一次構造 一次構造の修飾

一次構造

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/09 08:23 UTC 版)

一次構造の修飾

上述した様々な修飾に加えて、一次構造に対する最も重要な修飾はペプチドの切断である。タンパク質は不活性の状態で合成されることがあるが、N末端やC末端によって活性中心がブロックされていることが多い。不必要なペプチドを切り落とすことで機能が発現する。

セリン(まれにトレオニンも)の水酸基やシステインのチオール基が、上流のペプチド結合のカルボニル炭素を攻撃して四配位の中間体を作るように、ある種のタンパク質は自分自身を切断することができる。中間体は安定なアミド基に開裂するが、分子間相互作用のため不安定になり、ペプチド結合の代わりにセリン、トレオニンとのエステル結合やシステインとのチオエステル結合を作る。この化学反応はN-Oアシル転移と呼ばれている。

ここで生じたエステル結合、チオエステル結合は次のような方法で解消される。加水分解され、アミノ基が新たなN末端になる。グリコシルアスパラギナーゼの成熟の時などに見られる。β脱離が起こり、新しいN末端にピルボイル基が生じる。Sアデノシルメチオニンデカルボキシラーゼのような酵素の補酵素を共有結合する際に使われる。分子内エステル交換が起こり、分岐ポリペプチドが生じる。インテインにおいては、新しいエステル結合はC末端のアスパラギンによってすぐに壊される。分子間エステル交換が起こり、ポリペプチド全体が変換される。ヘッジホッグタンパク質の自動プロセッシングの際に起こる。

タンパク質一次構造の歴史

タンパク質がαアミノ酸の直鎖だという説は、1902年カールスバートで開催された第74回ドイツ学術会議で、2人の科学者によりほぼ同時に提唱された。フランツ・ホフマイスターは、タンパク質のビウレット反応の観察に基づく発表を朝の講演で行った。数時間後にはエミール・フィッシャーがペプチド結合のモデルからの同様の発表を行った。

タンパク質がアミド結合を含んでいるという説は、1882年にはフランスの化学者であるエドアール・グリモーにより提唱されていた。これらのデータや、タンパク質が分解されるとオリゴペプチドが生じるという証拠があったにもかかわらず、タンパク質は直鎖で分岐のないアミノ酸のポリマーだという主張はすぐには受け入れられなかった。ウィリアム・アストベリーのような著名な科学者でさえ、熱振動を受けやすいこのような長い分子を支えるほどの強さを共有結合が持ちうるのか疑問に思っていた。ヘルマン・シュタウディンガーも、「ゴムは高分子からできている」と主張した1920年代に同じような偏見を受けている。

その他の仮説と否定

タンパク質の構造について、いくつもの別の仮説が提起されていた。

コロイドタンパク質説は、タンパク質はコロイド状態の微小粒子の集合体であるとする説である。しかしこの説は、1920年代にテオドール・スヴェドベリ超遠心の実験、およびウィルヘルム・ティセリウス電気泳動の実験でタンパク質が固有の質量を持っていることを証明したことにより否定された。

また別の説には、直鎖のポリペプチドはシクロール型の再構成 C=O + HN C(OH)-N を受けてアミド基が結合し、二次元的な繊維になると提唱したドロシー・リンチによるシクロール説がある。さらに別の一次構造に関する説はエミール・アブデルハルデンによるジケトピペラジン説、1942年に提唱されたピロール/ピペリジン説がある。結局これらの説は、フレデリック・サンガーインスリンの配列を解読し、マックス・ペルツジョン・ケンドリューミオグロビンヘモグロビン結晶構造を決定したことによって否定された。

二次構造、三次構造との関係

生体高分子の一次構造は多くの場合三次構造として知られる三次元的な形を決定するが、核酸やタンパク質のフォールディングは複雑すぎて一次構造から全体の形や二次構造を予測することはできない。しかし、同じファミリーに属するようなホモロジーの似たタンパク質の形が既知であれば形を予測することはできる。タンパク質のファミリーはクラスタリング解析を元に決められ、構造ゲノミクスプロジェクトは代表的な構造の一覧を作ることを目的としている。








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