ペプチド合成 歴史

ペプチド合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/07 00:43 UTC 版)

歴史

古くは、1870年代にSchallらが行ったアスパラギン酸の熱重合によるポリペプチド様物質の合成が知られている。1907年エミール・フィッシャーらはグリシンとロイシンから成るオクタペプチドを合成している。後述のように単に遊離アミノ酸を縮合しても二量体であるジケトピペラジン体が生成するだけなのでペプチドを合成したというのは一つの成果である。しかしこの頃の合成ではペプチドの一次配列の長さや順序はランダムでありオリゴペプチドを生成したという以上の意味を持たなかった。

一次配列の確定したペプチドを合成するには後述のように保護基を用いた逐次的ペプチド鎖延長する合成手法が必要である。1932年にBergmannはアミノ基保護基としてベンジルオキシカルボニル基(Cbz基、Z基)を開発することで一定配列のペプチドを合成した。Bergmannらは後にこの一次配列が確定したリジン合成ペプチドを用いて酵素トリプシンの基質特異性の研究で成果をあげることになる。

1950年代以降から1980年代まではペプチド液相法が発展を続け1953年にデュ・ヴィニョーによりペプチドホルモンのオキシトシン合成から1980年の酵素RNase Aの合成など各種生体ペプチドの配列決定からペプチドを合成することで生体機能を解析が発展した時代でもあった。

液相法とは別に1963年にロバート・メリフィールドらがペプチド固相合成法を開発し全く新しいペプチド合成法も確立している。メリフィールドはこの業績によりノーベル化学賞を授与された(1984年)。固相合成法は機械化が容易な手法な為、今日では配列情報から自動的にペプチドを合成するペプチド合成装置も開発されている[1][2]

今日ではサンプル量が必要であったり、簡単な設備で単純なペプチドを合成する場面では液相法が用いられるが、分子生物学研究の為にある程度の配列長を持つ任意のペプチドを合成する場合にはもっぱら固相合成法とペプチド合成装置が利用される。さらに、多様なオリゴペプチドが試薬として市販されたり、ペプチドの各種委合成サービスが提供されたりしているので、必ずしも現場でペプチド合成を行う必要もなくなってきている。

また、後述のように、固相合成法では合成が困難な長さのペプチドを合成したい場合やペプチド鎖に糖鎖修飾などが必要な場合は細菌線虫あるいは昆虫細胞に遺伝子導入するバイオテクノロジーを応用してペプチド合成がなされるようにもなった。


  1. ^ 1980年代には液相法によるペプチド合成装置も開発されたが今日では固相合成法に基づく装置にとって代わられた
  2. ^ 泉屋信夫ら、1.2.2.ペプチド合成の歴史、『ペプチド合成の基礎と実験』、pp4-5.丸善、1985. ISBN 4-621-02962-2.
  3. ^ Peptide coupling agents can cause severe allergic reactions, c&en
  4. ^ Kate J. McKnelly; William Sokol; James S. Nowick (2020), “Anaphylaxis Induced by Peptide Coupling Agents: Lessons Learned from Repeated Exposure to HATU, HBTU, and HCTU”, J. Org. Chem. 85 (3): 1764–1768, doi:10.1021/acs.joc.9b03280 






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