スマホの例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 00:29 UTC 版)
最新型スマホ「A-Phone」を含む考慮集合 (マーケティング用語。消費者が購入を検討している商品の集合)があるとする。消費者は一般的に、大きなメモリ容量(GB、ギガ)と低い価格を肯定的な属性として認識する。消費者は、より多くのデータを保存できる大容量のスマホを購入したいと言う気持ちもあるが、小容量でも安いスマホの方を購入したいと言う気持ちもある。 消費者の頭の中で、次の2つの商品が検討される。 考慮集合1A-PhoneB-peria価格40,000円 30,000円 容量30ギガ 20ギガ この状況では、消費者の中には、高価だが大きなメモリ容量の「A-Phone」の方を好ましく思う人もいれば、小さいメモリ容量だが安い「B-peria」の方を好ましく思う人もいる。 今ここに、A-Phoneを販売中の会社が、最新型だがスペックが微妙なスマホ「A-Phone XR」 、言い換えると「おとりスマホ」を市場に追加投入したとする。 それは同社の「ターゲット(マーケティング用語。ここでは「売りたい製品」)」である「A-Phone」、 ライバル会社の「競合製品」である「B-peria」のどちらよりも高価であり、 メモリ容量はライバル会社の「B-peria」よりも多いが、「A-Phone」よりは少ない。 考慮集合2A-Phone (売りたい製品)B-peria (競合製品)A-Phone XR (おとり製品)価格40,000円 30,000円 45,000円 容量30ギガ 20ギガ 25ギガ 「A-Phone XR」(おとりスマホ)が市場に投入されたが、こんなものを消費者は誰も買わないであろうことは売る前から予測できる。と言うのも、「A-Phone XR」よりも安い値段で、もっと大容量の物が市場に存在するからである。すなわち「A-Phone」である…そういうわけで、考慮集合1だった時の状況と比較すると、考慮集合2の状況においては、優先的な選択肢である「A-Phone」の方を購入する人がより多くなる。「A-Phone XR」は、それ自身が消費者に好ましく思われることは全くないが、「A-Phone」や「B-peria」との比較対象としてふるまうことにより、消費者の好みに影響を与える。「A-Phone」は安さとメモリ容量の両方において「A-Phone XR」よりも優れている一方で、「B-peria」は「A-Phone XR」と比較すると単に安さが優れているだけでメモリ容量が少なく、ということは、ゴミのように無価値な「A-Phone XR」と比較して劣っている部分すら「B-peria」にはあるんだ…と言う考えに至った消費者は、以前よりも「A-Phone」の方を好ましく思うことが予想される。言うなれば「A-Phone XR」は、「A-Phone」の販売を増加させることを唯一の目的とする噛ませ犬である。 逆に、「B-peria」を販売中の会社によって、「A-Phone」と「B-peria」のどちらよりもメモリ容量が少なく、「B-peria」よりも高価だが「A-Phone」ほど高価ではないスマホ「B-peria Z」が投入されたとする。 考慮集合3A-Phone (競合製品)B-peria (売りたい製品)B-peria Z (おとり製品)価格40,000円 30,000円 3,5000円 容量30ギガ 20ギガ 15ギガ 結果は先ほどと似ている。消費者は「B-peria Z」を買わないだろう。なぜなら、それは全ての点において「B-peria」より劣っているからである。 しかし、先ほどの「A-Phone XR」が「A-Phone」の優先度を高める結果をもたらしたのに対して、「B-peria Z」は反対の効果を持ち、「B-peria Z」と比較するとあらゆる面で優れた「B-peria」の優先度を高める結果をもたらす。
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