キーウィ_(人)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > キーウィ_(人)の意味・解説 

キーウィ (人)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/13 04:59 UTC 版)

キーウィが鳥のキーウィを抱く様子

キーウィ (英語: Kiwi) は、ニュージーランドの人々の国際的なニックネームであり[1][2][3]、またニュージーランド人自らの呼称としても使われている[4]。特定の人々に対して使われるレッテルの多くとは異なり、侮辱的な意味で使われるものとは考えられておらず、一般的にはニュージーランド人の自尊心や親愛の情を示すシンボルとして使用される[5]。この呼び名は、固有種で羽のない鳥であるキーウィに由来しており、この鳥はニュージーランドの国のシンボルとなっている[6]第一次世界大戦までは、キーウィは人ではなく国を表す言葉であったが、1917年までに、それまでのニュージーランド人を指す他の愛称にとってかわる形で「キーウィ」という言葉が使われるようになった。

歴史

国を表す「キーウィ」

先住民のマオリ族には、キーウィの羽毛で羽織りを作り、族長に献上する慣習があったため、キーウィは長い間特別な意義を持っていた[2]。 キーウィがヨーロッパ人に初めて発見されたのは1811年で、当時キーウィの毛皮を手に入れた大英博物館動物学者ジョージ・ショーは、キーウィをペンギンの一種だと認識したため、直立する動物として描写していた[7][8]。ヨーロッパ人に初めて目撃されて以降、キーウィは珍しさから注目を浴びはじめ、1835年には宣教師のウィリアム・イェイツにより「ニュージーランドで最も珍しく、注目すべき鳥」と言及された[9]

1900年代初頭、漫画家たちがニュージーランドを表すものとして、キーウィを描き始めた。たとえば、1904年の『ニュージーランドフリーランス』の漫画に掲載された「勇敢なキーウィ」には、ラグビーゲームで英国チームに9対3で勝利した後、キーウィがモアに成長した姿が描かれている[10]。その翌年には、新聞紙の『ウェストミンスター・ガゼット』にて、ニュージーランドとオーストラリアをそれぞれ象徴とするキーウィとカンガルーが、植民地会議に向かう様子の風刺画が描かれた[10]。『ニュージーランド・ヘラルド』に勤めていたトレバー・ロイドも、ラグビーチームのオールブラックスを表すものとしてキーウィを描いていたが、彼はモアを使用することの方が多かった[2]。また、当時キーウィの他にニュージーランドの象徴として用いられた中には、シルバー・ファーンや小さな男の子、ライオンの子などがある[10]第一次世界大戦までは、キーウィはニュージーランド人の象徴というより、国の象徴として使用されていた[2]

ニュージーランド人を表す「キーウィ」

ニュージーランド空軍(RNZAF) の円形紋には、赤いキーウィのシルエットが描かれている

20世紀初頭、特にニュージーランドの兵士やオールブラックスの選手たちに対して国際的な呼称として用いられていたのは、国名の頭文字と関連した「エンゼダーズ[2]」や、マオリ人と彼らの国に対する歴史的な貢献をほのめかす「マオリランダーズ」などであり[11]、これらの呼び名は、1914-18年の第一次世界大戦終戦辺りまで使用されていた。ニュージーランドの兵士たちは「ディガーズ」や「ピッグ・アイランダーズ[12]」と呼ばれることも多かったが、1917年までには「キーウィーズ」とも呼ばれていた[2][13]

キーウィの絵は、1886年に南カンタベリ大隊が使用してから軍の記章として使われはじめ、いくつかの連隊も第一次世界大戦時に身につけていた[14]。そこから、「キーウィーズ」はニュージーランドの連隊の兵士を意味するようになった[2]。このニックネームは、ニュージーランド人が鳥のキーウィのように小さくずんぐりしているとか、夜行性だというような身体的な特性を示すものとして使われ始めたのではなく、単にキーウィという鳥がニュージーランド特有で、独特であるからという理由からであった[2]。ニュージーランドの連帯の記章として目立つ使い方をされたため、ニュージーランド軍を連想しやすくなり、結果的にキーウィは戦場において一般的な呼び名となった[2][5][15]

バルフォードのキーウィは1919年にウィルトシャーのソールズベリー平原にある、バルフォードの街に作られた。

1918年11月の第一次世界大戦終戦後、多くのニュージーランド兵らが国への輸送を待ち、数ヶ月から数年に渡りヨーロッパに滞在した。1919年初期には、イングランド・ウィルトシャーのソールズベリー平原に位置するバルフォードに建てたスリング・キャンプにて、ニュージーランド兵らが近くの丘にチョークでキーウィの絵を刻んだ[16][17]。ニュージーランド兵の駐留は、「キーウィーズ」という呼び名をヨーロッパに広めることに繋がった[2]

キーウィという名のものでは、同名のオーストラリアの靴磨きクリームのブランドがイギリス帝国軍の間で最も広く知られていた。靴磨き製品の開発者であるウィリアム・ラムジーは、妻の出生地であるニュージーランドに敬意を表して「キーウィ」と名付けた[2]。1906年からは、キーウィ・シューポリッシュはイギリスとアメリカ合衆国にて広く売られ始め、キーウィのシンボルはより広く知られるようになった[18]。オーストラリアン・ナショナル・ディクショナリーは、とてもよく磨かれた靴を持っているオーストラリア軍の新兵を意味する「キーウィ・キッズ」や「キーウィーズ」の初出が、1917年であるとしている[19][20]

1939-45年の第二次世界大戦後、「キーウィ」の名は少しずつニュージーランド人全体を表すようになり、今日では、世界的にキーウィと呼ばれるようになると共に、ニュージーランド人自らもその愛称をよく名乗るようになった[3][4]

近年の「キーウィ」の使われ方

多くの場合、人を表す際の英語の綴りは「キーウィ(Kiwi)」と大文字から始められ、「キーウィーズ(Kiwis)」と複数形を取ることもある。鳥の名前として使用される時は、小文字のkから綴られるが、マオリ語由来であるため、複数を表す場合でも大抵は「kiwi」と綴られる[21]。よって、「two Kiwis」は2人のニュージーランド人を表すが、「two kiwi」は2羽のキーウィ(鳥)のことを示す。この言語的な微妙な違いが良く例示されたものとして、ニュージーランド銀行のSave the Kiwi Trust(キーウィ救済)が掲げる「Kiwis for kiwi(キーウィを支援するニュージーランド人、の意)」というスローガンがある[22]

「キーウィ」は多くの場合、軽蔑的な言葉として認識されることはない[5]。公的な文脈でも、キーウィ銀行、キーウィ・セイバーキーウィ・レイルのように、政府系サービスや国営企業の名前に、「キーウィ」が使用されることがある。

出典

  1. ^ Kiwi | Definition of Kiwi at Dictionary.com”. Dictionary.com. 2019年12月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Phillips, Jock (2012年7月). “Kiwi - Kiwi and people: early history”. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand. 2017年6月4日閲覧。
  3. ^ a b Kiwi” (英語). www.doc.govt.nz. New Zealand Department of Conservation. 2017年6月4日閲覧。
  4. ^ a b Kiwis/Kiwi - New Zealand Immigration Service (Summary of Terms)”. Glossary.immigration.govt.nz. 2012年9月13日閲覧。
  5. ^ a b c Kiwis, Poms and other naming mysteries”. Finding the Universe. 2017年6月4日閲覧。
  6. ^ Taonga, New Zealand Ministry for Culture and Heritage Te Manatu. “Kiwi – Te Ara Encyclopedia of New Zealand” (英語). teara.govt.nz. 2019年3月28日閲覧。
  7. ^ Early impacts”. The Kiwi Trust. 2017年8月17日閲覧。
  8. ^ Early European engraving”. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand. 2017年8月17日閲覧。
  9. ^ Yate, William (1835). An account of New Zealand and of the formation and progress of the Church Missionary Society’s mission in the northern island. London: Seeley and Burnside. p. 5 
  10. ^ a b c First use of kiwi as unofficial national symbol?”. Ministry for Culture and Heritage (2017年7月27日). 2017年8月17日閲覧。
  11. ^ Phillips, Jock (2009年3月). “The New Zealanders - Maorilanders”. Te Ara - the Encyclopedia of New Zealand. 2011年2月27日閲覧。
  12. ^ The Oxford Dictionary of New Zealand English (1997) records the use of "pig-islander" from 1909.
  13. ^ Kiwi - A kiwi country: 1930s–2000s”. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand (2011年5月24日). 2012年9月13日閲覧。
  14. ^ South Canterbury Battalion badge” (英語). www.teara.govt.nz. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand (2007年9月24日). 2017年6月4日閲覧。
  15. ^ RNZAF Harvard”. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand (2007年9月24日). 2017年6月4日閲覧。
  16. ^ Kiwi Chalk Figure above Bulford Camp "Members of the Canterbury, Otago and Wellington Battalions under Captain Harry Clark created a chalk figure of a kiwi bird in the nearby hillside in April-June 1919 by removing 12in of top soil and replacing it with chalk pebbles. The kiwi was designed by Sergeant Major Percy Blenkarne, a drawing instructor in the New Zealand Army Education Corps."
  17. ^ Compare: The White Horses”. Wiltshire-web.co.uk. 2012年9月13日閲覧。
  18. ^ Brooks, Miki (英語). Lessons From a Land Down Under: Devotions from New Zealand. Lulu. pp. 3–4. ISBN 9780557098842. https://books.google.co.uk/books?id=JI-NBQAAQBAJ&pg=PA3&lpg=PA3 
  19. ^ Australian National Dictionary, Oxford University Press Australia & New Zealand (2008年).
  20. ^ Franzen, Christine; Bauer, Laurie (1993). Of Pavlova, Poetry, and Paradigms. Victoria University Press. https://books.google.com/books?id=hm-hXVgYBaEC&pg=PA16 
  21. ^ Plurals in te reo Māori” (英語). Statistics New Zealand. 2017年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月17日閲覧。
  22. ^ Kiwis for kiwi” (英語). www.doc.govt.nz. New Zealand Department of Conservation. 2017年6月4日閲覧。

「キーウィ (人)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「キーウィ_(人)」の関連用語

キーウィ_(人)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



キーウィ_(人)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのキーウィ (人) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS