全方位交戦能力の獲得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 05:49 UTC 版)
「空対空ミサイル」の記事における「全方位交戦能力の獲得」の解説
第2世代以前のIRH誘導システムを搭載したミサイルでは、近・短波長赤外(N/SWIR)帯域しか検知できなかったことから、原則として、目標のジェット排気口が直接見える後方からしか捕捉することができなかった。しかし、新素材による赤外線センサーを採用した第2世代のIRH誘導システムでは、中波長赤外(MWIR)帯域の検知が可能となったことから、機体の後方に向かって排出されるジェット排気(プルーム)を捕捉することによって、側方からでも捕捉が可能となり、全方位交戦能力(All-Aspect Capability, ALASCA)が実現された。1964年から運用を開始したイギリスのレッドトップも限定的な全方位交戦能力を備えてはいたが、本格的な全方位交戦可能な空対空ミサイルの先がけとなったのは、アメリカのAIM-9Lで、これは1978年から生産を開始した。また、ソビエト連邦でも、1982年から運用開始したR-60Mで全方位交戦能力を獲得した。 AIM-9Lは、フォークランド紛争にて、イギリス海軍艦隊航空隊のシーハリアーFRS.1に搭載されて実戦投入された。このとき、アルゼンチン軍は、第2世代のIRH誘導システムを搭載したR.550 マジックを使用していたことから、全方位交戦能力を備えていなかった。このことから、交戦可能域という点でイギリス海軍が優位であり、AIM-9Lは、86%という極めて高い命中率を記録している。イギリス軍は、この戦争を通じて航空優勢を獲得していたが、AIM-9Lの全方位交戦能力は、これに大きく貢献した。
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