予告編など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 04:11 UTC 版)
なお、『箱男』の本編では組み込まれず、予告編のみで紹介されていた章には、箱男Bが何者かの襲撃に会って争い、どちらか一人が死んだことになっていて、死んだ男は、「人造皮のジャンパーの腋の下が裂け、裾がめくれて、小さな花模様のシャツがのぞいている」と記されている。これについて安部は、「ところで、やっかいなのは、ここから先の計算だ。いったい、どっちが死んで、どっちが生き残ったのだろう」と述べ、襲撃者が襲撃に失敗し逆に箱男Bに殺され、箱男Bが立ち去ったのなら別に問題ないとしながら、以下のように語っている。 殺されたのがBの方だった場合は、どういう事になるのだろう。あいにく、事情はまったく変わらないのだ。原因不明の事故による、ごくありふれた変死体。前には彼を守ってくれた同じ条件が、今度は彼を見殺しにする。箱男に化けた襲撃者は、一見して箱男だというだけで、無事容疑者リストから除外してもらえるのだ。たしかに箱は理想の避難所である。箱の外見に変化がないかぎり、内容にどんな変更があろうと、同じ箱男で通用してしまう。本来箱男殺しは、完全犯罪なのだ。そしてBは何時までたってもBなのである。 — 安部公房「箱男 予告編――周辺飛行13」 この、箱男の「匿名性」から導かれる「確定不能を生み出す形式」という概念は、本編の『箱男』の仕組みでも踏襲されていると工藤智哉は説明している。
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