伊予湯岡碑とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 伊予湯岡碑の意味・解説 

伊予湯岡碑

(道後温湯碑 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/24 20:06 UTC 版)

伊予湯岡碑(再現)
道後温泉椿の湯・飛鳥乃湯中庭)

伊予湯岡碑(いよのゆのおかのひ、伊予道後温湯碑(いよどうごおんとうひ) / 伊予温湯碑 / 道後温湯碑)は、かつて愛媛県松山市道後温泉に存在したとされる飛鳥時代。現在では所在は失われているが、碑文は後世の引用史料によって知られる。

概要

飛鳥時代推古天皇4年(596年)に、道後温泉を訪れた聖徳太子(厩戸皇子)らにより建立されたと伝わる碑である[1]。碑文は古代金石文の1つになるが、原碑は早くに失われ現在は史料上でのみ知られる[2]。中国の温泉賦や温湯碑に倣い設置されたものとみられ、碑文には推古天皇期の古色が指摘される[1]

碑の設置経緯ならびに碑文内容は『伊予国風土記』(完本は非現存)に採録され、その風土記の逸文が『釈日本紀』巻14や『万葉集註釈』巻3に収録されている。それら逸文によれば、伊予温泉(現在の道後温泉)には天皇などの行幸が5回あり、第3回目で聖徳太子が高麗僧の恵慈や葛城臣(葛城烏那羅[2])らとともに訪れた際に、太子は「湯の岡」のほとりに碑を建て、その地は「伊社邇波岡(いさにわのおか、伊佐邇波岡)」と称されるようになったとし、続けて碑文を掲載する[1][3]

碑所在地の「伊社邇波岡」に関連する式内社としては伊佐爾波神社(松山市桜谷町)が知られる[1]。ただし同社の現境内は湯築城築城に伴い遷座したもので、遷座以前は現在の湯築城跡の地に所在したという[1]。それとは別に、愛媛県松山市来住町の久米官衙遺跡に温湯宮(石湯行宮)の存在可能性があり、それとの関連を指摘する説もある[2]。なお原碑については、天武天皇13年(684年)10月の白鳳地震で埋もれたと推測する説がある[2]

碑文

法興六年[注 1]十月、歳在丙辰、我法王大王[注 2]与恵慈法師[注 3]及葛城臣、逍遥夷与村、正観神井、歎世妙験、欲叙意、聊作碑文一首。
惟夫、日月照於上而不私。神井出於下無不給。万機所以[注 4]妙応、百姓所以潜扇。若乃照給無偏私、何異于寿国。随華台而開合、沐神井而瘳疹。詎舛于落花池而化羽[注 5]。窺望山岳之巖崿、反冀平子[注 6]之能往。椿樹相廕而穹窿、実想五百之張蓋。臨朝啼鳥而戯哢[注 7]、何暁乱音之聒耳。丹花巻葉而映照、玉菓弥葩以垂井。経過其下、可以優遊[注 8]、豈悟洪灌霄庭意歟[注 9]
才拙、実慚七歩。後之君子、幸無蚩咲也。 — 『釈日本紀』所引・『万葉集註釈』所引『伊予国風土記』逸文より[2]
注釈
  1. ^ 「法興」は私年号で、法興寺(飛鳥寺)建立開始年(西暦591年)を元年とし、法興6年は西暦596年になる (新編日本古典文学全集 2003)。
  2. ^ 「法王大王」は聖徳太子を指す (新編日本古典文学全集 2003)。
  3. ^ 底本では「恵忩」であるが、「恵慈」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。
  4. ^ 底本では「万所以機」であるが、「万機所以」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。
  5. ^ 底本では「化弱」であるが、「化羽」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。
  6. ^ 底本では「子平」であるが、「平子」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。
  7. ^ 底本では「吐下」であるが、「哢」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。
  8. ^ 底本に「以」は無いが、意補 (新編日本古典文学全集 2003)。
  9. ^ 底本では「与」であるが、「歟」に校訂 (新編日本古典文学全集 2003)。

脚注

参考文献

関連項目





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「伊予湯岡碑」の関連用語

伊予湯岡碑のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



伊予湯岡碑のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの伊予湯岡碑 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS