交通 影響

交通

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 13:26 UTC 版)

影響

経済

交通の発達とその円滑な運営は経済にとって不可欠である。道路・鉄道・港湾・空港などはインフラストラクチャーのひとつであり、経済の基盤となっている。旅客および貨物の運輸業は経済の重要な一部分であり、さらに交通に用いるための自動車・鉄道車両・船舶・飛行機といった輸送機械の製造は大規模産業として経済に占める割合も大きい。また、公共事業による交通インフラの整備はそれ自体が重要な経済活動となっている[27]

貨物の大量輸送においてもっともコストが低いものは海運であり、さらに公海には海洋の自由が存在するため、公海へのアクセスがある国家はコストが低く隣国の政治情勢に左右されない安定した貿易ルートを確立することができる。このため、一般に内陸国は海洋を持つ国家に対して低い経済成長を余儀なくされる。スイスのように近隣国の経済が良く開発され、交通インフラも整っている場合は経済を成長させることも可能であるが、とくにアフリカでは海洋国の交通インフラや市場がまったく整備されていないため、それに依存せざるを得ない内陸国はより貧しくなることが多い[28]

グローバリゼーションの進展とともに、旅客・貨物ともに交通量は増大の一途をたどっている。観光目的の海外旅行やビジネス客などを主とする自国外への旅行者の総数は、1960年の1億人未満から、2015年には11億9,000万人にまで増大した。このうち出発国の近隣諸国への旅行客が77%を占め圧倒的に多いものの、遠隔地諸国への旅行者の割合は増大しつつある[29]。一方で、事故戦争疫病や災害によって交通が寸断されることは珍しくなく、この場合経済に大きな影響が及ぶ。2020年にはCOVID-19のパンデミックが起きて世界各国が出入国制限や都市封鎖、行動制限を実施した結果交通量が大幅に減少し、2020年3月末には世界全体の航空便数が前年同期比で37%にまで激減、世界の大都市でも交通量が軒並み30%程度にまで激減し[30]、経済に大きな打撃を与えた。

計画

環境

運輸部門における二酸化炭素排出は大きなものである。運輸部門のエネルギー消費のほとんどは石油によって占められており、2016年度には同部門の総エネルギー消費の90%以上は石油によってまかなわれていた[31]。これは、自動車や飛行機、船舶などの燃料が石油によってほぼ占められていることによる。電気やエタノールなどによる代替燃料開発も進められているものの石油に取って代わることは困難であり、2040年度予測でもこの状況にそれほどの変化はないと考えられている[32]。また、二酸化炭素以外にも自動車の排気ガスには各種汚染物質が含まれており、大気汚染の主因のひとつとなっている[33]。道路周辺の騒音・振動の問題も大きい[34]。こうした問題の解決策として、自動車交通を削減し各種公共交通機関の利用を促進することや、近距離においては徒歩や自転車といったさらに環境汚染の少ない交通手段への移行などが提唱されている[35]


  1. ^ a b c d e f g 峯岸邦夫編著『トコトンやさしい道路の本』日刊工業新聞社〈今日からモノ知りシリーズ〉、2018年10月24日、10 - 11頁。ISBN 978-4-526-07891-0 
  2. ^ 生田保夫「私的交通の意味」『流通経済大学論集』第14巻第1号、流通経済大学、1979年7月、48-72頁、ISSN 03850854NAID 1100071880492021年3月18日閲覧 <
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  7. ^ 「地域交通の計画 政策と工学」p20 竹内伝史・川上洋司・磯部友彦・嶋田喜昭・三村泰広共著 鹿島出版会 2011年10月10日発行
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  13. ^ a b c 「交通工学総論」p10-11 高田邦道 成山堂書店 平成23年3月28日初版発行
  14. ^ 「交通市場と社会資本の経済学」p257-258 杉山武彦監修 竹内健蔵・根本敏則・山内弘隆編 有斐閣 2010年10月1日初版第1刷発行
  15. ^ 靑野寿郎・保柳睦美監修『人文地理事典』 p.266 1951年 古今書院
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  23. ^ 「大帆船時代 快速帆船クリッパー物語」p194 杉浦昭典 中公新書 昭和54年6月25日発行
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  26. ^ 「新版 交通とビジネス【改訂版】」(交通論おもしろゼミナール1)p138-140 澤喜司郎・上羽博人著 成山堂書店 平成24年6月28日改訂初版発行
  27. ^ 「地域交通の計画 政策と工学」p2-4 竹内伝史・川上洋司・磯部友彦・嶋田喜昭・三村泰広共著 鹿島出版会 2011年10月10日発行
  28. ^ 「最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」p92-96 ポール・コリアー 中谷和男訳 日経BP社 2008年6月30日第1版第1刷発行
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  30. ^ https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52217073 「【図表で見る】 封鎖される世界 新型ウイルス対策に各地で行動制限」BBC 2020年4月9日 2021年3月30日閲覧
  31. ^ 「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p33 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行
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  33. ^ 「地域交通の計画 政策と工学」p14-15 竹内伝史・川上洋司・磯部友彦・嶋田喜昭・三村泰広共著 鹿島出版会 2011年10月10日発行
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