ピグー効果とは? わかりやすく解説

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資産効果

読み方:しさんこうか
別名:金融資産効果実質残高効果、ピグー効果
英語:assets effectwealth effect

名目資産価格及び価値の上に伴い消費投資、あるいは雇用などが活発化すること。特に株価土地価格の上昇が、消費投資拡大影響与えることを指す場合が多い。

反対に株価土地価格下落することで、消費投資減少することを逆資産効果と呼ぶ。

資産効果はデフレ金融危機からの脱却において重要な要素一つとしてみなす場合もある。

ピグー‐こうか〔‐カウクワ〕【ピグー効果】

読み方:ぴぐーこうか

物価が下がると、消費者保有している残高実質的価値高まり消費促進されるという効果英国経済学者ピグーの説。実質残高効果


ピグー効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/29 07:24 UTC 版)

ピグー効果(ピグーこうか、: Pigou effect)とは、特にデフレーションにおいて、資産(wealth)の実質価値の増加が生産高や雇用に刺激を与える効果のことである[1]。「資産効果」と呼ばれることもある[2][3]

解説

物価賃金が十分に下落すれば、消費者が保有している資産の実質的な価値が上がることにより、消費が増大(IS-LM分析で言えば、IS曲線が右にシフト)し、雇用と生産が増え、完全雇用が達成される[4]アーサー・セシル・ピグーは考えた。すなわち、ピグー効果を前提に考えると、仮に経済が不景気に陥り、失業(貨幣賃金の低下)が発生すると、デフレ状態になり、ピグー効果によって消費の増大(需要の増大)が起こり、そして雇用の増大がなされ、経済は自動的に(自己修正的に)景気回復へ向かうだろうということが言える。このピグー効果という用語は新古典派経済学者であるアーサー・セシル・ピグーの名前をとってドン・パティンキンが1948年に使いはじめた[5][6][7]

しかしながら、G.バーバラーやT.シトフスキーはピグー以前にも同じ所得効果を指摘しており、現在では実質残高効果や資産効果と呼ぶことも多い[8]。ピグー効果が示された論文として有名なのは1943年のピグーの論文「("The Classical Stationary State")」である。なお、ピグーは新古典派経済学者であることに留意する必要がある。

ここで、資産(wealth)とは、ピグーによって、マネーサプライ国債の和を物価で割ったものと定義されている[1]。ピグーは、賃金引下げによって物価(生産物の貨幣価格)が下がることによって、資産の実質価値が大きくなり、その実質購買力の増加が生ずるので、これが支出(特に消費支出)を刺激し、雇用が拡大すると論じた[9]。これがピグ―効果である。

彼は次の点が明記されていないジョン・メイナード・ケインズの『一般理論』は不十分であると論じた。すなわち、実質残高と現在の消費のつながりと、このような富効果が総需要の落ち込みに対して、ケインズが予測したよりも経済をより「自己修正的」にするだろうという点である[1]

この「貨幣賃金を引き下げることによって雇用が増大する」というピグーのアイデアに対しては、「不況失業を克服するためには政府が積極的に介入するべき」という立場を取るケインジアン達から批判がなされた。

ケインジアンとの論争

アーサー・セシル・ピグー

古典派の経済学者であったピグーは、彼ら古典派経済学者の基本的な信念である「技術等の諸条件が一定のもとで、もし労働者が競争的賃金政策に従うならば、経済体系は最終的には必ず完全雇用-定常状態に向かう」[10]という命題を論証する論文「("The Classical Stationary State")」を1943年に発表した。その中で述べられたのがピグー効果である。すなわち、貨幣賃金の引き下げが起こったとしても、ピグー効果によって(貨幣賃金および貨幣価値が完全に伸縮的であれば)自動的に完全雇用が達成されるというものである。

しかしながら、この「貨幣賃金の引き下げが結果的に雇用を拡大する」というアイデアに対しては、「不況失業を克服するためには政府が積極的に介入するべき」という立場を取るケインジアン達から批判が起こった。本郷亮 (2013)によれば、ピグーとケインジアンの論争は第一期と第二期に分けられるが[11]、第一期はピグーとケインジアンであるニコラス・カルドア(およびジョン・メイナード・ケインズ)の論争である。ピグーとケインジアンの学者達は1937-38年の間に失業論争と呼ばれる論争を繰り広げた[12]。ピグーは1937年に「貨幣賃金の引き下げが完全雇用を達成させる」という趣旨の「Real and Money Wage Rates in Relation to Unemployment」という論文を発表し、これが失業論争の発端となった。この1937年の論文では、ピグーは暗黙のうちに彼自身が1933年に発表した論文「The Theory of Unemployment(失業の理論)」から踏襲していた「貨幣賃金の下落は利子率を上昇させる」という立場を取っていた(一方でケインズは一般理論において貨幣賃金の下落は利子率を下落させるという主張をしていた)。ピグーは1933年の「The Theory of Unemployment(失業の理論)」のときから、次のような議論に反対していた。すなわち、貨幣賃金が下がったとしても、同様に物価が下がってしまうので、実質賃金は下落せず、雇用の拡大は起こらないという議論である[13]。ピグーはこの議論に反対し、所得が産業活動に直接の影響を受けない「固定所得階級」を想定すれば、貨幣賃金の切り下げは雇用を拡大するとした[12]。すなわち、もしそのような固定所得階級が存在するなら、貨幣賃金が切り下げされても、物価の下落の程度は常に貨幣賃金の下落の程度よりも小さくなる。すると、貨幣賃金の切下げによって実質賃金が下落することになり、労働力が割安となるため、雇用が拡大する、というのがピグーの主張である。この前提によって、ピグーは平均貨幣賃金の下落が常に総雇用を上昇させるモデルを設定した[12]。この考えの下、ピグーは、貨幣賃金の切り下げは、固定所得階級が存在することで経済を直接的に活性化させるため、総貨幣需要を増加させ、結果として、貨幣賃金の切り下げは利子率を上昇させると彼は考えた。ピグーは1937年の論文「Real and Money Wage Rates in Relation to Unemployment」でも暗黙のうちに「貨幣賃金の切り下げは利子率を上昇させる」という立場を取っていた[12]

ニコラス・カルドア

しかし、このピグーの論文に対してカルドアとケインズは同じく1937年に「Prof. Pigou on money wages in relation to unemployment」というピグーに反論する論文を発表している(2人は同じ題で論文を載せたが、ケインズの論文とカルドアの論文は別々のものであり、ケインズの論文にカルドアの論文が添付されるというような形式で提出されたため、共同研究というわけではない)。ケインズは、「ピグーは貨幣賃金と利子率の間に直接の関連があることを見逃しており、ピグーの理論が正しくあるためには、貨幣賃金率が平均貨幣供給量の変動に応じて変化していなければいけない」[14]と述べた。 しかしながら、ピグーが認めたのはケインズの反論ではなく、カルドアの反論だった。カルドアは数学的な手法を使い、ピグーのモデルは貨幣賃金の下落が利子率の下落を伴わない限り雇用を増大させないことを数学的に証明した[14]。また、カルドアの反論は、J.R.ヒックスが1937年に創始したIS-LMモデル[15]によって説明することができる。すなわち、貨幣賃金が下落し、物価が下落したとすると、IS-LMモデル上ではLM曲線が右にシフトすることになる。しかし、もし流動性の罠が発生しているならばLM曲線が右にシフトしても利子率は下落せず、投資も増えることはなく、雇用も増えない。ピグーは1938年のカルドアへの返答論文で自身の誤りを認めた。このカルドアの論文はケインズとの連名で提出され、経済誌であるEconomic Journal47巻の743ページから753ページに掲載された[16]。なお、743-745ページがケインズによるもので[17]、745-753ページがカルドアによって書かれたものである[18]

ジョン・メイナード・ケインズ
ミハウ・カレツキ

本郷亮 (2013)によれば、第二期は1941年に発表されたピグーによる論文「Employment and Equilibrium」以後のものである[11]。この第二期の議論は1941-50年の間に展開されたが、これらの議論はマーシャル体系とケインズ体系の一般化をめざす試みとして理解されている[19]。1943年にはピグーによって冒頭の「("The Classical Stationary State")」が発表された。この論文ではピグーは次のようにピグー効果を説明している。つまり、たとえ経済が流動性の罠に陥っていても、十分に貨幣賃金が下がり、物価が下がることで、資産の実質価値が上昇する。すると、この実質価値の上昇が、資産の実質購買力の上昇をもたらすため、支出(特に消費支出)が刺激され、その結果、雇用が拡大するというものであった[20]。この新しいルートであれば、たとえ利子率が下がらずとも支出が刺激され増加し、雇用が増大する[20]。IS-LMモデルで言えば、IS曲線が右にシフトし、完全雇用が達成される。ドン・パティンキンはこのような物価下落のもたらす消費の増大を「ピグー効果」と名付けた。これは実質残高効果とも呼ばれる。実質残高効果に対する反論としてはケインジアンであるミハウ・カレツキ1944年の論文 「Professor Pigou on “The Classical Stationary State”: A Comment」などがある。

モデルによる説明

高見典和 (2010)によれば、ピグーの1937年の論文「Real and Money Wage Rates in Relation to Unemployment」では次のようなモデルが使われた[21]



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