エウロペの略奪 (ヨルダーンス)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/05 09:25 UTC 版)
フランス語: L'enlèvement d'Europe 英語: The Abduction of Europe |
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作者 | ヤーコプ・ヨルダーンス |
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製作年 | 1643年 |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 119 cm × 172 cm (47 in × 68 in) |
所蔵 | リール宮殿美術館、リール |
『エウロペの略奪』(エウロペのりゃくだつ、仏: L'enlèvement d'Europe、英: The Abduction of Europa)は、17世紀フランドル・バロック期の画家ヤーコプ・ヨルダーンスが1643年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。主題は、オウィディウスの『変身物語』 (II, 835-837) から採られている。作品は1908年以来[1]、フランスのリールにあるリール宮殿美術館に所蔵されている[1][2]。
作品
神々の王であるユピテルは多くの神々、人間との間に関係を持った。その人間の1人がエウロペである[3]。ある日、オリュンポス山の宮殿から地上を見渡していたユピテルは、フェニキアの海辺で遊ぶ美少女に一目ぼれをする。彼女はフェニキア王アゲーノールの娘で、エウロペという名であった。ユピテルは彼女に近づくため牡牛に姿を変え、彼女のそばにうずくまる。すると、エウロペは、雪のように純白で優しい瞳をしている牛に見惚れてしまう。彼女が気を許して牛の背にまたがると、牛は突然立ち上がり、彼女を乗せたまま一目散に海へと泳ぎ出した。しまいに、牛はクレタ島に彼女を連れ去り、ユピテルとしての正体を明かして彼女と交わる[3]。
この絵画は、田園的光景の中にエウロペを表している。左側には彼女が付き添いのニンフたちに囲まれ、牡牛に変身したユピテルに同行しようとしている。彼女は、穏やかに横たわっている牡牛の背に乗るところである。右側には、ケーリュケイオン (伝令使の杖) を持つ、後ろ姿のメルクリウスに率いられた牛の群れがおり、前景には子牛がいる。ユピテルが登場していることは、彼のアトリビュート (人物を特定する事物) である鷲に乗っているキューピッドによっても示唆される。キューピッドは画面上部の木々の上におり、彼の情熱の象徴である稲妻と燃える心臓を振り回している[4]。

ヨルダーンスは、ティツィアーノのようにこの神話的逸話のすべての本質を放棄し、田園的情景の平和的なイメージしか提示していない。エウロペの仲間の誰も彼女に注意を向けておらず、自分たちの遊びや用事を続けている。作品の主題は、自然および自然と調和した女性の身体の官能性を描くための口実に過ぎない。ちなみに、ヨルダーンスが本作以前に描いた絵画館 (ベルリン) 蔵の『エウロペの略奪』はより官能的であり、ほとんどバッカナーレ (酒宴) の光景に類似している[5]。
本作は、2013年9月から2014年1月にかけてパリのプティ・パレで開催されたヨルダーンスの回顧展でパリの一般大衆に公開されている[6]。
脚注
- ^ a b “L'enlèvement d'Europe”. フランス文化省公式サイト (フランス語). 2025年10月5日閲覧。
- ^ Template:Joconde
- ^ a b 吉田敦彦 2013年、52-53頁。
- ^ Who’s who des dieux et des héros de l’Antiquité dans la peinture de Jacques Jordaens, dossier réalisé par Educateam, service éducatif des musées royaux des Beaux-Arts de Belgique à l’occasion de l’exposition Jordaens et l’Antiquité, 2012, p. 25.
- ^ L'Enlèvement d'Europe, sur le site de la Rmn.
- ^ Jordaens : un grand peintre flamand au Petit Palais, sur culturebox.francetvinfo.fr
参考文献
- 吉田敦彦『名画で読み解く「ギリシア神話」、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13224-9
外部リンク
- エウロペの略奪_(ヨルダーンス)のページへのリンク