キャッセルズ・テイト対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 07:52 UTC 版)
「テイト・シャファレヴィッチ群」の記事における「キャッセルズ・テイト対」の解説
キャッセルズ・テイト対(Cassels–Tate pairing)はアーベル多様体Aとその双対Âに対して定義される双線型対(英語版)Ш(A) × Ш(Â) → Q/Zである。キャッセルズはこれを楕円曲線の場合に導入した。この場合、AとÂは同一視できるので、この対は交代形式である。この形式の核は可除な元のなす部分群であり、テイト・シャファレヴィッチ予想が正しければこれは自明な群である。テイトはこの対をテイト双対性(英語版)の変形版として一般のアーベル多様体に拡張した。Aの偏極を選ぶとAからÂへの写像が定まり、これがQ/Zに値を持つШ(A)上の双線型対を誘導する。楕円曲線の場合と異なり、これは交代的とは限らず歪対称でもないかもしれない。 キャッセルズは楕円曲線の場合にこのペアリングは交代的であることを示した。これから、Шの位数が有限であればそれは平方数であることがわかる。一般のアーベル多様体について、Шの位数が有限であればそれは平方数だろうと何年ものあいだ誤って信じられてきた。これはTate (1963)の結果の1つの引用の仕方を誤ったSwinnerton-Dyer (1967)に端を発する。プーネン(Poonen)とシュトール(Stoll)は位数が平方数の2倍である例をいくつか与えた。有理数体上の種数が2のある曲線のヤコビ多様体でそのテイト・シャファレヴィッチ群の位数が2であるようなものなどである。スタインは位数を割り切る奇素数の冪指数が奇数となる例を与えた。アーベル多様体が主偏極を持てばШ上のこの形式は歪対称である。これはШの位数は(有限ならば)平方数または平方数の2倍であることを意味する。さらに、主偏極が(楕円曲線の場合のように)有理因子からきている場合には、この形式は交代的であり、Шの位数は(有限ならば)平方数である。
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