光線行列の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 21:34 UTC 版)
光線追跡(ABCD)行列解析では、光学要素(ここでは厚レンズ)を、入射面での ( x 1 , θ 1 ) {\displaystyle (x_{1},\theta _{1})} から 出射面での ( x 2 , θ 2 ) {\displaystyle (x_{2},\theta _{2})} への変化として扱う。 光線追跡は、入射面と出射面と呼ばれる、光軸に垂直な2つの面に基づいて行われる。一般性を失うことなく、光軸が固定座標系の z 軸に一致しているとすることができる。系に入射する光線が入射面と交わる点において、光線は光軸から x1 だけ離れており、光線と光軸のなす角は θ1 であるとする。光線が系内を進み、出射面と交わる点において、光線は光軸から x2 だけ離れており、光線と光軸のなす角は θ2 であるとする。また、入射・出射面中の媒質の屈折率を n1,n2 とする。 このとき、これらの量は、以下の式により関係づけられる。 [ x 2 θ 2 ] = [ A B C D ] [ x 1 θ 1 ] {\displaystyle {\begin{bmatrix}x_{2}\\\theta _{2}\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}A&B\\C&D\end{bmatrix}}\ {\begin{bmatrix}x_{1}\\\theta _{1}\end{bmatrix}}} ここで、 A = x 2 x 1 | θ 1 = 0 B = x 2 θ 1 | x 1 = 0 {\displaystyle A={x_{2} \over x_{1}}{\bigg |}_{\theta _{1}=0}\qquad B={x_{2} \over \theta _{1}}{\bigg |}_{x_{1}=0}} また、 C = θ 2 x 1 | θ 1 = 0 D = θ 2 θ 1 | x 1 = 0 {\displaystyle C={\theta _{2} \over x_{1}}{\bigg |}_{\theta _{1}=0}\qquad D={\theta _{2} \over \theta _{1}}{\bigg |}_{x_{1}=0}} これは、入射面と出射面における光線ベクトルが、2つの面の間の光学系を表す光線行列 M によって関係づけられることを表している。黒体輻射に基づく熱力学的な議論より、光線行列 M の行列式は、屈折率の比により表されることが示される。 det ( M ) = A D − B C = n 1 n 2 {\displaystyle \det(\mathbf {M} )=AD-BC={n_{1} \over n_{2}}} したがって、入射面と出射面が同一の媒質中にあるか、あるいは異なる媒質であるが同一の屈折率を有している場合には、M の行列式は1となる。 文献によっては、光線行列について異なった定義を用いている。そこでは光学方向余弦 n sinθ を θ の代わりに用いている。これにより、特に屈折に関わる光線行列に変更が生じる。 同様の手法は電気回路の解析にも用いられる。二端子対回路を参照のこと。
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