ミッドフィールダー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/14 09:28 UTC 版)
センターハーフ
センターハーフ(英: Centre half)とは19世紀後半のツーバック・システムに始まる古い呼称であり、MFがハーフバックと呼ばれたころに中央のハーフバックを示すものであった。ツーバック・システムでは攻守に関わる要のポジションであり、攻撃ではFWの5人へのボールの配球、守備では敵のセンターフォワードの両脇から前線に進出するインナーフォワードのマークなどを主な役割としていた。前後位置による中央ではなく、左右位置における中央担当からの呼称であるため、アンカーのように中盤における最後列で完全な守備的なポジションの場合もあれば、セントラル・ミッドフィールダーと同義で、前線に攻撃参加するポジションを指す場合もある。イギリスにおいては1930年代に2-3-5のフォーメーションからセンターハーフが下がって3-2-5のフォーメーションに変化したことから中央のフルバック(ディフェンダー)をそのままセンターハーフと呼び習わしたので、イギリスでセンターハーフというとセンターバックのことを示す。
ウイングハーフ
かつてのウイングハーフ(英: Wing Half)とは中盤の選手が3人あるいはセンタハーフが3人で構成される時に左右に配置されるポジションである。古い呼称でMFがハーフバックと呼ばれたころに左右のハーフバックを示すものであった。ウイングという名前が付くがサイドプレイヤーというわけではなく、サイド寄りのセントラル・ミッドフィールダーといった趣が強かった。スペインではサイドハーフと纏めて同じポジションにされている。「インサイドハーフ」と呼称される場合も多い。80年代以降、フォワードが2トップのフォーメーションが主流になりウイングがなくなると、ウイングの役割を担うサイドのミッドフィルダーが「ウイングハーフ」と呼ばれ、ウイングの名に相応しい役割となったため、こちらの場合を正式な呼称とする場合が多い。
国 | 言語 | ポジション名 | 読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
英語圏 | 英 | Wing Half | ウイングハーフ | |
イタリア | 伊 | Mezzala | メッザーラ | 半ウイング |
スペイン | 西 | Interior | インテリオール | 内部 |
守備的ミッドフィールダー
守備的ミッドフィールダーとは特にMFが2列で構成される場合にDFの前、中盤の底に配置されるポジションである。前から数えると3列目となる。守備的という言葉が使用されているが、位置が後方に配置されているだけで、守備を専門に行う選手と限らず、攻撃の組立を行ったりと攻撃で重要な役割を担うこともある。守備的という言葉が相応しくないとして、まとめてセンターハーフと呼ばれることも多く、個別の名称を持たない国も少なくない。このポジションは役割などによってさらに細分化される。近代サッカーでは、守備ではピンチを未然に防ぎ、攻撃では開始位置になるとして、近代サッカーで最も重要なポジションとも言われている。
このポジションは戦術や配置される人数によって大きく役割が異なるが、基本的にはディフェンスラインの前でボールを持った相手やスペースのケアなどの守備やプレッシャーの弱い低い位置で長短のパスを捌いて攻撃を組み立てることが主な役割となる。またSBがオーバーラップした際のカバーリングや、セットプレーで空中戦に強いCBが前線に上がった時に相手のカウンターアタックへの対策として守備要員を務めたりもする。相手ゴールからやや離れた位置取りを基本とするため、欧州においては、ロングシュートやミドルシュートを狙う選手も多い。1人のみが配置される場合は前線に上がってしまうと守備に穴ができるため、守備専任の選手、あるいは攻撃においてもオーバーラップではなくロングパスで貢献する選手である場合が多い。2人配置される場合は守備が堅実な選手と、攻撃に貢献できる選手を1人ずつ配置することが多いが、攻守どちらかに偏った戦術を取る場合に同タイプの選手を2人置いたりもする。守備においては技術よりも、豊富な運動量や視野の広さが重視される。攻撃を組み立てを担う場合においては、二手三手先までを見越した組み立てができる戦術眼と、前線まで距離があるためロングパスを正確に蹴れる技術、また低い位置でボールを奪われると即ピンチに直結するため正確なボールコントロールが要求される。また、2008年頃のドイツ・サッカー協会、及びオーストリア・サッカー協会の監督ライセンス取得コースでは、このポジションでは後述のゼクサーとアッハターのコンビ、つまり守備型の選手と攻撃型の選手の組み合わせが最も理想的と指摘されている。
日本では中盤の底、あるいは守備的ミッドフィールダーと呼ばれるが、守備的という言葉が敬遠され、Jリーグの創成期に外国人選手により持ち込まれたブラジルのサッカー用語を用いてボランチ(ボランジ)と呼ぶことが多い。ちなみに、日本では人数によってワンボランチ、ダブルボランチなどと呼び分けるが、これは英語とポルトガル語が混ざった表現であるといえる。ポルトガル語ではそれぞれ、um volante(ウンボランチ), dois volantes(ドイスボランチ)と呼び分ける。
国 | 言語 | ポジション名 | 読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
英語圏 | 英 | Defensive Midfielder | ディフェンシブ・ミッドフィールダー | |
Defensive Half | ディフェンシブ・ハーフ | |||
日本 | 日 | 守備的ミッドフィールダー | しゅびてき - | |
中盤の底 | ちゅうばん - そこ | |||
イタリア | 伊 | Centrocampista Centrale | チェントロカンピスタ・チェントラーレ | |
Mediano | メディアーノ | 真ん中の人 | ||
スペイン | 西 | Medio Centro | メディオ・セントロ | |
Pivote | ピボーテ | 軸 | ||
ドイツ | 独 | Defensiver Mittelfeldspieler |
デーフェンズィーファー・ミッテルフェルトシュピーラー | |
フランス | 仏 | Milieu de terrain défensif | ミリユ・ドゥ・テラン・デファンシフ | 守備的中盤 |
Numéro 6 | ニュメロ・シス | 6番 | ||
ブラジル | 葡 | Volante | ボランチ | 車のハンドル、カルロス・ボランチ |
アルゼンチン | 西 | Volante Defensivo | ボランテ・デフェンシーボ | |
número cinco | ヌーメロ・シンコ | 5番 | ||
オランダ | 蘭 | verdedigende middenvelder | フェルデーディゲンド・ミッデンフェルダー |
攻撃型
守備的MFの中でも特に攻撃的で攻守両面で活躍する選手。万能型とも言える。また守備的MFを「センターハーフ」と呼ぶケースにおいて、このタイプの選手がそう呼ばれる場合が最も多い。
国 | 言語 | ポジション名 | 読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
イタリア | 伊 | Incursore | インクルソーレ | 襲撃者 |
スペイン | 西 | Pivote Segundo | ピボーテ・セグンド | |
ドイツ | 独 | Achter | アハター | 8番 |
フランス | 仏 | Harceleur | アルセルール | 執拗に攻撃する |
ブラジル | 葡 | Segundo Volante | セグンド・ボランチ | 第2のボランチ |
守備型
守備的MFの中でも特に守備を専門的に行う選手で、バイタルエリアと呼ばれるディフェンスラインの前のスペースを埋めたり、相手選手からボールを奪取することを主な役割とする。献身的なプレーを求められ、あまり目立たないポジションではあるが中盤の守備において非常に重要な役割を担う。センターバックと互換性の高いポジションで、守備に長けた選手はセンターバックもこなせることが多く、逆にセンターバックの選手が守備的ミッドフィールダーを任されることもある。アンカーも同義語に近い意味で呼称される場合がある。
国 | 言語 | ポジション名 | 読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
英語圏 | 英 | Holding Midfielder | ホールディング・ミッドフィールダー | Hold=守る |
Anchor | アンカー | 船の錨 | ||
イタリア | 伊 | Incontrisita | インコントリスタ | ぶつかる人 |
Interditore | インテルディトーレ | 阻止する人 | ||
スペイン | 西 | Pivote Defensivo | ピボーテ・デフェンシボ | 守備的なピボーテ |
ドイツ | 独 | Vorstopper | フォアシュトッパー | 前方のストッパー |
Zerstörer | ツェアシュテーラー | 邪魔する人 | ||
Sechser | ゼクサー | 6番 | ||
フランス | 仏 | Récupérateur | レキュペラトゥール | 回収業者 |
ブラジル | 葡 | Primeiro Volante | プリメイロ・ボランチ | 第1のボランチ |
ポルトガル | 葡 | Trinco | トリンコ | 掛け金 |
司令塔型
守備的MFの中でも特に司令塔的な役割を担う選手。比較的プレッシャーの弱い中盤の底から、広い視野と長短のパスを駆使して攻撃の指揮を執る。攻撃の開始となり、ラストパスではなく、それよりもひとつふたつ手前のパスを担当する場合が多いため、二手三手先まで先読みしゲームを組み立てる戦術眼と、長短のパスを自在にかつ正確に蹴り分ける技術が要求されるが、守備の役割は軽減されることも多く、プレッシャーも弱いポジションであることからフィジカルはさほど重要視されず、テクニックには優れるがフィジカルに劣るような選手も多い。役割や存在の呼称として「レジスタ」と呼ばれることも多い。ジョゼップ・グアルディオラ、シャビ・エルナンデス、セルヒオ・ブスケツ、フアン・セバスティアン・ベロン、ズボニミール・ボバン、ジュゼッペ・ジャンニーニ、デメトリオ・アルベルティーニ、アンドレア・ピルロなどが代表的な選手。
また日本では特に、生粋の司令塔型ボランチはほとんどおらず、攻撃的MFからポジションを下げてこの役割を務める選手が多い。理由の1つ目は、攻撃的MFにおいて自ら得点を狙う選手が多い欧米に対し、パスを出す役割の選手が多い日本人の場合、プロになってプレッシャーの厳しいトップ下で苦戦するよりも自由にパスが繰り出せるポジションであるボランチに移ることでパス能力を発揮しようとすること、2つ目の理由は、攻撃で自分の活躍を重視する若手時代から年齢を重ねるとフォアザチーム精神が成長し、守備や黒子役をキチンとこなせる様になり、守備の比率が増すボランチへ移動するケースが多いこと、3つ目は、高校などでは優秀な選手は花形の攻撃的なポジションを担当するため、プロ入りする優秀選手は攻撃的ポジション出身が比較的多いが、フォーメーション上は攻撃的MF1、守備的MF2くらいの割合であるため、トップ下のポジション争いをするよりも、ボランチに生き場所を求めるため、などが考えられる。名波浩、中田英寿、小笠原満男、小野伸二、遠藤保仁、中村憲剛といった優れた能力を持つパサー達もまさにそうであり、またパサーではないが伊東輝悦、稲本潤一、長谷部誠らも3つ目の理由でボランチにコンバートしている。
国 | 言語 | ポジション名 | 読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
英語圏 | 英 | Deep-lying Playmaker | ディープライイング・プレイメーカー | |
イタリア | 伊 | Regista | レジスタ | 演出家、映画監督 |
スペイン | 西 | Pivote Organizador | ピボーテ・オルガニサドール | 組織するピボーテ |
- ^ “【ミラン番記者】本田圭佑がセリエAで「MF」扱いされない理由”. サッカーダイジェスト (2017年5月17日). 2023年12月30日閲覧。
- ^ Royal Dictionnaire français-japonais (deuxième édition ed.). Ohbunsha. (2005). ISBN 4-01-075305-6 p.1251
- ^ とんとん『TACTICS VIEW 〜鳥の眼で観る一流サッカーチームの戦術事例〜』竹書房、2021年2月発行、19頁
- ^ 大塚一樹『最新 サッカー用語大辞典 世界の戦術・理論がわかる!』マイナビ、2014年10月発行、78頁
- ^ 大塚一樹『最新 サッカー用語大辞典 世界の戦術・理論がわかる!』マイナビ、2014年10月発行、78・79頁
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