ビリアル方程式とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 人文 > 関数 > 方程式 > ビリアル方程式の意味・解説 

ビリアル展開

(ビリアル方程式 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 00:38 UTC 版)

ビリアル展開(ビリアルてんかい、: virial expansion)とは、実在気体圧力(主に圧縮因子の形で)や浸透圧を、温度と圧力に依存する様子を解析的に表すためにモル体積の逆数の冪級数に展開することである。ヘイケ・カメルリング・オネス1901年に提出した。ビリアル (virial) という語は「力の」という意味のラテン語(virium) に由来する。

実在気体の状態方程式について

理想気体の場合は圧縮因子が1であるが、実在気体はそうではないのでそのずれを補正する項として圧力 P や体積の逆数 1/V の冪級数で表した(つまりビリアル展開した)のがビリアル方程式である。

または P の冪級数では

で表される。ここで、P は圧力、Vm は1モルあたりの体積(モル体積)、R気体定数T温度である。B, C, ... は温度など分子間の相互作用に依存し、実験的に求められる各温度での気体ごとの定数で、ビリアル係数英語版という。それぞれ第2ビリアル係数 (second virial coefficient)、第3ビリアル係数、……と呼ばれる。理想気体の場合、または実在気体でも圧力0の極限では Z は1になり、圧力が上がるごとに、高次の Pの寄与が大きくなる。それぞれのビリアル係数は温度の関数である。第2項 B/Vm は2分子間相互作用に、第3項 C/V 2
m
 
は3分子間の相互作用に由来している。ビリアル方程式は、ジョセフ・エドワード・メイヤー英語版マリア・ゲッパート=メイヤークラスター展開の理論(1940年)によると、

と表せる (ρ = 1/v)。ここで、v = V/NA, k = R/NA なので、 PVm/RT = Pv/kT である。βn は既約クラスター積分と呼ばれるもので以下のように定式化される。

ここで、U は分子間ポテンシャルを、添字は分子の番号を表し、分子間ポテンシャル U には、実験値にあうようなものがいくつか提案されている。

上に挙げた既約クラスター積分は、具体的に計算すると

のようになる。このように、β1 は2分子間、β2 は3分子間、β3 は4分子間の相互作用を表していることがわかる[1]。これより、第2ビリアル係数は、

と表される。この式は、ファン・デル・ワールスの状態方程式に現れる物質係数 a, b をミクロに導くときに重要となる。

気体がファンデルワールスの状態方程式に従うとするならば、圧縮因子 Z は以下のようになる[2]

また |x| < 1 のときのマクローリン展開

を用いて状態方程式の 1/1 − b/Vm の項を級数に展開し、圧縮因子 Z を用いた式で表すと以下のようになる。

この式を使うと、実験で求めた第2ビリアル係数の定数部分から b が、温度に反比例する部分から a が求められる。

浸透圧について

浸透圧 Π も、実在気体の状態方程式と同様にビリアル展開する事が出来る。

c は質量濃度、M は分子量である。

このとき、第2ビリアル定数 B2 は分子間の排除体積効果英語版に関係している。

脚注

  1. ^ 『物理学辞典』(三訂版)培風館ISBN 4-563-02094-X 
  2. ^ Gordon M. Barrow 著、大門寛・堂免一成 訳『バーロー物理化学』東京化学同人、1999年。 

関連項目

外部リンク


ビリアル方程式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 01:41 UTC 版)

実在気体」の記事における「ビリアル方程式」の解説

理想気体の状態方程式ビリアル展開することで、実在気体の状態を表現する方法がある。 Z = P V m R T = 1 + B P P + C P P 2 + ⋯ {\displaystyle Z={\frac {PV_{\mathrm {m} }}{RT}}=1+B_{P}P+C_{P}P^{2}+\dotsb }

※この「ビリアル方程式」の解説は、「実在気体」の解説の一部です。
「ビリアル方程式」を含む「実在気体」の記事については、「実在気体」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ビリアル方程式」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



ビリアル方程式と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ビリアル方程式」の関連用語

ビリアル方程式のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ビリアル方程式のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのビリアル展開 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの実在気体 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS