神城断層とは? わかりやすく解説

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かみしろ‐だんそう【神城断層】


神城断層

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/25 02:12 UTC 版)

長野県神城断層地震で塩島地区の水田に出現した震源断層の一部。最大変位量を記録したこの場所での垂直変位量は約1m。地震以前は小屋左側の段差は存在せず水田と同一の面にあった

神城断層(かみしろだんそう)は、糸魚川静岡構造線断層帯の北端部にあり、長野県北西部の小谷村から白馬村を経て大町市の青木湖木崎湖に至る南北ないし北北西-南南東方向に延びる東側隆起の逆断層である。南にある松本盆地松本盆地東縁断層と共に糸魚川静岡構造線断層帯北部セグメントを構成する。

解説

北緯36度32分、東経137度51分付近を南限とする約28kmの東側隆起の断層。この東傾斜の断層構造は中新世正断層として発生し断層東側の北部フォッサマグナ地域を沈降させる活動を起こした。その後、鮮新世から更新世の圧縮応力場に変化した際に、逆断層として再活動を開始したと考えられる[1]

断層線は概ね姫川の流路と平行しているが、確認できる断層線は直線性に乏しく不規則で屈曲している。また、西側の北アルプスから運ばれる大量の土砂による堆積で容易に攪乱され、未固結で軟弱な粘土質の堆積物が厚いため変位が地表に到達しにくく、地表の断層トレースは断続的である。1980年代に白馬盆地南部で行われたポーリング調査では、地下54.1mから姶良Tn火山灰層が発見されており[2]、堆積量の多さを知る事が出来る。

断層の北端部と南端部では断層変位地形の様式が異なっており、別の中規模地震でそれぞれに活動をしている可能性が指摘されている[3]。また、白馬村浅間山以北の区間は活動を停止しているとする研究者もいる[3]

2014年(平成26年)11月22日の長野県神城断層地震で活動した際に地表に表れた断層は、白馬村森上の共和工業(株)敷地内に認められたものが2015年(平成27年)3月5日に白馬村指定天然記念物に指定された[4][5]。また白馬村域では、縄文時代の船山遺跡や中世の塩島城跡など4遺跡が、いずれも断層地形を利用して営まれていた点が注目されている[6]

2015年3月に実施されたトレンチ調査で発掘された断層
礫層からは約1mの変位を読み取ることが出来る。

評価

糸魚川静岡構造線断層帯の北部1(神城活動セグメント)として区分し、以下の様に評価されている。

  • 上下成分 : 3.7m/1000年
  • 活動間隔 1700年
  • 南端 北緯36°32' 東経137°51' 付近
  • 最新活動時期 2014年

おもな調査

糸魚川静岡構造線断層帯の活動歴や平均変位量を知るため、航空写真判読[7]、ボーリング[8][9][10][11]人工地震による極浅層反射法地震探査[12][10]トレンチ調査など様々な技法による調査が行われている。

  • 1995年 堀之内地区でトレンチ調査[13]。トレンチ調査による標本は、産業技術総合研究所 地質標本館に収蔵・展示されている[14]
  • 2015年 飯森地区でトレンチ調査、1714年 50cm、2014年 50cmの上下変位が発見された[15]

活動歴

北城大出地区の地表に出現した震源断層の一部。この場所での垂直変位量は約60cm

糸魚川静岡構造線上の他の断層(南部の松本盆地東縁断層、牛伏寺断層など)と連動して活動したのかは不明である。有史以降の明かな活動は下記である。

過去の付近での活動
  • 762年(美濃・飛騨・信濃)、841年(信濃)M 6.5以上の活動が該当する可能性がある[16]
  • 1841年 信濃 不明。
  • 1858年 信濃大町地震 - M 5.7。地震の詳細は不明。宇佐美龍夫は震源域を神城断層南部から松本盆地東縁断層北部と想定している[17]
  • 1918年 大町地震(大正大町地震) - M 6.1 と M 6.5 の双子地震。ただし、起震断層は特定されていない[18]

参考画像

出典

脚注

  1. ^ 佐藤比呂志(1996)、日本列島のインバージョンテクトニクス 活断層研究 1996年 1996巻 15号 p.128-132, doi:10.11462/afr1985.1996.15_128
  2. ^ 下川浩一、山崎晴雄(1987),『神城湖堆積物からみた断層運動』, 日本第四紀学会講演要旨集
  3. ^ a b 東郷正美、池田安隆、今泉 俊文、佐藤比呂志(1996)、神城断層両端部の断層変位地形 活断層研究 Vol.1996 (1996) No.15 p.9-16, doi:10.11462/afr1985.1996.15_9
  4. ^ "神城断層、白馬村天然記念物に 保存・活用方法検討へ"(信濃毎日新聞、2015年3月5日記事)。
  5. ^ 白馬村指定文化財 白馬村行政ホームページ
  6. ^ "白馬村の4遺構、神城断層沿いに 信大教授らの調査で判明"(信濃毎日新聞、2016年5月17日記事)。
  7. ^ 松多信尚、澤祥、安藤俊人 ほか、写真測量技術を導入した糸魚川-静岡構造線断層帯北部(栂池-木崎湖)の詳細変位地形・鉛直平均変位速度解析 活断層研究 2006年 2006巻 26号 p.105-120, doi:10.11462/afr1985.2006.26_105
  8. ^ 多里英、公文富士夫、小林舞子、酒井潤一:長野県北西部,青木湖の成因と周辺の最上部第四紀層 第四紀研究 Vol.39 (2000) No.1 P.1-13, doi:10.4116/jaqua.39.1
  9. ^ 原口強、中田高、島崎邦彦、今泉俊文、小島圭二、石丸恒存:未固結堆積物の定方位連続地層採取方法の開発とその応用 応用地質 1998年 39巻 3号 p.306-314, doi:10.5110/jjseg.39.306
  10. ^ a b 松多信尚、池田安隆、今泉俊文、佐藤比呂志:糸魚川-静岡構造線活断層系北部神城断層の浅部構造と平均すべり速度 浅部反射法地震探査とボーリングの結果 活断層研究 2001年 2001巻 20号 p.59-70, doi:10.11462/afr1985.2001.20_59
  11. ^ 地層抜き取り調査とボーリング調査による糸静線活断層系・神城断層のスリップレートの検討 活断層研究 1997年 1997巻 16号 p.35-43, doi:10.11462/afr1985.1997.16_35
  12. ^ 木村治夫、中西利典、丸山正 ほか、糸魚川-静岡構造線活断層系神城断層における地中レーダー探査 活断層研究 2013年 2013巻 38号 p.1-16, NAID 40019740333
  13. ^ 奥村晃史、井村隆介、今泉俊文、東郷正美、澤祥、水野清秀、苅谷愛彦、斉藤英二、糸魚川-静岡構造線活断層系北部の最近の断層活動 -神城断層・松本盆地東縁断層トレンチ発掘調査- 地震 第2輯 1998年 50巻 appendix号 p.35-51, doi:10.4294/zisin1948.50.appendix_35
  14. ^ 神城断層トレンチ壁面のはぎ取り標本 産業技術総合研究所 地質標本館ミニ見学ツアー 第3展示室
  15. ^ a b 300年前に大規模地震か 長野北部地震震源断層下に痕跡 中日新聞 記事:2015年3月21日 閲覧:2015年3月30日
  16. ^ 遠田晋次、小俣雅志、郡谷順英:糸魚川-静岡構造線活断層系松本盆地東縁断層群中央部の古地震調査 活断層・古地震研究報告, No. 9, p. 261-277, 2009
  17. ^ 飛越地震と大町 地震予知連絡会会報 第33巻 1985年2月 (PDF)
  18. ^ 鷺谷威、1918年大町地震の震源断層モデル 地震 第2輯 2003年 56巻 2号 p.199-211,doi:10.4294/zisin1948.56.2_1999

関連項目

外部リンク



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