アストンマーティン・ヴァルキリー_(ル・マン・ハイパーカー)とは? わかりやすく解説

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アストンマーティン・ヴァルキリー (ル・マン・ハイパーカー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/14 14:08 UTC 版)

アストンマーティン・ヴァルキリー
カテゴリー LMH
コンストラクター アストンマーティン
マルチマティック
先代 アストンマーティン・AMR-One
主要諸元
シャシー カーボンファイバーモノコック
エンジン アストンマーティン-コスワースRA 6.5 L V12 ミッドシップ, 縦置き
タイヤ ミシュラン
主要成績
チーム アストンマーティン・THOR・チーム
ドライバー ハリー・ティンクネル
トム・ギャンブル
アレックス・リベラス
マルコ・ソレンセン
ロス・ガン
ロマン・デ・アンジェリス
初戦 2025年のカタール1812kmレース
出走 優勝 表彰台 ポール Fラップ
6 0 0 0 0
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アストンマーティン・ヴァルキリー (Aston Martin Valkyrie) は、アストンマーティン・レーシングマルチマティックル・マン・ハイパーカー (LMH)規定に基づき、FIA 世界耐久選手権(WEC)、IMSA スポーツカー選手権(IMSA)への参戦用に開発したプロトタイプレーシングカー

ロードカーのサーキットバージョンであるAMR Proをベースに、ル・マン・ハイパーカー規定に沿って大幅に改造している。

概要

ベースとなった、ヴァルキリー AMR Pro

2016年、アストンマーティンはF1のレッドブル・レーシングと提携し、エイドリアン・ニューウェイが設計に関わる高性能スポーツカー「AM-RB 001」の開発計画を発表した[1](のちに「ヴァルキリー」と命名)。また、アストンマーティンはレッドブルのスポンサーとなり、2018年にはタイトルスポンサーに就任して「アストンマーティン・レッドブル・レーシング」の名でF1に参戦した。

2019年6月、スポーツカーレースFIA 世界耐久選手権(WEC)において2020-2021シーズンより最高峰クラスにル・マン・ハイパーカー規定が導入されることが発表されると、アストンマーティンとトヨタがワークス参戦を表明した[2](2021年はアストンマーティンのル・マン24時間レース参戦100周年にあたる[3])。トヨタはプロトタイプ(純レーシングカー)の開発を選択したが、アストンマーティンはヴァルキリーのサーキット走行専用モデル「AMR Pro」をベースに開発することを選択し、カスタマーへの供給も視野に入れているとした[4]

2020年、ローレンス・ストロール率いるコンソーシアムがアストンマーティンを買収したことで状況は変化した。ストロールは所有するレーシング・ポイントを改称し、2021年より「アストンマーティンF1」としてF1にワークス参戦することを決定。レッドブルとのスポンサー契約を2020年一杯で終了するとともに、WECのハイパーカープログラムを再検討し、参戦を保留すると発表した[5]

2023年10月4日、アストンマーティンは一転して計画の再始動を発表し、2025年よりWECのハイパーカークラスと北米のウェザーテック・スポーツカー選手権 (IMSA) のGTPクラスにダブルエントリーすることを表明した[6]。開発はアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ (AMPT) とカナダのマルチマティックが提携して行い、チーム運営はWEC / IMSAでアストンマーティンのグループGT3車両を走らせているアメリカのハート・オブ・レーシング英語版 (THOR) をパートナーに迎える。

2024年6月、「ヴァルキリー AMR-LMH」2台体制でのWEC参戦を確認[7]。7月にシルバーストンシェイクダウンを行い[8]、その後はヨーロッパ・中東・アメリカのサーキットで約15,000 kmのテスト走行を重ねた。

2025年2月、シーズン開幕前に公式ローンチを行い、WEC参戦車はアストンマーティンのイメージである「緑」、IMSA参戦車はハート・オブ・レーシングのイメージである「青」を基調としたカラーリングを採用した[9]。なお、WECのエントリーリストでは車名から「AMR-LMH」が無くなり、単純にアストンマーティン・ヴァルキリーと登録されているが、広報担当者は「この表記の変更は、レースカーと、ベースとなるロードカーをより近づけるために行われたもの」と説明している[10]

なお、ベースカーを設計したエイドリアン・ニューウェイは2025年3月にレッドブルからアストンマーティンへ移籍したが、2026年の新レギュレーションに向けたF1マシンの開発作業に集中しており、本プロジェクトには関わっていない。

仕様

ル・マン・ハイパーカー (LMH) 規定の車両は、プロトタイプ(純レーシングカー)を設計するかロードカー(ハイパーカー)をベースにするか選択式であるが、2025年時点でアストンマーティンのみが後者を選択している。また、V6ターボエンジン+モーター(ハイブリッド)というパワートレインが多い中で、自然吸気V12エンジン(モーターなし)という選択も独自性がある。

コスワース製の6.5 L V12エンジンはロードカー仕様で最高回転数11,000 rpm、最高出力1,000馬力を超えるが、LMHのレギュレーションでは最高出力がトータル500 kW(680 PS)に制限される。エンジンへの負荷が軽くなる分、耐久レースに欠かせない燃費性能が開発の中心になった。モータースポーツ責任者アダム・カーターは「トルクカーブを調整し、エンジン回転数を落として摩擦損失を低減、燃費を向上させることが可能になった」と述べている[9]

ロードカーに搭載されているハイブリッドシステムはパッケージ面や重量の問題があり、レースカーには搭載されていない[11]。ロードカーのモーターは後輪アシスト、LMH規定は前輪アシストという違いもある。

レース活動

2025年

2024年11月、FIA 世界耐久選手権(WEC)に参戦する最初のドライバーとカーナンバーが発表され、007号車にハリー・ティンクネル、009号車にアレックス・リベラス英語版がそれぞれエントリーされた。IMSA スポーツカー選手権においてはデイトナ24時間レースをスキップし、テストと開発を継続する[12]。2025年2月、残るドライバーラインアップが発表された。WECでは007号車にトム・ギャンブル英語版が、009号車にマルコ・ソレンセン英語版が加入。また、ル・マン24時間レースを含む複数のレースではロス・ガン英語版が007号車に、ロマン・デ・アンジェリス英語版が009号車にそれぞれ合流し、3人目のドライバーとして参戦する。IMSAにおいては、デ・アンジェリスとガンの2名がレギュラードライバーとして23号車をドライブし、セブリングにおいてはリベラスが3人目のドライバーとして参戦した[13]

戦績

FIA 世界耐久選手権

チーム クラス No. ドライバー Rds. 1 2 3 4 5 6 7 8 Pts. Pos.
2025 アストンマーティン・THOR・チーム ハイパーカー 007 ハリー・ティンクネル All QAT
Ret
IMO
18
SPA
13
LMS
13
SÃO
16
COA
FUJ
BHR
2 8位
トム・ギャンブル英語版 All
ロス・ガン英語版 1, 4
009 アレックス・リベラス英語版 All QAT
17
IMO
17
SPA
14
LMS
11
SÃO
13
COA
FUJ
BHR
マルコ・ソレンセン英語版 All
ロマン・デ・アンジェリス英語版 1, 4

ウェザーテック・スポーツカー選手権

チーム クラス No. ドライバー Rds. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Pts. Pos.
2025 アストンマーティン・THOR・チーム GTP 23 ロマン・デ・アンジェリス英語版 2-6 DAY SEB
9
LBH
8
MON
10
DET
8
WGL
9
ELK
IMS
PET
1211* 11位*
ロス・ガン英語版 2-6
アレックス・リベラス英語版 2

ル・マン24時間レース

チーム クラス 車番 ドライバー 周回数 総合
順位
クラス
順位
2025
英語版
アストンマーティン・THOR・チーム ハイパーカー 007 ハリー・ティンクネル
トム・ギャンブル英語版
ロス・ガン英語版
381 14位 14位
009 アレックス・リベラス英語版
マルコ・ソレンセン英語版
ロマン・デ・アンジェリス英語版
383 12位 12位

脚注

  1. ^ レッドブル&アストンマーチン、ハイパーカーAM-RB 001を発表 - autosport web・2016年7月6日
  2. ^ WEC:2020/21年、トヨタとアストンマーティン参戦でメーカー対決復活。サプライズは続くか - autosport web・2019年6月19日
  3. ^ 【ル・マン24時間】アストンマーティン“Valkyrieハイパーカー”で2021年の総合優勝狙う - TopNews・2019年6月15日
  4. ^ WEC:フォードもハイパーカー参入か? 7月にGT進化版を公開へ。アストンはプライベーター供給も視野に - autosport web・2019年6月28日
  5. ^ アストンマーチン、来季のLMHクラス不参加を正式発表「我々の立場を再評価する」 - motorsport.com日本語版・2020年2月21日
  6. ^ アストンマーティンのWECハイパーカー計画が再始動。2025年ル・マンに『ヴァルキリー』で挑む - autosport web・2023年10月5日
  7. ^ アストンマーティン、2025年WECハイパーカー参戦を確認。2台のヴァルキリーAMR-LMHが登場へ - autosport web・2024年6月14日
  8. ^ アストンマーティン、V12エンジン搭載のヴァルキリーAMR-LMHをシェイクダウン。2025年デビューに向け本格的な開発テストへ - autosport web・2024年7月22日
  9. ^ a b WEC開幕戦でデビューする「アストンマーティン ヴァルキリー AMR-LMH」が正式ローンチ【動画】 - GENROQ Web・2025年2月7日
  10. ^ ヴァルキリー“車名変更”の理由/トヨタのリザーブは?/シューマッハーにコーチ帯同etc.【WECプロローグ初日Topics】 - autosport web・2025年2月22日
  11. ^ アストンマーティンがモータースポーツに灯す絶滅危惧種V12エンジンの火。WEC&IMSA最高峰に”鳴り物”入りで登場”. motorsport.com日本版 (2025年2月16日). 2025年5月30日閲覧。
  12. ^ アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ - autosport web・2024年11月21日
  13. ^ 2025年レースデビュー『ヴァルキリーLMH』のドライバーラインアップが確定/WEC&IMSA - autosport web・2024年2月5日

関連項目




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