薔薇色の時代 (ピカソ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/16 16:31 UTC 版)
薔薇色の時代 (ばらいろのじだい、スペイン語: Período rosa) は、スペインの画家パブロ・ピカソが1904年から1906年頃にかけて制作した作品群を指す呼称である。
この時期は「青の時代」に続くもので、ピカソがパリのモンマントルの洗濯船に居を構え、ボヘミアンの詩人や作家たちとともに過ごしたことから始まったとされる。
作品の主題として、道化師やハーレクイン、曲芸師といった題材が取り上げられ、赤やオレンジ、ピンクやアースカラーなど、前時代(青の時代)と比較して明るく鮮やかな色調で描かれている。
ピカソの薔薇色の時代の作品は、直接的な観察よりも直感に基づいたもので、古代ローマ以前のイベリア半島の彫刻やオセアニア美術、アフリカ美術から影響を受けた「プリミティヴィズム(原始主義)」的な様式実験の始まりを示している。これらの試みは後に発展し、1907年の「アフリカ時代」へとつながり、その頂点として原始キュビスムの代表作『アビニヨンの娘たち』が生み出された。
概要
薔薇色の時代は1904年から1906年まで続いた。ピカソは1904年に出会ったフェルナンド・オリヴィエとの関係に幸せを感じており、これが画風変化の要因の1つとして指摘されている。
ハーレクイン、曲芸師、道化師はこの薔薇色の時代に頻繁に登場し、その後の長期にわたるキャリアの様々な段階において描かれることとなる。ハーレクインは、チェック模様の服を着た喜劇的なキャラクターとして描かれることが多く、ピカソの個人的な象徴となった。

薔薇色の時代はフランス的な影響を受け、青の時代はスペイン的な影響を受けているとされているが、この両方のスタイルはピカソがパリに住んでいた時期に生まれたものである。ピカソの青の時代は、1901年末に友人のカルロス・カサへマスが死去し、重度のうつ病発症をきっかけに始まり、1904年の心理状態が改善されるまで続いた。
薔薇色の時代は、この時代の作品に多用されたピンク色にちなんで名付けられた。フランス語でピンクを意味する「rose」に由来している。
ピカソの作品のうち、3番目に高額で取引された『花のバスケットを持つ裸の少女』と5番目に高額で取引された『パイプを持つ少年』は、どちらも薔薇色の時代に制作された。
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『俳優』パブロ・ピカソ, 1904年, メトロポリタン美術館, ニューヨーク
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『レ・バラディン(曲芸師の母と子)』パブロ・ピカソ, 1904–05年, キャンバスにガッシュ, 90 × 71 cm, シュトゥットガルト州立美術館
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『母と子』パブロ・ピカソ, 1905年, プライベートコレクション
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『ヌード』パブロ・ピカソ, 1905年, 紙に鉛筆
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『花のバスケットを持つ裸の少女』パブロ・ピカソ, 1905年, キャンバスに油彩, 154.8 × 66.1 cm, プライベートコレクション
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『パイプを持つ少年』パブロ・ピカソ, 1905年, プライベートコレクション
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『扇子を持つ女性』パブロ・ピカソ, 1905年, キャンバスに油彩, 100.3 × 81 cm, ナショナル・ギャラリー, ワシントンD.C.
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『サーカス団の一家』パブロ・ピカソ, 1905年, ナショナル・ギャラリー, ワシントンD.C.
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『ガートルード・スタインの肖像』パブロ・ピカソ, 1905–06年, キャンバスに油彩, 100 x 81.3 cm, メトロポリタン美術館, ニューヨーク
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『アルルケンの死』パブロ・ピカソ, 1906年, ガッシュと鉛筆で描かれた板絵, 68.5 × 96 cm, プライベートコレクション
関連項目
- 青の時代
- アフリカの時代
参考文献
- 薔薇色の時代_(ピカソ)のページへのリンク