聴音機 聴測

聴音機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/02 14:25 UTC 版)

聴測

聴測手は目標を聴測し続け、目標の高度と速度を計算手に伝える。さらに目標高度に対する風速と風向を算出し、第一修正機の風速・高度・風向目盛板を設定する。聴測結果は機械的に自動補正され、第二修正機のガラス盤上へ、投光機からの光線によって投影される軌跡を描画し、平均航跡を算出する。平均航跡の延長線と、速度に対する投光器投影の同心円の交点により、各時点での目標の現在位置を求めることができた。

水中聴音機

軍艦が水中に潜む潜水艦を探知する為に用いる聴音機は水中聴音機と呼ばれ、ソナーの一種であるが自らは音波を発しない受信専用のものとなる為、パッシブ・ソナーとも呼ばれる。空中聴音機と同じく複数のマイクロフォンにより水中の音を捉える仕組みであるが、単艦では概ねどの方向からどの程度の大きさの音が来るか程度しか分からない為、同時に複数の艦船で聴音を行い、その結果を基に三角測量から音源の正確な位置を割り出す戦法を採る事が多い。また、聴音機から聞こえる音の内容からその物体が何であるかを洞察する必要もしばしば生じる為、聴音機の担当員には高度な経験と知識が要求される。

水中聴音機は、レーダーと同様に自ら音波又は超音波を発して探知を行う水中探信儀(アクティブ・ソナー)と比較して、敵に逆探知される危険性が低い反面、水中聴音機が装備された艦船自体が放つエンジン音や、水面の波浪などの騒音にも測定結果が影響される為、水中探信儀よりも探知距離が短く、潜水艦よりも水上艦の方がより不利になる傾向がある。日本海軍九三式水中聴音機を例に取ると、潜水艦の場合は水中で静止中など最も条件が良い場合で15000mから30000mの探知距離を持つが、駆逐艦陽炎の場合8ノットで3200m、12ノットで1400m、14ノットで1000mであった。

日本海軍は主に潜水艦に水中聴音機、水上艦に水中探信儀を装備した。連合軍のうちアメリカ海軍は用兵の都合上アクティブ・ソナーのみを搭載する構成であった。日本海軍の水中聴音機は連合軍艦艇の装備しているアクティブ・ソナー(概ね800-1600m前後)と比較して装置単体ではダイナミックマイクを用いるために高性能であったが、艦艇の機関の振動対策などに問題があり実用的な探知距離では遅れを取った。また連合軍が整備に力を入れた、ソナーで探知した情報を連続的に記録・分析する周辺機器を欠いていた事や、ヘッジホッグなどの前投型の対潜迫撃砲、ひいてはソナーの探知結果を対潜兵器の照準と連動させる為の統合的なシステムを欠いていた為、個々の機器の性能や聴音員の技量は優れていてもその結果を対潜水艦戦闘に有効に生かす事が出来なかった[4]

地中の音響探知

要塞に対し、壕を掘って前進し、地中から爆破する戦術がとられたが、坑道内部から目標の方向を探知するために、日本軍は地中聴音機を開発した。八七式地中聴音機や、八九式木桿地中聴音機などがある。

八七式地中聴音機は方向角の測定誤差が約一度だった。これは聴音機2個と方向測定具1個から構成された。地中からの音は受音部に導かれ、内部に配置された錐体の慣性と、振動板の振動と空積を利用して振動を増幅した。使用方法は、左右の聴音機から音が同等に聞こえるよう聴音機を向け、左右の聴音機の作る直線と、垂直の方向を求めるものだった。


  1. ^ How Far Off Is That German Gun? How 63 German guns were located by sound waves alone in a single day, Popular Science monthly, December 1918, page 39, Scanned by Google Books: https://books.google.co.jp/books?id=EikDAAAAMBAJ&pg=PA39&redir_esc=y&hl=ja
  2. ^ 「聴音壕」戦争の愚かさ示す/岩手・花巻 敵機の音で「数」や「距離」聞き分け/少年らが情報、空襲警報発令『日本経済新聞』夕刊2018年8月10日・社会面掲載の共同通信配信記事(2018年8月14日閲覧)。
  3. ^ 障害者たちの太平洋戦争 - NHK
  4. ^ 対潜戦問答 - ジェネラル・サポート


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