行為、理由、原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 08:10 UTC 版)
「ドナルド・デイヴィッドソン」の記事における「行為、理由、原因」の解説
デイヴィドソンのもっとも有名な論文は、1963年に書かれた「行為、理由、原因」である。当時の学界では、ウィトゲンシュタインに由来する「行為者が行為する理由は、その行為の原因ではない」 という考え(行為の反因果説)が広く受け入れられていた。デイヴィドソンはこれに対し、行為の理由を与えること(合理化)は、因果的説明の一種であると反論した(行為の因果説)。デイヴィドソンによれば、ある行為の「主たる理由」とは、その行為に関する広い意味での欲求(賛成的態度)と関連する信念である。「雨の日に傘を持って外へ出かける」というある人の行為の「主たる理由」は、例えば、その人が濡れずにいたいと考えること(賛成的態度)、そして傘を持っていけば今日雨で濡れることはないだろうと考えること(信念)である。 常識的な素朴心理学と広く一致しているこの見解は、「因果の法則は厳密で決定論的だが、理由による説明はそうである必要はない」という主張を基盤としている。デイヴィドソンの議論によれば、理由の表明がそこまで厳密でないという事実があるからといって、理由を持つ事は行動に因果的に影響する状態ではない、ということにはならないのである。この論文以降もデイヴィドソンは行為論の分野で重要な見解を表明している。
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