝手な値を与えるならば、y は x の値によってとりうる値の制約を受けるからである。このことを以って、独立変数 x と従属変数 y が対応付けられると考えるとき、方程式 F(x, y) = 0 は x の関数 y を陰 (implicit) に定めるといい、y を x の陰伏関数または陰関数 (implicit function) という。これに対して、y = f(x) と表されるような関数関係を、y は x の陽関数 (explicit function) である、あるいは y は x で陽 (explicit) に表されているなどと言い表す。 陰伏的な関数関係が F(x, y) = 0 によって与えられていて、陽な関数関係 y = f(x) が適当な集合 D を定義域として F(x, f(x)) = 0 を満たすなら、この陽関数 y = f(x) は D 上で関係式 F(x, y) = 0 から陰伏的に得られるという。関数の概念を広くとらず、一価で連続である場合や一価正則な場合などに考察を限ることはしばしば行われることであるが、そのような仮定のもとでは陰関数から陰伏的に得られる陽関数は一つとは限らず、一般に一つの陰関数は(定義域や値域でより分けることにより)複数の陽関数に分解される。このとき、陰伏的に得られた個々の陽関数をもとの陰関数の枝という。また、陰関数の複数の枝を総じて扱うならば、陰関数の概念から多価関数の概念を得ることになる。例えば、方程式 y 2 − x 2 = 1 {\displaystyle y^{2}-x^{2}=1} が定める陰関数 y は全域で 2 つの一価連続な枝 f 1 ( x ) := 1 + x 2 , {\displaystyle f_{1}(x):={\sqrt {1+x^{2}}},} f 2 ( x ) := − 1 + x 2 {\displaystyle f_{2}(x):=-{\sqrt {1+x^{2}}}} をもつ二価関数である。 また、媒介変数を導入して関係式を分解し、各変数を媒介変数の陽関数として表すことによって、陰関数を表すこともある。例えば、方程式 2x − 3y = 0 は、媒介変数 t を導入して { x = 3 t , y = 2 t {\displaystyle {\begin{cases}x=3t,\\y=2t\end{cases}}} と表すことができるが、これによって y と x の陰伏的な関数関係が表されていると考えるのである。
※この「陽表式と陰伏式」の解説は、「関数 (数学)」の解説の一部です。
「陽表式と陰伏式」を含む「関数 (数学)」の記事については、「関数 (数学)」の概要を参照ください。
- 陽表式と陰伏式のページへのリンク