臭化金(III)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > 化学物質辞書 > 臭化金(III)の意味・解説 

三臭化金

分子式AuBr3
その他の名称三臭化金、臭化金(III)、Gold(III) bromideGold(III) tribromide
体系名:トリブロモ金(III)、金(III)トリブロミド


臭化金(III)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/09 13:56 UTC 版)

Jump to navigation Jump to search
臭化金(III)
識別情報
CAS登録番号 11092-53-8 10294-28-7, 11092-53-8
特性
化学式 AuBr3
モル質量 436.69 g/mol
外観 暗赤色の結晶固体
融点

97.5 ℃

危険性
NFPA 704
0
3
0
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

臭化金(III)(しゅうかきん さん、gold(III) bromide)は、化学式が AuBr3 と表される暗赤色の結晶性固体である[1][2][3]臭素原子が原子に架橋して、化学式が Au2Br6 の二量体として存在する[2][3][4]。これも一般に臭化金(III)、三臭化金、しばしば六臭化二金とも呼ばれる。同族の銅や銀の安定な化合物が一価や二価を多くとるのに対して、この化合物や他のハロゲン化金と同じように、金が三価を多くとる[5]のは興味深い事実である。

歴史

ハロゲン化金についての最初の研究が行われたのは、1800年代の前半と言われる。この時代には、この分野を広く研究していた Thomsen、Schottländer、Krüss という3人の研究者がいた[6][7][8][9]

構造

この二量体には、塩化金(III)のような他のハロゲン化金(III)と同じような性質がある。各 X-Au-X 角はおよそ90度で、平面四角形構造である。量子化学計算上ハロゲン化金(III)の単量体(仮定種)ではヤーン・テラー効果によって、それぞれのハロゲン化金(III)の構造に違いが起こると示されている。各結合長は AuBr3 の場合は長い結合が1本と短い結合が2本あるのに対し、AuCl3AuF3 においては長い結合が2本と短い結合が1本となっている[4]。しかし、AuBr3 は AuCl3 や AuF3 とは異なり、T字形構造を取ることがある。AuBr3 は平面三角形構造とT字型構造とで動的平衡状態になっていることが分かっている。この違いはヤーン・テラー効果によるものと思われるが、臭素からの金への π 逆供与結合の重なりが塩素フッ素の場合より弱くなっているからと見ることもできる。同様に、AuCl3 や AuF3 より AuBr3 が不安定なことも π 逆供与結合の重なりが弱くなるためと説明できる。

合成

臭化金(III)の一般的な合成法は、金と過剰な液体臭素を 130℃[1] に加熱することである。

他の触媒作用にはプロパルギルアルコール求核置換反応が挙げられる。この反応では、AuBr3 はプロパルギルアルコールの活性化剤として作用する[13]

脚注

  1. ^ a b Macintyre, J. E. (ed.) Dictionary of Inorganic Compounds; Chapman & Hall: London, 1992; vol. 1, pp. 121
  2. ^ a b Greenwood, N.N.; Earnshaw, A. Chemistry of the Elements; Butterworth-Heineman: Oxford,1997; pp. 1183-1185
  3. ^ a b c d e Cotton, F.A.; Wilkinson, G.; Murillo, C.A.; Bochmann, M. Advanced Inorganic Chemistry; John Wiley & Sons: New York, 1999; pp. 1101-1102
  4. ^ a b Schulz, A.; Hargittai, M. Chem. Eur. J. 2001, vol. 7, pp. 3657-3670
  5. ^ a b c d Schwerdtfeger, P. J. Am. Chem. Soc. 1989, vol. 111, pp. 7261-7262
  6. ^ Lengefield, F. American Chemical Journal 1901, vol. 26, pp. 324
  7. ^ Thomsen, J. J. prakt. Chem. 1876, vol. 13, pp. 337
  8. ^ Schottlander, Ann. Chem. (Liebig), vol. 217, pp. 312
  9. ^ Kruss, G. Ber. d. chem. Ges. 1887, vol. 20, pp. 2634
  10. ^ Dell'Amico, D.B.; Calderazzo, F.; Morvillo, A.; Pelizzi, G; Robino, P. J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1991, pp. 3009-3016
  11. ^ a b c Schwerdtfeger, P.; Boyd, P.D.W.; Brienne, S.; Burrell, K. Inorg. Chem. 1992, vol. 31, pp. 3411-3422
  12. ^ Asao, N.; Aikawa, H.; Yamamoto, Y. J. Am. Chem. Soc. 2004, vol. 126, pp. 7458-7459
  13. ^ Georgy, M.; Boucard, V.; Campagne, J. J. Am. Chem. Soc. 2005, vol. 127, pp. 14180-14181

外部リンク

  • [1] Sigma Alrich Product info for Gold(III) Bromide
  • [2] Web Elements info page for Gold(III) Bromide


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「臭化金(III)」の関連用語

臭化金(III)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



臭化金(III)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの臭化金(III) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS