ミッドナイト・エクスプレス (映画)
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| ミッドナイト・エクスプレス | |
|---|---|
| Midnight Express | |
| 監督 | アラン・パーカー |
| 脚本 | オリバー・ストーン |
| 原作 | ビリー・ヘイズ ウィリアム・ホッファー |
| 製作 | アラン・マーシャル デヴィッド・パットナム |
| 製作総指揮 | ピーター・グーバー |
| 出演者 | ブラッド・デイヴィス アイリーン・ミラクル |
| 音楽 | ジョルジオ・モロダー |
| 撮影 | マイケル・セレシン |
| 編集 | ジェリー・ハンブリング |
| 製作会社 | カサブランカ・フィルムワークス |
| 配給 | |
| 公開 | |
| 上映時間 | 121分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 英語 |
| 製作費 | $2,300,000[1] |
| 興行収入 | $35,000,000[1] |
『ミッドナイト・エクスプレス』 (Midnight Express) は、1978年のアメリカ合衆国のドラマ映画。ビリー・ヘイズの1977年の回顧録をオリバー・ストーンが脚色し、アラン・パーカーが監督。出演はブラッド・デイヴィスとアイリーン・ミラクルなど。
ヘイズは、この映画がトルコ人囚人を暴力的で極悪人として描いており、原作からあまりにもかけ離れていると批判した。
本作で脚本を書いたオリバー・ストーンおよび、作曲のジョルジオ・モロダーがアカデミー賞を受賞した。
ストーリー
「これは実話に基づいています。1970年10月6日、トルコのイスタンブールで始まる」 イスタンブールで休暇を過ごしていたアメリカ人大学生のビリー・ヘイズは、2キログラム(4.4ポンド)のハシシを胸に巻き付ける。彼と恋人のスーザンがアメリカ行きの飛行機に乗ろうとした時、テロを警戒していた兵士たちがビリーを身体検査し、薬物を発見。ビリーは警察に逮捕され、全裸検査を受ける。
そこに、テキサス訛りの強いアメリカ人(ビリーは彼を「テックス」と呼ぶ)が現れ、ビリーを警察署まで同行させ、通訳をしてくれた。ビリーはタクシー運転手からハシシを買ったと主張し、釈放される代わりに警察に運転手の居場所を突き止める手伝いを申し出た。近くの市場で、ビリーは警官に運転手を指摘し、警官たちはがさ入れに入った。一方、ビリーは逃走を試みるが、テックスに銃を突きつけられて再び捕らえられてしまう。
スルタンアフメット刑務所での最初の夜、凍えるような寒さに震えるビリーは独房を抜け出し、毛布を盗みます。その盗みの罪で看守長ハミドゥに独房から追い出され、容赦なく殴打されます。数日後、ビリーはサマルチュラル刑務所で目を覚まします。周りには、ジミー(モスクから燭台2本を盗んだアメリカ人)、マックス(イギリス人のヘロイン中毒者)、エリック(スウェーデン人の麻薬密輸業者)といった西洋人の囚人たちがいました。ジミーはビリーに、この刑務所は外国人にとって危険であり、幼い子供でさえ誰も信用できないと警告します。
ビリーは父親、米国領事館員、そしてトルコ人の弁護士と面会し、自身の状況について話し合う。ビリーの裁判で、検察官は麻薬密輸の罪で彼を起訴する。主任判事はビリーに同情し、麻薬所持の罪で懲役4年の判決を下す。ビリーと父親はひどく落ち込むが、トルコ人の弁護士は、検察官は終身刑を望んでいたため、これは良い結果だと主張する。
ジミーはビリーに刑務所の地下トンネルからの脱獄計画に加わるよう頼むが、間もなく釈放されるビリーはそれを断る。ジミーは一人で脱獄しようとするが失敗し、残忍な暴行を受ける。釈放53日前、ビリーは検察側の控訴により、アンカラのトルコ高等裁判所が判決を覆したことを知る。当初、より軽い罪である所持罪で有罪にしようとしていた検察官は、ビリーを密輸罪で起訴し、30年の懲役刑に再判決された。
絶望のあまり、ビリーはジミーとマックスに同行し、刑務所の地下にある地下墓地からの脱出を試みる。しかし、行き詰まりに陥り、彼らは諦める。看守に媚びへつらう囚人リフキは、看守への情報提供者になって恩恵を受けていたが、この逃亡未遂事件も看守に密告する。看守長ハミドゥは、最初の逃亡未遂事件の犯人はジミーではないかと疑い、ジミーは再び罰として連行され、その後、二度と姿を現さない。ビリーの投獄は苛酷で残酷なものとなり、恐ろしい肉体的・精神的拷問が次々と繰り広げられ、ビリーは精神を病んでしまい、リフキの舌を噛み切って殺してしまう。彼は精神異常者用の病棟に送られ、そこで他の精神異常者らに紛れて彷徨い、そこへマックスも連れて来られる。彼は原因不明の違反で看守から逃げているところを看守長ハミドゥにつかまり、重傷を負う。
1975年、ビリーの恋人スーザンが彼を訪ねてきた。ビリーの状態を知りショックを受けたスーザンは、ビリーにここから出なければ死ぬと告げる。そして、ビリーの脱出を助けるために金を隠したスクラップブックを彼に残していく。彼女の訪問は、ビリーが正気を取り戻す大きな助けとなる。ビリーは瀕死のマックスに別れを告げ、生き続けるように言い、必ず迎えに戻ってくると約束する。マックスは目を覚まし、意識はいくらか戻っていた。ビリーはハミドゥに賄賂を渡して刑務所の病院に連れて行ってもらおうとするが、ハミドゥはビリーを無理やり部屋に連れ込み、レイプしようとする。ビリーは激怒し、二人は格闘になり、ビリーはハミドゥは壁のコートを掛けるフックに頭を突き刺して殺す。ビリーは看守の制服を着るとトルコ語を巧みに操り、正面玄関から出て自由へと走って行く。
1975年10月4日の夜、ビリー・ヘイズはギリシャ国境を無事に越え、3週間後にケネディ空港に到着した。
キャスト
| 役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
|---|---|---|---|
| TBS版 | Netflix版 | ||
| ビリー・ヘイズ | ブラッド・デイヴィス | 池田秀一 | 金城大和 |
| スーザン | アイリーン・ミラクル | 幸田直子 | 渡辺広子 |
| テックス | ボー・ホプキンス | 渡部猛 | |
| ジミー・ブース | ランディ・クエイド | 青野武 | |
| マックス | ジョン・ハート | 草野大悟 | |
| ハミドゥ | ポール・L・スミス | 宮川洋一 | |
| リフキー | パオロ・ボナチェリ | 今西正男 | 駒谷昌男 |
| エリック | ノーバート・ウェイサー | 秋元羊介 | |
| ウィリアム・ヘイズ (ビリーの父) |
マイク・ケリン | 梶哲也 | 佐々木睦 |
| スタンリー・ダニエルズ | マイケル・エンサイン | ||
| その他 | N/A | 鎗田順吉 千田光男 榊原良子 |
|
| 演出 | 蕨南勝之 | ||
| 翻訳 | 佐藤一公 | ||
| 調整 | 前田仁信 | ||
| 効果 | 遠藤堯雄 桜井俊哉 |
||
| 制作 | 東北新社 | ||
受賞・ノミネート
| 映画賞 | 部門 | 候補者 | 結果 |
|---|---|---|---|
| アカデミー賞 | 作品賞 | ノミネート | |
| 助演男優賞 | ジョン・ハート | ||
| 監督賞 | アラン・パーカー | ||
| 脚色賞 | オリバー・ストーン | 受賞 | |
| 作曲賞 | ジョルジオ・モロダー | ||
| 編集賞 | ジェリー・ハンブリング | ノミネート | |
| ゴールデングローブ賞[2] | 作品賞 (ドラマ部門) | 受賞 | |
| 主演男優賞 (ドラマ部門) | ブラッド・デイヴィス | ノミネート | |
| 助演男優賞 | ジョン・ハート | 受賞 | |
| 新人男優賞 | ブラッド・デイヴィス | ||
| 新人女優賞 | アイリーン・ミラクル | ||
| 監督賞 | アラン・パーカー | ノミネート | |
| 脚本賞 | オリバー・ストーン | 受賞 | |
| 作曲賞 | ジョルジオ・モロダー | ||
| ロサンゼルス映画批評家協会賞 | 音楽賞 | ジョルジオ・モロダー | 受賞 |
| カンヌ国際映画祭 | パルム・ドール | アラン・パーカー | ノミネート |
| 英国アカデミー賞 | 作品賞 | ノミネート | |
| 助演男優賞 | ジョン・ハート | 受賞 | |
| 監督賞 | アラン・パーカー | ||
| 編集賞 | ジェリー・ハンブリング | ||
| 新人賞 | ブラッド・デイヴィス | ノミネート |
評価
映画評論サイト Rotten Tomatoesによると、31件のレビューに基づき、批評家の90%がこの映画に好意的な評価を与え、平均評価は10点満点中7.6点となっている。同サイトの批評家による総評は、「生々しく容赦のない『ミッドナイト・エクスプレス』は、投獄のリアルな描写で観客を魅了し、苦難に耐えるという単純な行為から哀愁を掘り起こしている」となっている[3]。
Metacriticでは、11人の批評家による加重平均スコアは100点満点中59点であり、「賛否両論、あるいは平均的な評価」となっている[4]。
実話との相違
- ビリー・ヘイズが自身の実体験を記した同名の著書を原作にしているが、トルコ人の描写など原作に書かれた事実を脚色している点(実際は一人旅だったのがガールフレンドと一緒だった事になっていたり、拷問されたり、同じ房の囚人を殺したり、看守に性的暴行を受けそうになって思わず殺害してしまった所)があり、原作者のヘイズを含め、トルコ政府およびトルコに住む欧米人から批判された。映画はトルコをあまりに残忍に描いているとの反発を受け、原作者は謝罪をしている。[5]
- 最後に脱獄するのも改変されており、実話では海で嵐に巻き込まれたときにビリー・ヘイズは海に飛込み、ギリシャまで泳いで脱出しているのだが。予算の都合で、刑務所の中で看守長を殺害したのちに看守に変装して脱出したことに書き換えられた[6]。。
エピソード
- 2004年にトルコを訪れた際、映画『ミッドナイト・エクスプレス』の脚本でアカデミー賞を受賞した脚本家オリバー・ストーンは、映画におけるトルコ人の描写について謝罪した[7]。彼は最終的に「真実を歪めたことについて謝罪した」[8]。
- タイトルの「深夜特急」とは、「脱獄」を意味する隠語である[6]
脚注
- ^ a b “Midnight Express (1978)” (英語). Box Office Mojo. 2011年4月6日閲覧。
- ^ “The 36th Annual Golden Globe Awards (1979)” (英語). HFPA. 2010年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月6日閲覧。
- ^ “Midnight Express (1978)”. Rotten Tomatoes. Fandango Media. 2021年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月6日閲覧。
- ^ “Midnight Express Reviews”. Metacritic. CBS Interactive. 2018年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月22日閲覧。
- ^ “Billy Hayes and the Real Midnight Express”. 2024年5月13日閲覧。
- ^ a b 町山智浩「町山智浩の映画塾!「ミッドナイト・エクスプレス」」 https://www.youtube.com/watch?v=KWaqax1GuKI&t=21s
- ^ Smith, Helena (2004年12月16日). “Stone sorry for Midnight Express”. The Guardian (London). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。 2012年1月14日閲覧。
- ^ Walsh, Caspar. The 10 best prison films Archived 27 September 2016 at the Wayback Machine.. The Observer. 30 May 2010
関連項目
- セルロイド・クローゼット
- ブロークダウン・パレス - 同作品の女性版といえる作品。
- リターン・トゥ・パラダイス
外部リンク
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