ディアナとアクタイオン (ヨルダーンス)とは? わかりやすく解説

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ディアナとアクタイオン (ヨルダーンス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/05 02:19 UTC 版)

『ディアナとアクタイオン』
ドイツ語: Diana und Aktäon
英語: Diana and Actaeon
作者 ヤーコプ・ヨルダーンス
製作年 1640年ごろ
種類 オーク板上に油彩
寸法 53.5 cm × 75.5 cm (21.1 in × 29.7 in)
所蔵 アルテ・マイスター絵画館ドレスデン

ディアナとアクタイオン』(: Diana und Aktäon: Diana and Actaeon)は、フランドルバロック期の画家ヤーコプ・ヨルダーンスが1640年ごろ、オーク上に油彩で描いた絵画である。オウィディウスの『変身物語』 (III, 138-252) [1]に記述されるディアナの逸話を主題としている[1][2]。作品は現在、ドレスデンにあるアルテ・マイスター絵画館に所蔵されている[1][2]

作品

1640年ごろ、アントウェルペンで成功していた画家ヨルダーンスは、画面のサイズでも人物と風景の関係でも、以前の作品とは異なる神話的主題の数々の作品を描くようになった[1]。本作は、アントウェルペンのキャビネット絵画 (美術愛好家の美術品展示用の私室) の形式を用い、ヨルダーンスにしては比較的小さなサイズで、フランス・フランケン2世ヘンドリック・ファン・バーレンヤン・ブリューゲルの伝統に則っている。本作は、ヨルダーンスの作品中で風景がそれ自体の重要性を持つようになった最初の作例である。実際、風景は、ほとんど付属的ともいえる、小さい人物像のある神話的場面と同等の意義を持っている[1]

ドメニキーノディアナの狩猟ボルゲーゼ美術館ローマ

画面に描かれているのは、狩猟、月、処女性、野生動物の女神ディアナを表した情景である。彼女のアトリビュート (人物を特定する事物) は頭部の三日月、身に着けている矢筒、弓矢で、狩猟の女神であることからしばしば猟犬を伴って描かれる[3]。彼女は非常に潔癖な処女神で、けっして男性を受け入れようとはしなかった。ディアナの一番の楽しみは自分に仕えているニンフたちといっしょに山野を巡って狩りをすることで、狩りに興じた後はニンフたちとともに泉や川、湖で水浴を楽しんだ。彼女はアポロン同様、人間に厳しい面があり、純潔が穢されたり、自分の領域が侵されたりすると、人間を処刑することもあった[3]

ディアナの犠牲の1人となったのが狩人アクタイオンである[3]。ある日、彼は50頭の猟犬を連れ、山中で狩りをしていた時に、森の奥に泉の湧き出る洞窟を見つけた。しかし、そこはディアナがいつもニンフたちと入浴を楽しむ場所で、彼女たちは全裸であった。激怒したディアナはアクタイオンに泉の水を浴びせかけ、彼を1頭の鹿に変えてしまう[2][3]。そして、彼が連れていた猟犬をけしかけ、鹿となった彼を八つ裂きにさせて食い殺させてしまった[3]

画面左側の赤い布を纏ったアクタイオンは槍を持ち、犬を従えている。画面下部の水の流れの反対側には、裸体のディアナ (頭部に三日月を着け、川の前でアクタイオンに水をかけようとして身を屈めている) と彼女の仲間たちがアクタイオンの前にほぼ一直線に配置され、あたかも鑑賞者のために並んでいるようである[1]。これらの豊満な女性たちの大胆な裸体表現は、驚いたニンフたちが自身の裸体を覆い隠そうとするオウィディウスの描写とは不思議に隔たっている。ヨルダーンスの作品ではディアナとニンフたちは半ば戯れに凍りついているように見えるが、画家がこの主題を選択したのは、何よりも一糸纏わぬ女性たちを描くためだったからなのである。彼はその好機を最大限に利用し[1]、女性たちが狩猟の後の水浴を様々なポーズで行う姿を描いている[1][2]。奇妙に身を屈めている者、立っている者、うずくまっている者などがおり、そうした女性たちの群像によって、ヨルダーンスは裸体を描く能力を示している[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i Diana and Actaeon”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年10月4日閲覧。
  2. ^ a b c d Diana und Aktäon”. アルテ・マイスター絵画館公式サイト (ドイツ語と英語). 2025年10月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e 吉田敦彦 2013年、52-53頁。

参考文献

  • 吉田敦彦『名画で読み解く「ギリシア神話」、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13224-9

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