田に水が入り千枚の水鏡
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評 言 |
単純に水を張った水田の景を詠んだ一句だが、田を捨ててしまう農家も多いと聞く昨今、この光景は、失われつつある日本の最も美しい景の一つであろう。一面に水が張られた田が幾重にも連なり、空の色を映しだしていてきらめいている。都会化されゆく故郷への郷愁なのかも知れない。しかし、この清らかな農村の光景は、私達日本人が記憶の中に留めて置かねばならぬものであろう。作者の鈴木石夫氏は、信州の農家の長男だったというが、教職の道を歩まれ上京、俳句の指導も熱心な方だった。句集『風峠』の中には「茅の輪の彼方の山河は捨てた古里」「風峠雲をちぎって捨てておく」などの、故郷に対する想いを詠んだ句も散見される。俳句は決して難しいものではない。俳句は楽しむものです。というのが石夫氏の理念だった。「麦秋のせっせっせえと遊びだす」こんな句もある。掲出句は、五月三十一日に亡くなった鈴木石夫氏の、五月の句会に出された一句である。 |
評 者 |
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備 考 |
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