元永本古今和歌集とは? わかりやすく解説

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元永本古今和歌集

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/05 05:33 UTC 版)

元永本古今和歌集上帖(仮名序部分)唐草文雲母刷り料紙
元永本古今和歌集上帖(仮名序部分)金銀の切箔、野毛、砂子散らしの料紙

元永本古今和歌集(げんえいぼんこきんわかしゅう)は、平安時代末期(12世紀)に書写された『古今和歌集』の古写本。仮名序および全20巻を完存する『古今和歌集』の写本としては、最古の遺品。綴葉装(列帖装)冊子本、上下二帖。平安時代後期、元永3年(1120年)頃に書写され、仮名書道の絶頂期における代表的古筆の一つ。伝称筆者源俊頼だが、書風から藤原定実を筆者とするのがほぼ[1][2]定説である。国宝東京国立博物館蔵。

概要

由来

「元永本」の名称の由来は、上巻末尾に本文と同筆で「元永三年七月二十四日」の奥書があることによる。伝来は、江戸時代初期に尾張徳川家から加賀前田家に渡り蔵されていたが、中期には同家の家臣の手に渡ったらしい[注釈 1]明治に入ると三井家11家のうち室町家の所収に帰した[注釈 2]。室町家当主・三井高大(たかひろ)が昭和44年(1969年)に死去した後、同人の遺志に基づき、その翌年に東京国立博物館に寄贈された[5]

料紙

料紙は5枚を一重ねとして、2つ折りにし、糸で綴じる。1面の寸法は21.1×15.5センチメートル。赤、緑、黄、茶、紫などの色変わりの染紙を料紙とし、表面は唐草、菱、七宝など15種類の型文様[6]を雲母刷りにした唐紙で、裏面は金銀の切箔、野毛、砂子を散らす[7][8]

現状の元永本の本紙は、上巻191枚382頁分、下巻196枚392頁分だが、伝来過程で巻頭巻末部分は破損欠失したと見られ、本来は上下巻とも200枚の帖だったと推定される[9]。しかし、平安時代当時の原装形態をほぼ完全に留めており、完本ゆえに全体像が明らかになる点で貴重である。巧妙な筆致と、華麗な料紙装飾とが表裏一体となってとけ合った、国文学書道史における貴重な優品と言える[10]

書写日

平安時代の仮名書き史料には、年号・筆者名が記されていることが少ないので、その書写年代を推定するにも不便が多い。ところが、元永本古今集の上巻末尾には本文と同筆で「元永三年七月二十四日」とある。

書写年代推定の基準となる

これにより、この書風と同一人の手によると判じることができるものは、書写時日もそのころであろうと考えられる。「西本願寺本三十六人家集」がそれにあたる[11]

注釈

  1. ^ 飯島春敬は『日本名筆全集 平安時代篇 巻8』の解説で別の由来を述べており[3]
  2. ^ 佐佐木信綱も由来に言及している[4]

脚注

  1. ^ 今関『かな 伝源俊頼 元永本古今和歌集』1972年、3頁https://dl.ndl.go.jp/pid/12428460/1/5?keyword=研究の余地 
  2. ^ 飯島春敬「元永本古今集に就いて(1)」『書芸』1935年、15-19頁。 元永本古今集に就いて(2)」『書芸』1935年、11-18頁。 
  3. ^ 飯島春敬『元永本古今和歌集』1955年、75頁https://dl.ndl.go.jp/pid/2475376/1/77?keyword=元永本伝来 
  4. ^ 佐佐木信綱「元永本古今集に就て」『書芸』第6巻第4号、1936年6月、21頁。 
  5. ^ 東京国立博物館陳列品収集の歩み」『MUSEUM』第262巻、東京国立博物館、1973年、34頁。 
  6. ^ 飯島春敬「元永本古今集に就いて(6)」『書芸』1936年2月、18頁。 
  7. ^ 高橋裕次『日本の料紙装飾の技法における受容と発展について』、280頁。 
  8. ^ 『週刊朝日百科』「日本の国宝」44号、朝日新聞社、1997、p1 - 122。解説執筆は島谷弘幸
  9. ^ 飯島春敬「元永本古今集に就いて(6)」『書芸』1936年2月、14頁。 
  10. ^ 佐佐木信綱「元永本古今集に就て」『書芸』1936年6月、20-21頁。 
  11. ^ 飯島、久曽神『国寳西本願寺三十六人集』1944年、58-59頁https://dl.ndl.go.jp/pid/1882630/1/140?keyword=本書原本の 

参考文献

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