眠られぬ夜を坂と呼ぶのか
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
|
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
本来なら心身を休ませてくれるのが眠り。その眠りが得られない夜は、まるで果てしなく長い坂道のようだ。いや、道ですらないかも知れぬこの坂。作者にとっては登り坂に違いない。 現在、大学博士課程一年生、24歳の作者だが、平淡な日常を得られない不安とジレンマがこの句から窺える。俳句というより、俳句の形式を取った詩のような呟き。この問いかけに答えるのは己自身。きっとこの先何度もこの問いかけをしつつ、彼は坂を登るのだろう。たとえ途中で滑落しても、坂を降りるのではなく、登る。呟きは聞こえるが、この句から諦観は感じられない。呟きたい時は自問自答して迷っても良いものだ。自分への問いかけが眠れぬ夜を作り出しているのだから。 ユング心理学の概念に「夜の航海」という自分の無意識との一つの対峙、乗り越えなければならない試練がある。それに通じる「眠られぬ夜」は次の朝日をどうやって迎えるかを考える時間であり、次の自分へのイニシエーションである。 出典:合同句集『祭演Ⅴ』 |
評 者 |
|
備 考 |
- 眠られぬ夜を坂と呼ぶのかのページへのリンク