シドニー・トレインズA形電車とは? わかりやすく解説

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シドニー・トレインズA形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 21:54 UTC 版)

"Waratah"(ワラタ)
シドニー・トレインズA形電車
シドニー・トレインズB形電車
A形電車(右)、B形電車(左)
基本情報
運用者 シドニー・トレインズ
製造所 中国中車長春軌道客車
ダウナー・レール
製造年 2010年 - 2014年(A形)
2018年 - 2021年(B形)
製造数 636両(8両編成79本+4両編成1本)(A形)
328両(8両編成41本)(B形)
運用開始 2011年4月20日(A形)
2018年9月7日(B形)
廃車 11両(A2、A42のD6342、プロトタイプ電動車2両)
主要諸元
編成 8両編成
制御車+電動車+電動車+付随車+付随車+電動車+電動車+制御車;4M4T)
軸配置 2′2′+Bo′Bo′+Bo′Bo′+2′2′+2′2′+Bo′Bo′+Bo′Bo′+2′2′
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
設計最高速度 130 km/h
編成定員 着席896人(車椅子スペース16人分含)
車両定員 着席101人(制御車)
着席118人(電動車)
着席110人(付随車)
車両重量 51 t(制御車)
51 t(電動車)
48 t(付随車)
編成重量 407 t
編成長 163.1 m
全長 20,732 mm(制御車)
20,243 mm(電動車)
20,332 mm(付随車)
車体長 20,000 mm(制御車)
19,393 mm(電動車)
19,482 mm(付随車)
全幅 3,035 mm
車体幅 3,030 mm
全高 4,410 mm
車体高 4,367 mm
主電動機 日立製作所製機器かご形三相誘導電動機
主電動機出力 183 kW
出力 732 kW
編成出力 2,928 kW
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 日立製作所製
備考 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。
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シドニー・トレインズA形電車(シドニー・トレインズAがたでんしゃ、A set)は、オーストラリアシドニー・トレインズが所有する2階建て電車2010年から2014年にかけて626両が製造され、ニューサウスウェールズ州の州花にちなんだWaratahワラタ英語版)の愛称を持つ[2][4]

この項目では、2018年以降製造されている増備車のB形電車(B set)についても解説する[3]

概要

導入・製造

1972年以降シドニー近郊の電化路線で使用されていたシドニー初の量産型2階建て電車であるS形電車の置き換えおよび輸送力の増強のため、2006年に発注が行われた車両。導入に際し官民パートナーシップ英語版(PPP)に基づく合弁事業を進めるためリライアンス・レール(Reliance Rail)が設立され、上記の発注・製造に加え営業運転開始後のメンテナンス等を担当している。設計は日立製作所ダウナー・レールの合弁会社であるダウナーEDIレール(Downer EDI Rail)が行い、車体など主要部品の製造は中国中車長春軌道客車が担当し[5]、ダウナー・レールが所有するカーディフ製造工場英語版で最終組み立てが実施された[6]。なお、計626両の発注は単一形式としてはオーストラリア史上最多両数である[4]

構造

A形以前に製造されたシドニーの近郊電車は4両編成、もしくはそれを2本連結した8両編成で使用されていたが、緊急時の乗客移動など安全性確保の理由からA形は8両固定編成となった。それに伴い4・5両目に連結された付随車は中間電動車と車体寸法や定員数が異なっている。集電装置(シングルアーム式パンタグラフ)は制御車・付随車に搭載される[2][4]

車内の座席配置は車体中央の2階建て部分がクロスシート、車体両端の1階建て部分がロングシートとなっている他、編成全体で16人分の車椅子スペースが確保されている。また車内・車外各部には計100個の監視カメラが搭載され、安全性が向上している[7]。車内の照明は環境対策や消費電力削減のためLED照明を鉄道車両としては世界で初めて採用している[8]。車両の電気機器は日立製作所製の、制動装置はクノールブレムゼ製のものを用いる[9]

運用

2010年3月に最初の編成が完成し、同年7月まで試運転が行われた。その後12月に営業運転へ投入される予定であったが、車体構造の欠陥が明らかになった事による遅れから実際の営業運転開始は2011年4月21日となった[10][11]。その結果、A形導入に伴う費用は当初の計画(19億豪ドル)から36億豪ドル以上に増大した。その後は2014年までに契約分の全626両の製造が実施されている[4]

なお、契約上2044年までA形のメンテナンスや乗務員の訓練がリライアンス・レールの元で行われる事になっており、シドニー・トレインズ側のオプションにより最大10年(2054年まで)の延長も可能となっている。またメンテナンスはオーバーン英語版に建てられた専用施設にて、リライランス・レールと契約を結んだダウナーEDIレールPPPメンテナンス[注釈 1]が実施する[12]

B形電車

A形だけでは達成できなかった[13]S形の完全置き換えおよび近郊列車の更なる本数増加のため、2016年に発注が行われた増備車。競争入札を経てダウナーEDI英語版(Downer EDI)が17億豪ドル(13億米ドル)で契約を結び、下請け契約によりA形同様中国中車長春軌道客車が製造を担当している[14]。基本的な構造はA形と同様だが編成のコンピュータシステムが改良されている他、塗装もA形との区別のため先頭部分がオレンジ色を主体としたものに変更されている[15]

最初に製造された24編成は2018年9月7日から営業運転を開始しており、翌2019年には新たに17編成の追加発注が行われている[3][16]

脚注

注釈

  1. ^ A形のメンテナンス実施のためダウナーEDIレールの子会社として設立された企業

出典

  1. ^ The Trains - Reliance Rail 2019年6月25日閲覧
  2. ^ a b c Waratah trains | transportnsw.info 2019年6月25日閲覧
  3. ^ a b c More Waratah Series 2 EMUs for Sydney Trains2019年2月6日作成 2019年6月25日閲覧
  4. ^ a b c d e Waratah Trains 2019年6月25日閲覧
  5. ^ Manufacturing in China” (英語). Reliance Rail. 2019年6月25日閲覧。
  6. ^ Manufacturing in Cardiff” (英語). Reliance Rail. 2019年6月25日閲覧。
  7. ^ Sydney's new train” (pdf) (英語). Reliance Rail. 2019年6月25日閲覧。
  8. ^ Key customer features” (英語). CityRail. 2012年1月31日閲覧。
  9. ^ Rail Projects” (英語). Hitachi in Oceania. 2019年6月25日閲覧。
  10. ^ “Downer Presents First Waratah to Railcorp” (英語). Downer EDI. (2011年4月20日). https://web.archive.org/web/20140107051735/http://www.downergroup.com/Investors/ASX-Announcements/2011/Downer-Presents-First-Waratah-Train-to-RailCorp.aspx 
  11. ^ “シドニー首都圏鉄道、大サイズの新型車両に対策”. オーストラリアニュース. (2017年8月10日). http://nichigopress.jp/ausnews/businessnews/147918/ 2019年6月25日閲覧。 
  12. ^ The Project” (英語). Reliance Rail. 2019年6月25日閲覧。
  13. ^ “New trains won't run on all rail lines” (英語). Yahoo!News. (2013年2月20日). https://au.news.yahoo.com/cityrail-passengers-travelling-waratah-trains-transport-nsw-lee-jeloscek-16192438.html 2019年6月25日閲覧。 
  14. ^ NSW orders more Waratah EMUs for Sydney” (英語). International railway Journal (2016年12月2日). 2019年6月25日閲覧。
  15. ^ James, Michael (November 2018). “The Waratah Series Two has arrived”. Railway Digest: 28-31. 
  16. ^ First Waratah Series 2 EMU enters service in New South Wales” (英語). International railway Journal (2018年9月14日). 2019年6月25日閲覧。



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