海洋の自由 「航行の自由」作戦

海洋の自由

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/25 05:32 UTC 版)

「航行の自由」作戦

アメリカ

1979年よりアメリカ合衆国は、他国が領海や排他的経済水域といった海洋権益を過剰に主張していると判断した場合、その主張を認めないという意思表示をするため事前通告なくその海域を航行するという「航行の自由」作戦(FONOP: Freedom Of Navigation OPeration)を実施している[12]。英仏海軍も類似の活動を行っている(後述)。アメリカと敵対する国々に対してだけではなく、日本を始めとする同盟諸国に対しても同様に行われ[13][12]、2000年9月から2016年9月にかけて37か国が対象とされている[14][15][16][17]

この作戦によりアメリカの軍艦が南シナ海を航行することに中国は反発しており[18]、例えばトランプ政権になってから初めて南シナ海で実施された航行の自由作戦に対して、米艦が沖合を通過したミスチーフ礁の領有権を主張する中国政府は、外務省報道官が「アメリカ艦艇の行動は、中国の主権と安全を脅かし、不測の事態を招きかねない。我々は強烈な不満を表し、断固反対する」と述べた[19]

また極東ロシア沿海州ピョートル大帝湾付近で2018年12月5日に実施された航行の自由作戦に対して、ロシア国防省は「(米国の駆逐艦は)ロシア領海まで100キロメートルの距離にさえ近づかなかった」「(北朝鮮近海での)日常的な航行を示威行動だと名付けた。口先だけの偉業だ」とコメントした[20]

イギリス

イギリス外相が2017年7月27日に南シナ海に航空母艦の派遣を示唆するなど、同海域の航行の自由と国際法の尊重を中華人民共和国に求めている[21]。また、2018年8月31日にはアルビオン級揚陸艦一番艦「アルビオン」が西沙諸島(パラセル諸島)の周辺海域を航行するなど、積極的に関与している[22]

フランス

フランスは近年、南シナ海でのプレゼンスを強めており、2018年5月末に強襲揚陸艦ディクスミュード」とフリゲート1隻が、南沙諸島(スプラトリー諸島)と中華人民共和国が人工島を造成した一群の岩礁の周辺を航行している。年に3〜5回ほど同海域に艦船を派遣しているという[23]

日本

読売新聞』によると、日本の海上自衛隊護衛艦が2021年春以降、南シナ海で中国が領有権を主張する岩礁や人工島接続水域を複数回航行した[24]


  1. ^ a b c d 「海洋の自由」、『国際法辞典』、47頁。
  2. ^ a b c 山本(2003)、338-340頁。
  3. ^ a b c d e f g 杉原(2008)、138-139頁。
  4. ^ a b c d e f g h 山本(2003)、419-421頁。
  5. ^ 柳原(2000)、109-112頁。
  6. ^ 高林(1981)、301-306頁。
  7. ^ 柳原(2000)、116-119頁。
  8. ^ a b c 杉原(2008)、121-123頁。
  9. ^ a b c 山本(2003)、340-344頁。
  10. ^ 「公海に関する条約」、『国際法辞典』、85-86頁。
  11. ^ a b 柳原(2000)、124-125頁。
  12. ^ a b 望月(2016)、122-123頁。
  13. ^ 稲葉義泰 (2021年4月23日). “米「航行の自由作戦」対馬海峡での対象国は日本…なぜ? 同盟国相手でも実施するワケ”. 乗りものニュース. 2021年4月29日閲覧。
  14. ^ 望月(2016)、124頁。
  15. ^ U.S. Department of Defense. Freedom of Navigation (FON) Report for Fiscal Year (FY) 2016. http://policy.defense.gov/Portals/11/FY16%20DOD%20FON%20Report.pdf?ver=2017-03-03-141349-943. 
  16. ^ “中国含め22カ国・地域対象/米軍「航行の自由」作戦”. 産経新聞ニュースサイト掲載の共同通信配信記事. (2017年3月7日). http://www.sankei.com/world/news/170307/wor1703070022-n1.html 
  17. ^ 「米、海路の安全注視/航行の自由作戦 対象国増加/アジア周辺に重点」『読売新聞』朝刊2017年3月20日(国際面)
  18. ^ Bonnie(2012), pp.3-4.
  19. ^ “米「航行の自由作戦」中国政府が強く反発”. テレビ朝日ニュース. (2017年5月31日). http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000101586.html 
  20. ^ 露「口先だけ」と揶揄産経新聞』朝刊2018年12月7日(国際面)2018年12月11日閲覧。
  21. ^ 英国、南シナ海に空母派遣の可能性 中国反発” (2017年7月29日). 2018年10月11日閲覧。
  22. ^ 英、加速する「脱欧入亜」 中国・北朝鮮の脅威に対抗、EU離脱控えアジア接近”. 産経デジタル (2018年9月20日). 2018年10月11日閲覧。
  23. ^ 南シナ海でフランスが軍事プレゼンス強化、中国に対抗”. フランス通信社 (2018年6月15日). 2018年10月11日閲覧。
  24. ^ 日本版「航行の自由作戦」海自護衛艦、南シナ海で/中国けん制、昨春から複数回『読売新聞』朝刊2022年1月11日1面


「海洋の自由」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「海洋の自由」の関連用語

海洋の自由のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



海洋の自由のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの海洋の自由 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS