果物籠と猟鳥のある静物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/20 10:47 UTC 版)
スペイン語: Bodegón con cesta de frutas y gallina de caza 英語: Still Life with Basket of Fruit and Game Fowl |
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作者 | フアン・バン・デル・アメン |
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製作年 | 1621年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 75.4 cm × 144.5 cm (29.7 in × 56.9 in) |
所蔵 | 国立西洋美術館、東京 |
『果物籠と猟鳥のある静物』(くだものかごとりょうちょうのあるせいぶつ、西: Bodegón con cesta de frutas y gallina de caza, 英: Still Life with Basket of Fruit and Game Fowl)は、17世紀スペイン・バロック期の画家フアン・バン・デル・アメンが画業初期にキャンバス上に油彩で描いたボデゴン (スペインの厨房画、静物画) である。画面右下に「Juº BaldeRama Deleon/f. 162…」という署名と年記が記されている[1]。年記の最後の桁は失われ、読めないが、研究者ウィリアム・J・ジョーダンは1621年ごろの制作としている[2]。2010年までスペインの個人蔵であった作品で、2014年に東京の国立西洋美術館が購入した[1][2]。
作品
石でできた窓枠のような場所に、様々な種類の果物や猟鳥が配置されている[2]。メロンとモモ、ブドウを盛った籐籠を中心に、向かって左側には手前に突き出た丸いウリと茶色のテラコッタ製カップが、右側には小さな丸いナス、そして白い陶器の皿に載ったブドウとプラムが配されている。上からは、左側にキジ科の猟鳥アカアシイワシャコが2羽、右側には3つのザクロとサケイ科の猟鳥シロハラサケイが2羽吊るされている[2]。

作品は全体として緩やかな左右対称をなし、安定感のある構図が生み出されている[2]。画面左手前から差し込む光は、暗い背景の上にモティーフの輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、それらの迫真性を演出している。こうしたモティーフの組み合わせと配置、演出法は、トレドでスペイン静物画を興隆させたフアン・サンチェス・コターンに着想を得たものである。とりわけ、モティーフの「舞台」として上辺を欠く窓枠のような奥行きの浅い石の台を用いることは、コターンの最大の独創であった。また、モティーフを上から吊り下げたりして視覚的なイリュージョンの効果を高める手法も彼が得意としたものである[2]。

しかし、バン・デル・アメンは、フランドルの静物画、とりわけ17世紀スペインの蒐集家に好まれたフランス・スナイデルスの作品についても知識を持っていたことをうかがわせる[2]。本作に見られる多様な果物を一堂に籠に盛り合わせる豪華さや、モティーフの隙間を埋めるように籠から突き出たブドウの蔓を配する手法に、スナイデルスの影響を指摘することができる。すなわち、バン・デル・アメンはコターンの静物画の形式にフランドルの華やかで装飾的な感覚を組み合わせることで、独自の気品ある静物画を確立したのである[1][2]。
本作を特徴づけるのは、その例外的な大きさである[2]。横長の形式は扉口の上、もしくは窓の上を飾るためのものであったと思われる[1][2]。しかし140センチを超える横長のキャンバスは、17世紀初頭のスペイン静物画としてきわめてまれで、バン・デル・アメンの初期の作品としても現在知られる最大のものである。本作は重要な顧客 (名は判明していない[1][2]) からの注文として制作されたに違いなく[2]、若かった画家の野心が結晶した初期の傑作と位置づけられる[1][2]。同一構図の複製は知られていないが、本作のモティーフを自由に組み合わせて制作された、より小規模のヴァージョンが存在している[2]。
脚注
参考文献
- 『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』、国立西洋美術館、プラド美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日本テレ、2018年刊行 ISBN 978-4-907442-21-7
外部リンク
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