汗国とは? わかりやすく解説

かん‐こく【汗国】

読み方:かんこく

ハン国


汗国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/21 16:18 UTC 版)

汗国(かんこく、ハンこく、Khanate)は、(カン、ハン、qan)[注釈 1]を君主とする君主国を指す用語である。君主号としての「カン」「ハン」はモンゴル高原から中央アジアを中心とした、テュルク系およびモンゴル系遊牧民王朝でよく用いられたが、モンゴル帝国時代以降、ジョチ・ウルス崩壊の影響を受けて、中央アジア以西のキプチャク草原ルーシカフカス(コーカサス)などの地域にも広がった。

概要

君主号としての汗

「カン/ハン(qan)」は「皇帝」という意味の「カガン/カアン/ハーン(qaγan)」とは違い、皇帝より格下の「王」という意味である[1]。モンゴル帝国では皇帝号(カアン)を帯びる元朝とハン号を帯びるそれ以外の政権(ジョチ・ウルス、チャガタイ・ウルスフレグ・ウルスなど)にわかれる[2]

ハン国の形成

9世紀にウイグル可汗国の崩壊後、モンゴル高原では九姓タタル、阻卜、烏古などが割拠し、やがてメルキトナイマンケレイトタタルモンゴルなどが形成された。その内の有力部族であるモンゴル、ナイマン、ケレイトは君主号としてカン(Qan)を用いて複数部族を束ねる存在となる。

チンギス・カンが率いるモンゴル帝国が勃興すると、第2代のオゴデイは他のカンから卓越した存在として「カアン(ハーン)」(Qa'an)という君主号を採用し、以降の歴代皇帝に使用された[3]。一方でオゴデイの死後、後継者争いによって帝国の有力ウルスが分離独立し、皇帝(カアン)直轄領である元朝とは別に、ジョチ・ウルスイルハン朝チャガタイ・ハン国の3つのハン国が形成された。

モンゴル帝国以後

分裂しおのおの独自の発展を遂げたウルスも14世紀には衰退し、それぞれ滅亡の道を歩む。しかし、ハンを君主とする伝統は、その後もテュルク系・モンゴル族系の遊牧民継承国家に受け継がれた例が多い。特にロシアを地盤としたジョチ・ウルス崩壊後の後継国家に著しい(なお、ロシア側からはモンゴル支配を「タタールのくびき」と呼ぶ)。各地において建国されたハン国は、ロシア帝国やイスラム諸王朝に吸収されていったが、遅くは20世紀まで存続した(ヒヴァ・ハン国など)。

主なカン/ハン国

モンゴル帝国以前

モンゴル系ハン国

テュルク系ハン国

脚注

注釈

  1. ^ 可汗、カガン、カアン、ハーン(qaγan)はカン/ハンとは別。

出典

  1. ^ 杉山 1996, p. 249.
  2. ^ 杉山 2008, p. 30-31.
  3. ^ 杉山 2008, p. 142.

参考資料

  • 杉山正明 『モンゴル帝国の興亡(下)世界経営の時代』 講談社〈講談社現代新書〉1996年6月、ISBN 4-06-149307-8
  • 杉山正明『モンゴル帝国と長いその後』講談社, 2008年2月、講談社学術文庫, 2016年.

関連項目


汗国

出典:『Wiktionary』 (2021/08/07 06:35 UTC 版)

名詞

 かんこくはんこく

  1. 世界史》 テュルクモンゴル民族国家における君主国(wp)帝国場合大汗という。

語源

テュルク・モンゴル諸語支配者を表すハーン (wp)khan)の音訳可汗」(後に「汗」)が治める国から。

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