ICO (ゲーム)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 09:33 UTC 版)
ジャンル | アクションアドベンチャーゲーム |
---|---|
対応機種 |
PlayStation 2 PlayStation 3 |
開発元 | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
発売元 | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
プロデューサー | 海道賢仁 |
ディレクター | 上田文人 |
デザイナー | 上田文人 |
音楽 | 大島ミチル |
人数 | 1人[注釈 1] |
発売日 |
PlayStation 2 2001年9月26日 2001年12月6日 アジア2002年1月13日 2002年3月20日 2004年1月1日 PlayStation 3 2011年9月22日 2011年9月27日 2011年9月28日 2011年9月29日 |
対象年齢 |
CERO:B(12才以上対象) ESRB:T(13歳以上) OFLC:G PEGI:7+ |
コンテンツ アイコン | 暴力 |
売上本数 |
PlayStation 3 24,031本[1] |
概要
角が生えたために生贄として謎の古城に閉じ込められた少年イコが、そこで出会った言葉の通じない少女ヨルダの手を取り、彼女を守りつつ共に古城から脱出する内容のアクションアドベンチャーゲーム。
キャッチコピーは「この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」[2]。この「手を繋ぐ」という動作は本作を特徴づけるゲームシステムとして組み込まれ[3][4]、本作の基幹となるビジュアルイメージにもなっている[5][6]。プレイヤーは必要に応じて「手を繋いでヒロインと共に先へ進む」状況と、「手を放して主人公を自由に行動させる」状況を切り替えながらゲームを進めていく。
ゲームの根本的な部分はパズル的な要素を含んだ仕掛けを解きながら道を切り開き先へ進んでいくという、従来のアクションアドベンチャーゲームの形式を踏襲するものであるが[4]、本作の開発は「単なるビデオゲームではないものを作る」という発想から出発しており、従来のビデオゲームにおける約束事として定着していた諸要素、例えば勝ち負けを競う要素や、キャラクターの強さやヒットポイントなどを示す画面上のパラメーターやアイコン類の表示、その他数々のゲーム的な演出といったものが排除されている[5][6]。
その一方で本作では、長大なムービーを用いて映画に似せるのではなく、かと言って膨大な作り込みによって大作感を出すのでもなく、あくまでプレイヤー自身がヒーローとなり、美しく作り込まれた世界の内側にいることを実感できるような方向での娯楽性が模索されており、ビデオゲームの双方向性を生かしつつの、目的に沿って絞り込んだ規模での世界の構築が行われている[2][4][5]。ムービーに頼った演出ではなく、プレイヤーが操作可能な要素内でキャラクターの挙動やカメラアングルが徹底的に作り込まれていることは、従来の他作品ではあまり見られなかった本作独自の特徴である[7]。
公式サイトによれば、その内容に好意的な感想を寄せたユーザーの間では、「安易に続編は作らないでほしい」という意見が多数を占めたとされる[5]。後に同じ開発チームの手によるPS2ゲーム『ワンダと巨像』が発売され、そのエンディングは本作で描かれた世界との繋がりを示唆するものとなっているが[6]、具体的な関連性がどのようなものであるかは受け手の想像に委ねる形となっている[8]。
ストーリー
生まれつき角を持つ少年、イコは、村のならわしに従い、生贄として岸壁に囲まれた島にそびえ立つ無人の古城「霧の城」へと幽閉される[9]。しかし偶然にも彼を閉じ込めていた棺のようなカプセルが壊れたことにより、自由に城の中を歩けるようになった彼は、城の北側にある塔[9]の檻に閉じ込められていた言葉の通じない少女、ヨルダと出会う。
ヨルダは城内を跳梁跋扈する黒い影のような化け物たちに狙われており、彼女を放っては置けないと感じたイコは、彼女の手を引き、城の南側にある城門[9]からの脱出を試みる。しかし、どうにか城門までたどり着いた彼らの前に、城の主を名乗ってヨルダを連れ戻そうとする化け物の女王が現れ、城門を閉ざしてしまう。イコとヨルダは城内へと引き返し、城の東西それぞれの端に位置する城門[9]を開くための仕掛けを作動させることを試みる。
城内は迷路のように入り組み、あちこちが崩れ落ちていたり、封印や仕掛けのある扉や障害物で塞がれたりしており、自由に通行することができない。ヨルダは城の随所にある封じられた扉を開くことができる力を持っていたが、イコほどには身体能力が高くなく、彼女を連れ去ろうとする影の化け物から身を守る手段も持っていない。イコは城壁や鎖をよじ登り、足を踏み外せば命にかかわる足場を渡り歩き、影の化け物からヨルダを守って戦いながら、ヨルダでも通れる経路を確保しつつ、彼女を外の世界へと連れて行くために奮闘する。
冒険の末に城門を開くことに成功する彼らだが、しかし物語の終盤において再び女王に脱出を阻まれ、ふたりは離れ離れとなってしまう。イコは連れ去られたヨルダを追い、単身で女王と対決することになる。
注釈
- ^ パッケージには明記されていないが、日本語版ではおまけ要素として、2周目のみ2人プレイに対応する。詳細は英語版と日本語版を参照。
- ^ ただし、これは日本語版で新たに追加された仕様である[5]。英語版では一度押すだけでよく、また日本語版でもメニューから設定を変更すれば英語版と同様の操作にすることができる。
- ^ 敵の出現は、ヒロインの悲鳴とBGMの変化によってプレイヤーに伝えられるため、急いで戻れば救出を試みることができるが、距離が離れ過ぎていれば戻っても間に合わずにゲームオーバーとなる可能性がある。
- ^ 前述のように、本作ではヒロインが不在の間はゲームデータをセーブできないため、この後はエンディングまでセーブすることもできない。
- ^ ただし、敵の攻撃で跳ね飛ばされて高所から突き落とされた場合はこの限りではないし、またラストボスの攻撃を受けると例外的にゲームオーバーとなる。
- ^ 具体的には、ラストボスとの戦いを含む物語終盤の戦闘は避けることができない。
- ^ 主人公の少年がやや小柄で、ヒロインがそれよりも長身であることは、本作の基幹となるビジュアルイメージとして上田文人がこだわりを見せている部分でもある[7][13]。
出典
- ^ エンターブレイン グローバルマーケティング局『ファミ通ゲーム白書2013 補完データ編(分冊版)』2013年7月11日 。2021年12月9日閲覧。
- ^ a b “ゲーム紹介”. ICO 公式サイト. ソニー・コンピュータエンタテインメント. 2011年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月9日閲覧。
- ^ a b 佐伯憲司 (2001年11月5日). “SCEI、「ICO」完成披露パーティを開催 試遊台で「ICO」を堪能”. Game Watch. インプレス. 2021年12月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 佐伯憲司 (2001年12月21日). “PS2ゲームレビュー ほどよい制限と魅せ方のシンクロが美しいアクションアドベンチャー「ICO」”. Game Watch. インプレス. 2021年12月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “上田文人(ディレクター)×海道賢仁(プロデューサー)『ICO』を振り返る”. ICO 公式サイト. ソニー・コンピュータエンタテインメント (2004年7月7日). 2011年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Chris Kohler (2006年3月14日). “『ICO』と『ワンダと巨像』:上田文人氏にインタビュー”. WIRED.jp. コンデネット・ジェーピー. 2016年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月22日閲覧。Chris Kohler (2006年3月14日). “『ICO』と『ワンダと巨像』:上田文人氏にインタビュー”. WIRED VISION. ワイアードビジョン. 2008年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g 蒼之スギウラ (2011年9月5日). “「ICO」&「ワンダと巨像」ファンのための超ディープな裏話満載――「Great Scene Sharing」キャンペーンプレミアムイベント”. ねとらぼ. ITmedia. 2021年12月9日閲覧。
- ^ a b c d 「インタビュー『ワンダと巨像』」『電撃PlayStation』第328巻、メディアワークス、2005年10月28日、2021年12月9日閲覧。 電撃プレイステーションVol.328で掲載されたインタビューの完全版。
- ^ a b c d “お城紹介”. ICO 公式サイト. ソニー・コンピュータエンタテインメント. 2011年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月9日閲覧。
- ^ “ICO”. SOFTBANK GAMES. ソフトバンクパブリッシング (2001年). 2021年12月9日閲覧。
- ^ a b “この手は離さない……「ICO」完成披露パーティ”. SOFTBANK GAMES. ソフトバンクパブリッシング (2001年11月5日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ 中島薫 (2001年12月15日). “ホームシアター+Playstation2の醍醐味 塔の中の姫君を助け出す ICO”. All About. オールアバウト. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g “『ICO』&『ワンダと巨像』の裏話満載! ノーカットでお届けする上田文人氏&外山圭一郎氏トークセッション”. ファミ通.com. エンターブレイン (2011年9月9日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ 解説書(マニュアル), p. 11.
- ^ 解説書(マニュアル), p. 4.
- ^ 日本語版の2周目で明かされるヨルダの台詞による。
- ^ 解説書(マニュアル), pp. 8–9, 13.
- ^ 解説書(マニュアル), p. 5.
- ^ ナ月俊由季「究極の"ゲームソング"50 後編」『アニソンマガジン』Vol.5、洋泉社、2008年7月10日、86頁。
- ^ ウワーマン (2021年12月6日). “PS2版『ICO』が発売20周年。少年と少女が手を繋いで冒険するシチュエーションに心打たれた傑作。切なげな雰囲気が漂う幻想的な風景が忘れられない【今日は何の日?】”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage. 2021年12月9日閲覧。
- ^ 週刊ファミ通 2021年12月16日号, pp. 10–49.
- ^ genDESIGN [@genDESIGN_Inc] (2021年12月9日). "『ICO』発売20周年を記念して、ギレルモ・デル・トロ監督よりお祝いのコメントをいただきました!" (ツイート). Twitterより2021年12月9日閲覧。
- ^ 週刊ファミ通 2021年12月16日号, p. 40.
- ^ a b c Ittousai (2007年11月29日). “プレイステーション2ゲーム『ICO』にGPL違反発覚”. エンガジェット日本版. Engadget 日本版. 2020年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月9日閲覧。
- ^ a b “『ICO』『ワンダと巨像』のPS3版が明日リリース!! リミテッドボックスも同時発売”. 電撃オンライン. アスキー・メディアワークス (2011年9月21日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ “SCE :名作「ICO」「ワンダと巨像」のPS3ダウンロード版を発売 31日から”. MANTANWEB(まんたんウェブ). MANTAN (2012年1月19日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ Steven Geraghty - IMDb(英語). 2021年12月9日閲覧。
- ^ “『ICO』(イコ)小説版 連載開始”. ICO 公式サイト. ソニー・コンピュータエンタテインメント. 2010年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月9日閲覧。
- 1 ICO (ゲーム)とは
- 2 ICO (ゲーム)の概要
- 3 ゲームシステム
- 4 登場キャラクター
- 5 作品解説
- 6 スタッフ
- 7 脚注
- ICO (ゲーム)のページへのリンク