終点のあの子
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| 終点のあの子 | ||
|---|---|---|
| 著者 | 柚木麻子 | |
| 発行日 | 2010年5月13日 | |
| 発行元 | 文藝春秋 | |
| ジャンル | 小説 | |
| 国 | |
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| 言語 | 日本語 | |
| 形態 | 四六判 文庫版 |
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| ページ数 | 200(四六判) 256(文庫版) |
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| コード | ISBN 978-4-16-329210-6 ISBN 978-4-16-783201-8(文庫判) |
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『終点のあの子』(しゅうてんのあのこ)は、柚木麻子による小説[1]。2008年に第88回オール讀物新人賞を受賞した短編「フォーゲットミー、ノットブルー」を第1話においた4編からなる連作集[2]。2010年5月に文藝春秋から刊行され[1]、2012年4月に同社から文春文庫として刊行された[3]。
私立女子高校を舞台にその閉鎖的な世界の中で、揺らぎやすい女子たちの友情と複雑に絡み合った人間関係が負の感情も含めて繊細に描かれる。
第1話「フォーゲットミー、ノットブルー」は 立花希代子の視点で描かれる。オムニバス連作の第2話「甘夏」は森奈津子の視点で、第3話「ふたりでいるのに無言で読書」は普段は接点のない菊池恭子と保田早智子のひと夏の交流がそれぞれの視点で、第4話「オイスターベイビー」は高校卒業から4年後、美大生となった奥沢朱里の視点で描かれている[4]。タイトルの由来は第4話に記載されている[注 1]。
2026年1月23日に映画版が公開予定[5]。
あらすじ
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登場人物
主要人物
- 立花希代子(たちばな きよこ)
- 世田谷にあるプロテスタント系私立女子校に通う。中等部から進学した内部生。自由な考えを持つ外部生の朱里に惹かれる。
- 朱里から声をかけられ、急速に親しくなっていくが、やがてその身勝手さに戸惑い始め、ふとしたことで彼女の日記[注 2] を見てしまったことで、朱里に対して暴走した行動[注 3]を取ってしまう。
- 奥沢朱里(おくさわ あかり)
- 外部生としてやって来た。有名なカメラマンの父・奥沢エイジと2人暮らし。父の仕事の関係で海外暮らしが長い。
- 自由奔放な行動が目立ち、「他人と同じ」「普通」はつまらないと考え、他人を見下しているように周囲に受け取られることが多い。
- 第4話では、ずっと同性が苦手だった朱里が美大生となり、同じ大学の杉田が初めての親友となっている。希代子とはその後ずっと連絡をとっていない。
私立女子校高等部
- 森奈津子(もり なつこ)
- 希代子のクラスメイトで親しい友人。ニックネームは「森ちゃん」。中等部の頃から同じグループ。希代子たち5人の「真面目系」グループの一員になっていた。
- 第2話では市民プールで8月中、学校で禁止されたアルバイトをしている。希代子が朱里を大切にして、自身がどうでもいい存在に扱われていると憤っている。
- 菊池恭子(きくち きょうこ)
- 希代子たちの同級生。家はクリーニング店。高校入学組だが、クラスで一番堂々と振る舞っている。学年でトップクラスの美人。大学生の恋人・卓也がいる。
- 第3話では、卓也から唐突にメールで別れを告げられる。夏休みに早智子と話す機会があり、以来図書館に一緒に行ったり、保田家に入り浸って小説や漫画のことなど楽しく話している。
- 保田早智子(やすだ さちこ)
- 内部生。猫背で太め。ボーイズラブ漫画を好み、花や美少年の華やかなイラストを描いているが、自身の外見には無頓着。
- 第3話では漫画研究部に所属、楽しく部活をしている。夏休みは普段交流のない恭子と長時間楽しく一緒に過ごし、メイクやファッションなども丁寧に教えられている。
- 名村洋子(なむら ようこ)
- 希代子たちの担任。世界史の教師。ニックネームは「なっちゃん」。希代子たちからも好かれている。30代半ばで独身。
- 秋川雅美(あきかわ まさみ)
- 内部生。バスケ部。ショートカットで日に焼けた頬。アッキーと呼ばれる。朱里の日記に書かれた自身の悪口を目にした時は号泣している。
- 光野(みつの)[注 4]
- 奈津子の隣のクラス。ニックネームは「ミッツー」。環七のガソリンスタンドでバイトしている。奈津子がバイトしようとしてアドバイスを頼んで以来親しくなっている。
- 山下美加(やました みか)[注 5]
- 恭子と同じグループの女子。早智子に「ウインナー指」とあだ名を付けている[注 6]。
- 内田美佐子(うちだ みさこ)[注 5]
- 早智子のクラスメイトで仲が良い漫研部員。父親は輸入食品会社の社長で、お台場の高級ホテルの会員。コミケの3日間、娘の仲間5人をスイートに招待してくれる。
- 仁科(にしな)
- 希代子のクラスメイトで隣の席。周囲の様子に敏感で気づくのが早い。
希代子の関係者
- 瑠璃子(るりこ)
- 27歳。美大の大学院に通う。希代子の母の店でバイトをしていた関係で希代子と知り合う。学校の先輩でもあり、希代子が信頼し何でも相談できる相手。
- 第4話では、34歳で有名な広告デザイナーの西門と結婚し、男児の母。希代子を通じて知り合った朱里とはその後も親しく付き合っている。
- 希代子の母
- 目黒通りのインテリアショップの店長。希代子曰く有能な女性で何事も短時間でてきぱきこなし、仕事で多忙でも家の中はいつも綺麗。
- 希代子の父
- 商社のシンクタンクに勤める。1年前からドバイに赴任中。夏休みには希代子が父の元に旅行している。
朱里の関係者
- 奥沢エイジ(おくさわ エイジ)
- 諸外国の駅のキオスクを撮った写真が評判の有名な写真家。妻(朱里の母)とは離婚し、現在は超美人のモデル・メイコと付き合っている。
- メイコ
- 奥沢エイジの恋人。メロンパンが好物だと言う朱里に有名な店の高級メロンパンを買って来たり、手作りのお弁当を持たせたりもしている。
- 朱里の母
- エイジとは離婚し、再婚していて息子が2人いる。離れて暮らす朱里のことを気にしており、進学する高校も自らが選んだ。朱里の苛め事件では学校に乗り込んでいる。
- 杉田(すぎた)[注 7]
- ずっと同性が苦手だった朱里にとって22年間で初めてできた親友。ニックネームは「杉ちゃん」。すらりとした美人でヤンキー気質。広島の高校の頃はかなり荒れていたらしい。
- 一浪後、奨学生として美大に入学。2年時に美術雑誌の新人賞を獲得し、以来公募やコンペの優秀賞の常連となっている。朱里のことは「姫」と呼ぶ。
- 田島淳之介(たじま じゅんのすけ)[注 7]
- 美大ファイン科。茨城出身。朱里が大学2年から付き合っている彼氏。筋肉質なのにすらりと長身。学部の女子に人気がある。朱里と別れて美咲と付き合おうとする。
- 松田美咲(まつだ みさき)[注 7]
- 美大デザイン科の女子。パンダのモチーフが好き。キャラクターデザインの仕事を希望している。
- 就職の面接で必要とするイラストや写真の作品を集めたポートフォリオを朱里に持ち去られるが、後悔した朱里がすぐ返しに来る。
- 島根明人(しまね あきと)[注 7]
- 東京育ちで私立の名門男子校出身。著名な建築家夫婦を両親に持つ。杉ちゃん曰く「金持ちのボン」。朱里にずっと好意を持ち続けており、いきなりキスしたこともある。
奈津子の関係者
- 佐久間(さくま)[注 4]
- 奈津子と同じ市民プールでバイトしている近所の男子私大生。奈津子がお嬢様学校に通っていると知って以来急に馴れ馴れしく接近してくるようになる。
- 吉沢(よしざわ)[注 4]
- アルバイト初日の奈津子の化粧や日焼け止めを怒鳴りつけた清掃のおばさん。奈津子のことを気に入り、よく一緒にお弁当を食べている。
- 自宅から職場にと甘夏をよく持って来るが誰ももらっていかないため、奈津子が吉沢の機嫌を損ねないように無理をして持ち帰っていた。
恭子の関係者
- 楠木卓也(くすのき たくや)
- 恭子の恋人。髪の色が明るすぎるホスト風の男性。EXILEをよく聴いている。朱里と少しドライブをしたことがあり、朱里から「たあくん」と呼ばれていた。
- 第3話では、恭子の姉の大学では1年後輩で同じテニスサークルに所属し、恭子の姉からは高校生の妹に手を出した上、振ったことを吊し上げると宣言されている。
- 岩田洋二(いわた ようじ)[注 5]
- 恭子が中学2年から付き合っていた彼氏。偏差値の低い工業高校に進学する彼とは釣り合わないと思い卒業と同時に別れを告げ、ショックを受けた彼から恨まれている。
- 野球部のエースで人気があったこともあり、恭子は当時同級生たちからすっかり嫌われていた。
書誌情報
- 柚木麻子『終点のあの子』
- 2010年5月13日発売、文藝春秋(単行本)、 ISBN 978-4-16-329210-6[1]
- 2012年4月10日発売、文春文庫、 ISBN 978-4-16-783201-8[3]
映画
| 終点のあの子 | |
|---|---|
| The Girl At The End Of The Line | |
| 監督 | 吉田浩太 |
| 脚本 | 吉田浩太 |
| 原作 | 柚木麻子 |
| 製作 | 前信介 |
| 出演者 | 當真あみ 中島セナ 平澤宏々路 南琴奈 新原泰佑 小西桜子 野村麻純 今森茉耶 陣野小和 深川麻衣 石田ひかり |
| 音楽 | 茂野雅道) |
| 撮影 | 中島唱太 |
| 制作会社 | グラスゴー15 |
| 製作会社 | 「終点のあの子」製作委員会 |
| 配給 | グラスゴー15 SPOTTED PRODUCTIONS(協力) |
| 公開 | |
| 上映時間 | 125分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 日本語 |
2026年1月23日に公開予定[5]。監督・脚本は吉田浩太、主演は當真あみと中島セナ[5]。
2025年「第27回上海国際映画祭」のGALA部門に出品、6月15日にワールドプレミア上映が行われ、前日の14日のレッドカーペットイベントには當真、中島、吉田監督が参加した[6]。
キャスト
主要人物
- 希代子
- 演 - 當真あみ
- 内部生。外部生の朱里に声を掛けられ、急速に親しくなっていくが、朱里の日記帳を見つけたことである変化が訪れる。
- 朱里
- 演 - 中島セナ
- 外部生としてやってきた。海外暮らしが長く、有名なカメラマンを父に持つ。
希代子たちの通う女子校
- 奈津子
- 演 - 平澤宏々路[5]
- 希代子と朱里の同級生。
- 恭子
- 演 - 南琴奈[5]
- 希代子と朱里の同級生。
- 名村先生
- 演 - 野村麻純[5][7]
- 希代子や朱里の担任教師。
- クラスメイト
- 演 - 今森茉耶[8][9]、陣野小和[8][9]
希代子と朱里の家族・関係者
- 美恵子
- 演 - 石田ひかり[5]
- 希代子の母であり、老舗の呉服屋を経営する。
- 瑠璃子
- 演 - 深川麻衣[5]
- 美大生。希代子が信頼し何でも相談できる先輩。未来を見据えた行動力と芯の強さを持つ。
- メイコ
- 演 - 小西桜子[5][10]
- 世界的カメラマンでもある朱里の父親の恋人。
その他
スタッフ
- 原作 - 柚木麻子『終点のあの子』(文春文庫刊)
- 監督・脚本 - 吉田浩太
- 音楽 - 茂野雅道
- プロデューサー - 前信介[8]
- 協力プロデューサー - 小宮誠[8]
- 撮影 - 中島唱太[8]
- 照明 - 土山正人[8]
- 録音 - 岸川達也[8]
- 美術 - 中村哲太郎[8]
- スタイリスト - 小宮山芽以[8]
- ヘアメイク - 岩鎌智美[8]
- 助監督 - 川松尚良[8]
- スチール - 濱田英明[8]
- 企画協力 - 文藝春秋
- 制作・配給 - グラスゴー15
- 配給協力 - SPOTTED PRODUCTIONS
- 製作 -「終点のあの子」製作委員会
脚注
注釈
- ^ 朱里が自身のことを初めは女子から興味を持たれ、羨望されるが、すぐに弱さを見抜かれて飽きられ捨てられる存在であると考え、その例えとして、電車でいつも誰よりも早く終点にたどり着くが、終点は彼女たちには折り返し点に過ぎず、すぐに先に進み、気づけばいつも終点に取り残されている自身のことを表している。
- ^ まっさきに「希代子は意気地なしだ」から始まる辛らつな記述があり、クラスメイトや教師の悪口がひたすら続くが、妙に的を射ており、希代子もその言葉に共感し、ほの暗い感情が広がっていく。
- ^ 朱里の日記を勝手に持ち出し、クラス全員に回覧した上で日記を切り裂いて朱里の机の上に置いたことなど。
- ^ a b c 第2話「甘夏」のみに登場。
- ^ a b c 第3話「ふたりでいるのに無言で読書」のみに登場。
- ^ お弁当のウインナーそっくりの短く太い指をしていることから。
- ^ a b c d 第4話「オイスターベイビー」のみに登場。
出典
- ^ a b c “終点のあの子 / 柚木 麻子(著)”. 版元ドットコム. 一般社団法人版元ドットコム. 2025年10月30日閲覧。
- ^ “當真あみ×中島セナW主演『終点のあの子』2026年劇場公開決定 上海国際映画祭出品へ”. リアルサウンド映画部. blueprint (2025年6月3日). 2025年10月31日閲覧。
- ^ a b “文春文庫 終点のあの子 / 柚木 麻子(著)”. 版元ドットコム. 一般社団法人版元ドットコム. 2025年10月30日閲覧。
- ^ 柚木麻子『終点のあの子』文藝春秋、2012年4月10日、248-252頁。
- ^ a b c d e f g h i j “當真あみ×中島セナ「終点のあの子」に深川麻衣、石田ひかり、新原泰佑、小西桜子、野村麻純”. 映画ナタリー. ナターシャ (2025年9月9日). 2025年10月30日閲覧。
- ^ “當真あみ&中島セナ、初めての国際映画祭のレッドカーペットで笑顔 映画『終点のあの子』ワールドプレミア”. ORICON NEWS. oricon ME (2025年6月17日). 2025年11月1日閲覧。
- ^ 映画『終点のあの子』公式 [@endof_the_line_]「新キャスト 名村先生 役:野村麻純 希代子(當真あみ)や朱里(中島セナ)の担任教師 (装飾・後略)」2025年9月13日。X(旧Twitter)より2025年11月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “作品情報:終点のあの子”. 映画.com. エイガ・ドット・コム. 2025年10月29日閲覧。
- ^ a b “映画『終点のあの子』新キャスト解禁 深川麻衣、石田ひかり、新原泰佑、小西桜子ら”. ENCOUNT(エンカウント). Creative2 (2025年9月9日). 2025年9月11日閲覧。
- ^ 映画『終点のあの子』公式 [@endof_the_line_]「新キャスト メイコ役:小西桜子 世界的カメラマンでもある朱里の父親の恋人。(装飾・後略)」2025年9月11日。X(旧Twitter)より2025年11月1日閲覧。
外部リンク
- 小説
- 映画
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- 映画『終点のあの子』
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