パーマーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/07 15:49 UTC 版)
パーマーク(英: parr mark)は、サケ・マス類の幼魚特有の、体に見られる小判形の斑紋である[1]。パー・マークと表記されることもある[2]。


概要
サケ・マス類の幼魚の体によく見られる模様で、その色は暗青色や紫黒色、赤紫色と様々である(表を参照)。川底の小石と似ていることから、カモフラージュの役割があると考えられている[3][4]。サケ・マス類の子どもには成長段階に応じて特別な呼称があり、回遊生活前に見られるこの斑紋を備えたものは「パー(parr)」と呼ばれる[注釈 1]。また、カラフトマスのように、サケ科であっても認められない場合もある[6][7]。
魚の種類 | パーマークの有無 | 備考 |
---|---|---|
ヤマメ | 有 | 紫黒色[8]、赤紫色[9]。生涯認められる[10][11]。 |
アマゴ | 有 | 茶色[12] |
イトウ | 有[13] | |
アメマス | 有[14] | |
イワナ | 有[2] | |
サクラマス | 有 | 鮮麗な小判形(幼稚魚時)[15] |
サケ | 有 | 暗青色[16]、楕円形[17]。黒っぽい斑紋[18]。 |
ニジマス | 有 | 稚魚の時期には、体側に8~12個。体長が15~18cmになると消失する[19]。 |
ビワマス | 有[20] | |
ベニザケ | 有 | 小さくて卵形をなし,側線からわずかに下に出るのみ[21]。 |
ギンザケ | 有 | 大型で目立つ[22]。 |
マス | 有 | 砂れきから浮上する約30mmごろに顕著に認められる。降海する10〜15cmごろには不明瞭となる[23]。 |
オショロコマ | 有 | 体側に 5~10個のパーマークと呼ばれる斑紋と赤色点が散在(降海型の場合、降海時に消失)[24]。 |
カラフトマス | 無[6][7][25] | |
ホウライマス | 無[4] |
パーマークによる識別
ヤマメとサクラマスの判別実験において、パーマークが、サクラマスでは53個体中52個体で確認できなかった一方、ヤマメでは32個体中29個体(9割以上)で確認できたことから、パーマークの有無によって、ヤマメとサクラマスを識別することが可能である[26]。
また、パーマークに朱点があるかどうかで、ヤマメとアマゴを区別することが可能である[27]。
脚注
注釈
- ^ 成長の各段階によって呼び名があり、アレビン(孵化後の大きな卵黄を備えた状態の時期)、フライ(摂餌活動を始める時期)、パー(回遊生活前)、スモルト(銀色の体で回遊生活をしている時期)、ウィトリング(回遊生活をして1年が経過した時期)と呼ばれる[5]。
出典
- ^ 久保達郎. “アマゴ”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月14日閲覧。
- ^ a b 松下克己. “イワナ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 工藤秀明. “サケ科魚類の形態的特徴 - 稚魚期の体側にパーマーク(小石を模した模様)”. 北海道大学のLASBOS. 2025年3月30日閲覧。
- ^ a b 黒木真理・森田健太郎 (2021年). “サケ科の子どものボディー・デザイン”. 鮭と鰻のWeb図鑑. 東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター・日本財団. 2025年4月7日閲覧。
- ^ 落合明・尼岡邦夫. “魚類”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ a b 松下克己. “カラフトマス”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ a b 加藤(2001) p.59
- ^ 久保達郎. “ヤマメ”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 松下克己. “ヤマメ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 松下克己. “ヤマメ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 井田・奥山(2017) p.210
- ^ 大片忠明. “サケ科のおもな種類〔標本画〕[百科マルチメディア]”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 久保達郎. “イトウ”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 久保達郎. “アメマス”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 久保達郎. “サクラマス”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 疋田豊彦. “サケ”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 鈴木晋一. “サケ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 山本智之「サケの稚魚、大きくなったよ 1万匹展示、5月中旬まで 標津 /北海道」『朝日新聞クロスサーチ』2023年2月14日。2025年4月7日閲覧。
- ^ 松下克己. “ニジマス”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 久保達郎. “ビワマス”. ジャパンナレッジLib. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2025年3月16日閲覧。
- ^ 松下克己. “ベニザケ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 松下克己. “ギンザケ”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 松下克己. “マス”. ジャパンナレッジLib. 世界大百科事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ “オショロコマ”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. 2025年3月16日閲覧。
- ^ 水産庁・水産研究教育機構(2022) p.2
- ^ 綱川・白井(2016) p.66
- ^ 日本経済新聞社「淡水魚水族館、そっとのぞいてみてごらん――めだかの学校、自然を再発見(おでかけナビ)」『日本経済新聞』2016年12月2日。2025年4月7日閲覧。
参考文献
- 加藤文男「日本産サケ属幼稚魚の形態と探索」『福井市自然史博物館研究報告』第48号、福井市自然史博物館、2001年、49-64頁、2025年3月30日閲覧。
- 井田斉、奥山文弥『サケマス・イワナのわかる本 改訂新版』山と渓谷社、2017年5月。ISBN 9784635360760 。2025年3月30日閲覧。
- 水産庁、国立研究開発法人 水産研究・教育機構「カラフトマス 日本系」『令和3年度 国際漁業資源の現況』、水産庁・国立研究開発法人 水産研究・教育機構、2022年、1-9頁、2025年3月30日閲覧。
- 綱川孝俊、白井厚太朗「那珂川に生息するヤマメ・サクラマスの形態的特徴に基づいた回遊型判別方法の検討(平成28年度)」『栃木県水産試験場研究報告』第61号、栃木県水産試験場、2016年、65-67頁、2025年3月31日閲覧。
関連項目
パーマーク(英: parr mark)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 06:02 UTC 版)
「魚類用語」の記事における「パーマーク(英: parr mark)」の解説
サケ科魚類のみにみられ、幼魚期に体側にある斑紋。成魚になると消えるものが多いが、河川残留型のものは斑紋が消えない。
※この「パーマーク(英: parr mark)」の解説は、「魚類用語」の解説の一部です。
「パーマーク(英: parr mark)」を含む「魚類用語」の記事については、「魚類用語」の概要を参照ください。
- パーマークのページへのリンク