事件記録符号とは? わかりやすく解説

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事件記録符号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/15 22:22 UTC 版)

事件記録符号(じけんきろくふごう)は、日本の裁判所が受け付けた民事事件刑事事件を識別するため、事件に付する漢字・カタカナ・ひらがな1文字または2文字で構成する符号である。

事件記録符号の表示

事務

訴訟法上の裁判所が、申立書や届出書などを、審判の対象となるべきものとして接受した際には、これを事件係またはそれに準ずるものにおいて取り扱う。受領された書類は、閲読を経て受付日付印により受付日付が表示されたのち、条件を満たす書類が所定の事件簿または上訴申立書等記録簿に登載され、事件記録符号および事件番号の記載の手続きに進む[1]

現在事件符号について定める規則は、以下の8つである。いずれも最高裁判所規程である。

  • 民事事件記録符号規程(平成13年最高裁判所規程第1号)
  • 行政事件記録符号規程(昭和38年最高裁判所規程第3号)
  • 刑事事件記録符号規程(平成13年最高裁判所規程第2号)
  • 家庭事件記録符号規程(昭和26年最高裁判所規程第8号)
  • 医療観察事件記録符号規程(平成17年最高裁判所規程第6号)
  • 没収の裁判の取消事件記録符号規程(昭和38年最高裁判所規程第2号)
  • 法廷等の秩序維持に関する法律違反事件記録符号規程(昭和27年最高裁判所規程第15号)
  • 裁判官の分限事件記録符号規程(昭和24年最高裁判所規程第3号)

特徴

事件記録符号は、おおまかには民事事件に関わる場合カタカナ、刑事事件に関わる場合ひらがなが用いられる。したがって点訳や朗読の際には同じ読みでも表記の異なる場合がある[2][3]

そのうえで、民事事件ではカタカナ一文字か二文字または漢字一文字または漢字一文字とカタカナ一文字、行政事件では「行」にカタカナ一文字、刑事事件ではひらがな一文字、家庭事件では、家事事件及び訴訟等事件については「いえ」にカタカナ一文字、少年事件については「少」にカタカナ一文字、医療観察事件では「医」にひらがな一文字、没収の裁判の取消事件では「収」にひらがな一文字、法廷等の秩序維持に関する法律違反事件では「秩」にひらがな一文字、裁判官の分限事件では「分」または「分」にカタカナ一文字をそれぞれ付すことになっている[1][3]

また、行政事件の記録符号を除き、ひらがなあるいはカタカナを用いる場合には「いろは」順で符号が付けられている[4]

事件の表示

事件は、裁判所が受け付けた司法年度(暦年)、事件種類を表す符号、当該年度の事件種類毎に受付順で付す通し番号、の3部分で構成する事件番号[注釈 1]で管理する。裁判所と事件番号の指定で、日本の裁判所が受け付けた事件を一意に特定する。「A地方裁判所平成元年(ワ)第123号」は、A地方裁判所が平成元年に平成元年1月1日から受け付けた123番目の民事訴訟第一審、を表す。


事件記録符号の一覧

民事事件記録符号

民事事件記録符号規程(平成13年1月31日最高裁判所規程第1号、改正令和6年2月14日同第2号)による[5]

簡易裁判所

(イ) 和解事件

民事訴訟法第275条に定める訴え提起前の和解につき、申立書が受領された場合、和解事件簿に記録され、この符号が付される。

(ロ) 督促事件

民事訴訟法第382条に定める支払督促につき、同法第383条に定める通り、簡易裁判所の裁判所書記官に対して提出された申立書が受領された場合、督促事件簿に記録され、この符号が付される。

(ハ) 通常訴訟事件

以下の場合において、簡易裁判所で受領された事案につき、民事通常訴訟事件簿に記録され、この符号が付される。なお各場合について簡易裁判所に関係しない法もある。地方裁判所、および高等裁判所では(ワ)の符号が付される。

訴えの提起

民事訴訟法第133条、独占禁止法第25条、平成25年独占禁止法改正法附則第7条、平成25年改正前の旧独占禁止法第85条などに基づいて訴えの提起がなされた場合。

なお訴えの主観的又は客観的併合の場合においても、訴状ごとに符号、番号が付される。また、和解又は取り下げ等の無効を理由とする期日指定の申立てがあった場合は、日記簿に登載され、事件記録符号は付されない[6]

反訴の提起

民事訴訟法第146条に基づいて反訴の提起が行われた場合。

仮執行の原状回復及び損害賠償の申立て

民事訴訟法第260条に基づいて仮執行の宣言の失効及び原状回復等を求める申立てが行われた場合。

参加の申出

民事訴訟法第47条、49条、51条、52条、一般法人法第280条、会社法第849条1項、民再法138、油賠法24、30の3などに基づいて訴訟参加の申出が行われた場合。

なお、これに補助参加(民事訴訟法第42条など)は含まれない[6]

  • (手ハ) 手形訴訟事件及び小切手訴訟事件
  • (少コ) 少額訴訟事件
  • (少エ) 少額訴訟判決に対する異議申立て事件
  • (ハレ) 控訴提起事件
  • (ハツ) 飛躍上告提起事件
  • (少テ) 少額異議判決に対する特別上告提起事件
  • (ニ) 再審事件
  • (ヘ) 公示催告事件
  • (ト) 保全命令事件
  • (ハソ) 抗告提起事件
  • (借) 借地非訟事件
  • (ノ) 民事一般調停事件
  • (ユ) 宅地建物調停事件
  • (セ) 農事調停事件
  • (メ) 商事調停事件
  • (ス) 鉱害調停事件
  • (交) 交通調停事件
  • (公) 公害等調停事件
  • (特ノ) 特定調停事件
  • (少ル) 少額訴訟債権執行事件
  • (ア) 過料事件
  • (キ) 共助事件
  • (サ) 民事雑事件

地方裁判所

(ワ) 通常訴訟事件

簡易裁判所(イ)和解事件と同旨。なお「簡易裁判所」を「地方裁判所」に読み替える。

  • (手ワ) 手形訴訟事件及び小切手訴訟事件
  • (ワネ) 控訴提起事件
  • (ワオ) 飛躍上告提起事件
  • (ワ受) 飛躍上告受理申立て事件
  • (カ) 再審事件
  • (ヘ) 公示催告事件
  • (ヨ) 保全命令事件
  • (レ) 控訴事件
  • (レツ) 上告提起事件
  • (ソ) 抗告事件
  • (ソラ) 抗告提起事件
  • (チ) 民事非訟事件
  • (ヒ) 商事非訟事件
  • (借チ) 借地非訟事件
  • (シ) 罹災都市借地借家臨時処理事件及び接収不動産借地借家臨時処理事件
  • (発チ) 発信者情報開示命令事件
  • (配チ) 配偶者暴力等に関する保護命令事件
  • (労) 労働審判事件
  • (ノ) 民事一般調停事件
  • (ユ) 宅地建物調停事件
  • (セ) 農事調停事件
  • (メ) 商事調停事件
  • (ス) 鉱害調停事件
  • (交) 交通調停事件
  • (公) 公害等調停事件
  • (特ノ) 特定調停事件
  • (リ) 事情届に基づく配当等手続事件
  • (ヌ) 不動産等に対する強制執行事件
  • (ル) 債権等に対する強制執行事件
  • (ケ) 不動産等に対する担保不動産競売事件
  • (ナ) 債権等担保権実行事件
  • (財チ) 財産開示事件
  • (情チ) 第三者情報取得事件
  • (ヲ) 執行雑事件
  • (企) 企業担保権実行事件
  • (フ) 破産事件
  • (再) 再生事件
  • (再イ) 小規模個人再生事件
  • (再ロ) 給与所得者等再生事件
  • (ミ) 会社更生事件
  • (承) 承認援助事件
  • (船) 船舶所有者等責任制限事件
  • (油) 油濁等損害賠償責任制限事件
  • (集) 簡易確定事件
  • (集ワ) 簡易確定決定に対する異議申立事件
  • (ホ) 過料事件
  • (エ) 共助事件
  • (仲) 仲裁関係事件
  • (和チ) 特定和解の執行決定事件
  • (モ) 民事雑事件
  • (人) 人身保護事件
  • (人モ) 人身保護雑事件

高等裁判所

(ワ) 通常訴訟事件

簡易裁判所(イ)和解事件と同旨。なお「簡易裁判所」を「高等裁判所」に読み替える。

  • (ネ) 控訴事件
  • (ネオ) 上告提起事件
  • (ネ受) 上告受理申立て事件
  • (ラ) 抗告事件
  • (ラク) 特別抗告提起事件
  • (ラ許) 許可抗告申立て事件
  • (ム) 再審事件
  • (ツ) 上告事件
  • (ツテ) 特別上告提起事件
  • (ノ) 民事一般調停事件
  • (ユ) 宅地建物調停事件
  • (セ) 農事調停事件
  • (メ) 商事調停事件
  • (ス) 鉱害調停事件
  • (交) 交通調停事件
  • (公) 公害等調停事件
  • (ウ) 民事雑事件
  • (人ナ) 人身保護事件
  • (人ウ) 人身保護雑事件

最高裁判所

  • (オ) 上告事件
  • (受) 上告受理事件
  • (テ) 特別上告事件
  • (ク) 特別抗告事件
  • (許) 許可抗告事件
  • (ヤ) 再審事件
  • (マ) 民事雑事件

行政事件記録符号

行政事件記録符号規程(平成8年12月4日最高裁判所規程第2号)による。[7]

簡易裁判所

  • (行ア) 共助事件
  • (行イ) 雑事件

地方裁判所

  • (行ウ) 訴訟事件
  • (行ヌ) 控訴提起事件
  • (行エ) 飛躍上告提起事件及び上告提起事件
  • (行ネ) 飛躍上告受理申立て事件
  • (行オ) 再審事件
  • (行カ) 抗告提起事件
  • (行キ) 共助事件
  • (行ク) 雑事件

高等裁判所

  • (行ケ) 訴訟事件(第一審)
  • (行コ) 控訴事件
  • (行サ) 上告提起事件
  • (行ノ) 上告受理申立て事件
  • (行シ) 特別上告提起事件
  • (行ス) 抗告事件
  • (行セ) 特別抗告提起事件
  • (行ハ) 許可抗告申立て事件
  • (行ソ) 再審事件
  • (行タ) 雑事件

最高裁判所

  • (行チ) 訴訟事件(第一審)
  • (行ツ) 上告事件
  • (行ヒ) 上告受理事件
  • (行テ) 特別上告事件
  • (行ト) 特別抗告事件
  • (行フ) 許可抗告事件
  • (行ナ) 再審事件
  • (行ニ) 雑事件

刑事事件記録符号

刑事事件記録符号規程(平成13年2月7日最高裁判所規程第2号、改正平成20年7月9日最高裁判所規程第3号)による[8]

簡易裁判所

地方裁判所

  • (わ) 公判請求事件
  • (か) 証人尋問請求事件
  • (よ) 証拠保全請求事件
  • (た) 再審請求事件
  • (れ) 共助事件
  • (そ) 刑事補償請求事件
  • (つ) 起訴強制事件
  • (ね) 訴訟費用免除申立て事件
  • (な) 費用補償請求事件
  • (え) 訴訟費用負担請求事件
  • (損) 刑事損害賠償命令事件
  • (む) 雑事件
  • (わ) 公判請求事件

高等裁判所

  • (う) 控訴事件
  • (の) 第一審事件
  • (お) 再審請求事件
  • (く) 抗告事件
  • (ら) 抗告受理申立て事件
  • (や) 費用補償請求事件
  • (ま) 刑事補償請求事件
  • (け) 決定に対する異議申立て事件
  • (ふ) 訴訟費用免除申立て事件
  • (て) 雑事件

最高裁判所

  • (あ) 上告事件
  • (さ) 非常上告事件
  • (き) 再審請求事件
  • (ゆ) 上告受理申立て事件
  • (め) 移送許可申立て事件
  • (み) 判決訂正申立て事件
  • (し) 特別抗告事件
  • (ひ) 費用補償請求事件
  • (も) 刑事補償請求事件
  • (せ) 訴訟費用免除申立て事件
  • (す) 雑事件

家庭事件記録符号

家庭事件記録符号規程(平成25年10月30日最高裁判所規程第3号)による[9]

家庭裁判所

  • (家) 家事審判事件
  • (家イ) 家事調停事件
  • (家ホ) 人事訴訟事件
  • (家へ) 通常訴訟事件
  • (家ヌ) 子の返還申立事件
  • (家二) 家事抗告提起事件
  • (家ト) 民事控訴提起等事件
  • (家チ) 再審事件
  • (家リ) 保全命令事件
  • (家ハ) 家事共助事件
  • (家口) 家事雑事件
  • (少) 少年保護事件
  • (少ハ) 準少年保護事件
  • (少二) 少年審判等共助事件
  • (少口) 少年審判雑事件

高等裁判所

  • (家) 家事審判事件
  • (家イ) 家事調停事件

医療観察事件記録符号

医療観察事件記録符号規程(平成17年6月29日最高裁判所規程第6号)による[10]

簡易裁判所

  • (医い) 共助事件

地方裁判所

  • (医ろ) 処遇事件
  • (医は) 共助事件
  • (医に) 雑事件

高等裁判所

  • (医ほ) 抗告事件

最高裁判所

  • (医へ) 再抗告事件

没収の裁判の取消事件記録符号

没収の裁判の取消事件記録符号規程(昭和38年7月23日最高裁判所規程第2号、改正平成20年11月5日最高裁判所規程第6号)による[11]

簡易裁判所

  • (収い)

地方裁判所

  • (収ろ)

高等裁判所

  • (収に) 第一審事件
  • (収ほ) 控訴事件

最高裁判所

  • (収へ) 第一審事件
  • (収と) 上告事件

法廷等の秩序維持に関する法律違反事件記録符号

法廷等の秩序維持に関する法律違反事件記録符号規程(昭和27年10月20日最高裁判所規程第15号)による[12]

簡易裁判所

  • (秩い)

地方裁判所

  • (秩ろ)

家庭裁判所

  • (秩は)

高等裁判所

  • (秩に) 第一審事件
  • (秩ほ) 抗告事件
  • (秩へ) 異議申立事件

最高裁判所

  • (秩と) 第一審事件
  • (秩ち) 特別抗告事件

裁判官の分限事件記録符号

裁判官の分限事件記録符号規程(昭和24年2月1日最高裁判所規程第3号)による[13]

脚注

注釈

  1. ^ 検察庁が犯罪事実ごとに付する「事件番号」(いわゆる「検番」)とは異なる。なお、検番は「元号○検第○号」の形式。

出典

  1. ^ a b 事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについて(最高裁総務三課通達)
  2. ^ 石川明, 梶村太市 編『注解民事調停法 : 民事調停規則』,青林書院,1993.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12720484 (参照 2025-09-10)
  3. ^ a b 多田俊子, 指田忠司 編『法学関係略語・略記便覧』,ユスティティアの会,1988.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12759910 (参照 2025-09-10)
  4. ^ https://home.hiroshima-u.ac.jp/hirano/nyumon/fugo2005.htm
  5. ^ 民事事件記録符号規程
  6. ^ a b 最高裁判所事務総局 編『事件の受付および分配に関する事務の取扱要領の解説』,法曹会,1977.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12018781 (参照 2025-09-16)
  7. ^ 行政事件記録符号規程
  8. ^ 刑事事件記録符号規程
  9. ^ 家庭事件記録符号規程
  10. ^ 医療観察事件記録符号規程
  11. ^ 没収の裁判の取消事件記録符号規程
  12. ^ 法廷等の秩序維持に関する法律違反事件記録符号規程(昭和27年10月20日最高裁判所規程第15号)
  13. ^ 裁判官の分限事件記録符号規程(昭和24年2月1日最高裁判所規程第3号)

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