ダイオウスカシガイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/25 16:17 UTC 版)
ダイオウスカシガイ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Fissurella maxima Sowerby, 1834 |
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シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ダイオウスカシガイ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Giant keyhole limpet |
ダイオウスカシガイ(学名: Fissurella maxima)は、スカシガイ科に分類される海貝である。通称はラパス貝(ラパスがい)[1]、ラパ貝(ラパがい)[2]。
分布
形態
殻長は10センチメートルであり、殻の内面は白い[4]。アワビと同様の形態であり、科は異なるが、外見による区別は難しい[5]。
生態
人間との関係
アワビ[6]やトコブシ[1]、ロコガイ[7]の代用品として、ゆでられた剥き身がチリから輸出されている[3]。このことは、日本においては不当景品類及び不当表示防止法違反事件の原因にもなっており、1987年にはダイオウスカシガイを「味付あわび」と称し、アワビの写真を掲載した包装箱に入れて販売する事件が、1989年にはダイオウスカシガイを「味付あわび」と称し、アワビの絵表示と共に販売する事件が発生し、公正取引委員会が警告を行った[8][9]。
ゆで身の調理加工食品が原因とされる食中毒様事例や、即時型の食物アレルギーが報告されている[3][6]。考えられるアレルギーの原因には、免疫応答の実験に使われるほどに強い作用のあるスカシガイヘモシアニンがある[6][10]。呈する症状には皮膚の発赤、結膜の充血、鼻詰まり、腹痛、下痢、嘔吐、蕁麻疹、喘鳴、呼吸困難、意識障害が見られる[3][5][6][11][12]。中には呼吸困難から呼吸不全となって気管挿管を行い人工呼吸器で救命した例があるほか[12]、血清学的には未確認ではあるが死亡例もある[5]。
ハワイ州で1986年に、57例のダイオウスカシガイ由来と思われる中毒事件が報道された[5]。その結果、同州ではダイオウスカシガイの発売が禁止とされた[13]。
日本においては、国民生活センターが発行した月刊誌『国民生活』平成3年12月号に、「皮膚は訴える! 食品による蕁麻疹」と題する記事が掲載された[14]。執筆者は当時東京都済生会中央病院の皮膚科医長であった中山秀夫であり[15]、中山は記事の中において、「まれながら偽物のアワビ(ダイオウスカシガイとか、ラパス貝といいます)がひどい症状を出すので、これは蕁麻疹のある人は気をつけておく必要があるでしょう。」と語っている[16]。国民生活センターが運営する全国消費生活情報ネットワークシステムには、アワビの煮付けと称して販売されていたダイオウスカシガイを食べ、全身の腫れと呼吸困難によって入院することとなった娘を持つ消費者から、ダイオウスカシガイの警告表示か販売中止の措置を求める相談が寄せられている[17]。
脚注
- ^ a b 十字 et al. 1990, p. 1515.
- ^ “ノムラダイニング「和洋二段重」” (PDF). 生活協同組合ユーコープ (2012年12月4日). 2022年10月18日閲覧。
- ^ a b c d e 土井 & 佐藤 1999, p. 25.
- ^ アボット & ダンス 1985, p. 32.
- ^ a b c d 前田 et al. 1991, p. 1415.
- ^ a b c d “その"アワビ"は大丈夫? 危険な「ラパス貝」”. Medical Tribune. メディカルトリビューン (2011年10月21日). 2022年10月18日閲覧。
- ^ OFCF 1990, p. 7.
- ^ 公取 1988, p. 11.
- ^ 公取 1989, p. 7.
- ^ 十字 et al. 1990, p. 1516.
- ^ 十字 et al. 1990, pp. 1515–1516.
- ^ a b 前田 et al. 1991, p. 1417.
- ^ 高橋 et al. 1988, p. 643.
- ^ 中山 1991, pp. 84–85.
- ^ 中山 1991, p. 84.
- ^ 中山 1991, p. 85.
- ^ 陸川 1998, p. 94.
参考文献
- 十字文子、高嶋宏哉、須甲松伸、土肥真、高石敏明、奥平博一、伊藤幸治、宮本昭正「巻貝が関与した食餌依存性運動誘発アナフィラキシー(Food-Dependent Exercise Induced Anaphylaxis)と思われる一症例」『アレルギー』第39巻第11号、一般社団法人 日本アレルギー学会、1990年11月30日、1515–1522頁、NAID 110002416559。
- 土井佳代、佐藤修二「ラパス貝の苦い話」『JSM Mycotoxins』第48号、日本マイコトキシン学会、1999年1月31日、25–27頁、 NAID 10026889508。
- R・タッカー・アボット、S・ピーター・ダンス 著、波部忠重、奥谷喬司 訳『世界海産貝類大図鑑』平凡社、1985年3月8日。 ISBN 4-582-51811-7 。2025年8月25日閲覧。
- 前田昇三、森川昭廣、加藤政彦、茂木洋一、重田誠、徳山研一、黒梅恭芳、成富由司 ほか「ラパス貝(Grand Keyhole Limpet)による即時型アレルギーの11例」『アレルギー』第40巻第11号、一般社団法人 日本アレルギー学会、1991年11月30日、1415–1420頁、 NAID 110002417474。
- 『チリの水産関係事情(Ⅲ)』海外漁業協力財団〈海漁協(資)〉、1990年12月 。2025年8月25日閲覧。
- 公正取引委員会事務局(著)、服部成己(編)「最近の景品表示法違反事件の処理状況(昭和62年度)・Ⅲ」『公正取引情報』第1,180号、競争問題研究所、1988年7月25日、7–11頁、2025年8月25日閲覧。
- 公正取引委員会(著)、服部成己(編)「最近の主要な景品表示法違反事件の概要〈Ⅰ〉」『公正取引情報』第1,227号、競争問題研究所、1989年7月31日、7–10頁、2025年8月25日閲覧。
- 高橋孝、森川昭広、加藤政彦、徳山研一、田島公夫、黒梅恭芳「ダイオウスカシガイによる即時型アレルギーの4例」『アレルギー』第37巻第8号、一般社団法人 日本アレルギー学会、1988年8月30日、643頁、 NAID 110002415645。
- 中山秀夫(著)、国民生活センター(編)「皮膚は訴える! 食品による蕁麻疹」『国民生活』第21巻第12号、国民生活センター、1991年11月25日、84–85頁、 ISSN 0913-3550、2025年8月25日閲覧。
- 陸川キヨシ(編)「安全・衛生面からみた食品表示の問題点」『国民生活』第29巻第1号、国民生活センター、1998年11月25日、90–96頁、 ISSN 0913-3550、2025年8月25日閲覧。
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