噴火警報 噴火警報の補足

噴火警報

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/04 20:43 UTC 版)

噴火警報の補足

噴火予報・噴火警報は火山の活動度を5段階に区分し警戒避難体制とリンクさせた気象庁の警報だが、より細かな変化や、避難を必要としない降灰の予報、日々の火山活動状況などは、以下に挙げる別の情報として発表される。特に、登山や火口周辺への立ち入りが可能な噴火予報(噴火警戒レベル1)の段階で、火山活動が高まったものの噴火警報(噴火警戒レベル2以上)への引き上げには及ばないような場合、「火山の状況に関する解説情報」でその旨が伝えられるため、留意が必要である。

  • 火山の状況に関する解説情報 - 火山活動が活発化している際、臨時にまたは定期的に発表。火山性地震や火山性微動の回数、噴火や噴煙などの活動状況を報告。注意事項や警戒事項を説明[9]
  • 噴火に関する火山観測報 - 噴火の際に逐次、発生時刻や噴煙の高さなどを報告[10]
  • 火山活動解説資料 - 通常は定期的に(毎月)、必要に応じて臨時に発表。図表を用いて、火山の活動状況を報告し、警戒事項を説明[11]
  • 週間火山概況、月間火山概況、地震・火山月報(防災編) - 火山活動の状況や警戒事項を定期的に、全国まとめて、あるいは地方毎に報告[11]
  • 降灰予報 - 噴火で火山から離れた地域に火山灰降下が予想される際、臨時にまたは定期的に発表[12]
  • 火山ガス予報 - 噴火で居住地域に有毒の火山ガスが到達すると予想される際に発表[13]

詳細は気象庁のページ「気象庁が発表する火山に関する情報や資料の解説」を参照。

噴火警報・噴火予報の意味と防災

噴火警報の運用開始以前は、災害の危険性や情報の意味を分かりやすくするため、おおむね「緊急火山情報」が警報、「臨時火山情報」が注意報、「火山観測情報」が危険度が低い場合の情報という具合で扱われてきた。しかし、情報の分かりにくさは残っていたため「緊急-」と「臨時-」の混同が起きていた。また、噴火予知の精度が低かったため、噴火と情報発表のタイミングがまちまちとなり、避難の開始や立入禁止の設定などが早過ぎたり遅過ぎたりという例が発生していた。2000年の有珠山噴火のように「緊急火山情報」で的確に避難が行われた例もあれば、同年の三宅島・雄山噴火のように「緊急火山情報」が早くから出されながらも大きな噴火が起きず、一方で災害の発生する恐れがあるような活動の際に「緊急火山情報」が出されなかった例もあった。

こういったことから、既存の情報体制に対する非難が強くなり、減災を目指して新しい情報体制を構築することとなった。

現在の噴火警報・噴火予報は、気象業務法が規定する「警報」「予報」と明瞭に対応している。噴火警報は「警報」、噴火予報は「予報」に当たる。「注意報」に関しては、現在の科学では、注意報を発表するにふさわしい状況と警報を発表するにふさわしい状況を区別することが難しい(=事例によって可能・不可能がある)ことから、注意報を発表するにふさわしい状況でも即「警報」となり、噴火警報がその役割を全てカバーしている。

噴火警報と受け手の火山防災体制

火山災害の軽減を図るには、火山噴火の情報発表体制の確立とともに、情報の受け手の地元自治体が中心となった住民等の避難体制を構築することが重要である。しかし、2007年11月以前の火山情報については「火山の活動状況のみで表現されていて、住民に対する避難勧告の発令など具体的な防災対応との関連が明確ではない」「火山の活動状況と避難行動の開始時期等をリンクさせた具体的な避難計画や避難に関する検討体制が整備されていない」といった指摘があった。

このため、2006年11月より内閣府等の「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」において、気象庁の火山情報の改善や地元の自治体や機関等を中心とした火山防災体制のあり方について検討が行われ、2007年6月には、気象庁が発表する火山情報として、火山の活動状況に応じて必要な防災対応を「平常」「火口周辺規制」「入山規制」「避難準備」「避難」の5段階に区分して示した防災情報である「噴火警戒レベル」を導入するよう提言がなされた。こうした新たな考え方を踏まえ。気象庁では気象業務法を改正し、2007年12月から、全国の火山を対象に噴火警報が、噴火警報に対する入山規制や避難勧告の対象地域等が地域防災計画に定められた火山から噴火警戒レベルの提供が開始されることとなった。その後、同検討会では、2008年3月に、噴火警報の受け手の体制として、噴火時等の住民避難に関して平常時から関係機関が共同検討するための火山防災協議会(都道府県、市町村、気象台、砂防部局、火山専門家等から構成される)の設置等について記述した「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」が取りまとめられ、2008年4月に中央防災会議に報告された。その後、この「指針」と2011年の「霧島山(新燃岳)に関する政府支援チームの活動」を踏まえて、同年12月27日に中央防災会議において改訂された国全体の防災基本計画において「都道府県による火山防災協議会の設置」「平常時からの火山防災協議会での検討結果に基づく噴火警報と避難勧告の実施」等が明確に定められた。

噴火警報導入後初めて死者の出る火山災害となった2014年9月27日の御嶽山噴火では、噴火警報を発表しない噴火予報(噴火警戒レベル1の「平常」)の段階で水蒸気噴火マグマを伴わない砕屑物の噴出)と見られる噴火が発生、紅葉シーズンの土曜日の昼間で多くの登山者が山頂付近に居たことなどもあり、第二次世界大戦後の日本の火山災害では最悪となる50人以上の死者を出した。この噴火では、2週間ほど前から火山性地震の増加を観測し気象庁は「火山の状況に関する解説情報」を発表する一方で、山体の膨張や火山性微動が観測されず火山性地震もその後減少したことなどから噴火警戒レベルを引き上げず噴火警報の発表に至らなかった。毎日新聞の報道によれば、噴火の11分前に火山性微動、7分前に山体の膨張が観測されて警戒レベルを上げる準備を始めた矢先の噴火であったという。これに対して、警戒レベルの上げ方を再検証すべきという意見がメディアと火山学者双方から挙がった[14][15]

この教訓を受けて、火山噴火予知連絡会は「火山情報の提供に関する検討会」を設置し、分かりやすい火山情報のあり方や活動変化の際の情報伝達の方法の検討を行い、2015年3月に最終報告をまとめた[16]。また気象庁は、対象火山で活動する場合に活火山であることを意識できるよう、2015年5月18日から噴火予報(噴火警戒レベル1)に充てていたキーワード「平常」を「活火山であることに留意」とする表現の変更を行った。また、2015年8月から、噴火が発生した場合に登山者などに迅速な通知を行う「噴火速報」の発表を開始する予定である[17]


注釈

  1. ^ 水害土砂災害などにおいて地方公共団体市区町村)が発令する避難情報の名称変更に対応して、2021年令和3年)12月6日に「避難準備」から変更[8]

出典

  1. ^ a b c d e f g 噴火警報・予報の説明」気象庁、2014年11月2日閲覧
  2. ^ a b 気象業務法(昭和二十七年法律第百六十五号)」”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2017年5月31日). 2019年12月30日閲覧。 “2019年4月1日施行分”
  3. ^ a b 気象業務法施行令(昭和二十七年政令第四百七十一号)」”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2019年12月30日閲覧。
  4. ^ 5月29日に発生した口永良部の噴火活動について(2015年5月29日閲覧)
  5. ^ a b c 噴火警戒レベルの説明」気象庁、2014年11月2日閲覧
  6. ^ a b c 気象庁ホームページにおける気象情報の配色に関する設定指針 (PDF) 」5頁、気象庁、2012年5月24日、2019年3月19日閲覧
  7. ^ a b c 防災情報:噴火警報・噴火速報”. 気象庁. 2021年4月19日閲覧。
  8. ^ 噴火警戒レベル4のキーワード変更について - 気象庁、2021年11月18日発表
  9. ^ 火山の状況に関する解説情報の説明」気象庁、2015年5月22日閲覧
  10. ^ 噴火に関する火山観測報の説明」気象庁、2015年5月22日閲覧
  11. ^ a b 気象庁が発表する火山に関する情報や資料の解説」気象庁、2015年5月22日閲覧
  12. ^ 降灰予報の説明」気象庁、2015年5月22日閲覧
  13. ^ 火山ガス予報の説明」気象庁、2015年5月22日閲覧
  14. ^ 時論公論 「御嶽山噴火 ~なぜ大きな被害に~」”. NHKアーカイブス (2014年9月30日). 2014年11月2日閲覧。
  15. ^ 御嶽山噴火:気象庁「警戒レベル1維持」検討重ねた裏側」毎日新聞、2014年10月6日付
  16. ^ 火山噴火予知連絡会 火山情報の提供に関する検討会(2014年~2015年)」気象庁、2015年3月31日付、2015年5月22日閲覧
  17. ^ 御嶽山の噴火災害を踏まえた火山情報の見直しについて~「火山の状況に関する解説情報」等の変更~」気象庁、2015年5月12日付、2015年5月22日閲覧


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