プロトケラトプス科 プロトケラトプス科の概要

プロトケラトプス科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/17 09:15 UTC 版)

プロトケラトプス科
Protoceratopsidae
Protoceratops andrewsi
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 :
周飾頭亜目 Marginocephalia
下目 : 角竜下目 Ceratopia
: プロトケラトプス科
Protoceratopsidae
学名
Protoceratopsidae
Granger & Gregory, 1923

系統発生

プロトケラトプス科というタクソンは1923年にプロトケラトプス・アンドレウシ Protoceratops andrewsi を記載する際に、他の角竜類と分けるためにウォルター・グレンジャーとウィリアム・キング・グレゴリーによって初めて提唱された。 そのタクソンは科、もしくは下目の分類階級であることを保証するのに十分なほど既知の角竜類(ケラトプス類)と比べて原始的だと考えられた。後にプロトケラトプス科は、プシッタコサウルスを含む原始的な角竜類全てを内包するとされたが、同科とするにはプシッタコサウルスはあまりにも原始的過ぎた。1998年、ポール・セレノはプロトケラトプス科の分類を見直し、「トリケラトプスよりもプロトケラトプスに近い全てのコロノサウルス類」と定義付けた。セレノの定義はプロトケラトプス科が単系統であるように定め、恐らく伝統的にプロトケラトプス科にぶち込まれていたに過ぎない恐竜たち(例えばレプトケラトプスモンタノケラトプス)を除外した。そういった恐竜たちは主に北米系と言われるレプトケラトプス科に再分類された。

セレノの2000年の研究では3つの属がプロトケラトプス科とされた。つまり、プロトケラトプス、バガケラトプスグラキリケラトプスである。これらの恐竜によって共有される派生形質には、狭い帯状の耳後頭突起、非常に小さな関節丘、そして高さのある前歯骨の隆起があげられる。プロトケラトプスとバガケラトプスはレプトケラトプス科同様、刃物のように平たいフリルを有する(Sereno 2000: 505)。いくつかの最近見つかった他の属にもプロトケラトプス科に含まれるものがある。2003年にウラジミール・アリファノフ Vladimir Alifanov はバガケラトプス科を設立し、それにはバガケラトプス、プラティケラトプス、ラマケラトプス、そしてブレヴィケラトプスが含まれるように定義した。しかしながら、セレノの分岐学的定義を考慮するとバガケラトプス科は自然分類群ではあるが、プロトケラトプス科の亜科とするが妥当であると考えられる。

周飾頭類


ステゴケラス



角竜類


カオヤングサウルス




プシッタコサウルス




リャオケラトプス




ヤマケラトプス





アーケオケラトプス




ケラシノプス





ウダノケラトプス



レプトケラトプス





モンタノケラトプス



プレノケラトプス









ズニケラトプス



ケラトプス科





グラキリケラトプス



プロトケラトプス



バガケラトプス











生理学

解剖学

プロトケラトプス科は、すべての角竜類に特徴的なフリルと嘴を持っている。彼らの鼻は特に高いくさび形で、鼻孔が高く狭くなっている。眼窩周囲の開口部は非常に小さく、頭頂骨の上にあり、上顎に頭骨を接続するスリットがある。この穴はプロトケラトプス科に固有のものである。 プロトケラトプス科は、口に食物を保持するための頬を持っていたかもしれない[7]。 彼らは、頬の筋肉の付着部と思われる非常に明瞭な上顎および下顎の隆起を有し、上顎骨に点在する多数の穿孔は、口先が鱗ではなく、角質で覆われていたことを示す。上顎と下顎の嘴は互いに向かって湾曲していた。より多くの派生的な角竜類と比較して、プロトケラトプス科は深く広い口腔を持っており、呼吸や体温調節に役立ったかもしれない。しかしプシッタコサウルスのような原始的な種類のそれはさらに広くなっている。先天的に1つの大きな腔であった鼻腔は、硬口蓋の形質によってプロトケラトプス科を二分する[8]

プロトケラトプス科の脊柱はS字型であり、脊椎は異常に長い神経棘を有し、尾骨には椎骨の高さの5倍の神経棘があった。尾骨の神経棘は、尾の高さを高くして平らにすることにより、尾の中央部では基部よりも長くなっていた。尾の真ん中は堅く真っ直ぐだった。尾全体は非常に水平方向に柔軟であったが、垂直方向の動きは限られていた[7]。頚部は、特に横方向において、移動性が制限されていたが、地面の植物を食べるのに不自由はなかった[3]

プロトケラトプス科は、プロトケラトプスの強膜輪に基づくと非常に大きな眼球を有したと思われる。鳥類の世界では、中程度の強膜輪はその動物が捕食者であることを示し、大きなそれは夜行性であることを示し、最大サイズは夜行性の捕食者であることを示す。目の大きさは感受性解像度を高めているので、捕食者と夜間の動物において重要な適応である。ロングリッチはこの構造が適応の結果であったにちがいないと主張する。プロトケラトプスの口やその他の構造は明らかに捕食者ではないことを示している。したがって、彼らが植物食であった場合、強膜輪はすべからく小さいはずである。その大きな目は夜間の生活に適応していたことを示しているかもしれない[9]

プロトケラトプス科は、頭骨とフリルの幅と高さの違いによって性的二形をもっていたと考えられている。[1][4] このフリルは性的なディスプレイに役立ったようだ。単に見せびらかすだけだったのか、実際に頭を押し合うなどしたかはわからないが、より大きなフリルをもつ者が競争において有利だったことは間違いない。フリルは恐らく現代のイグアナカメレオンが同類を攻撃する時のように、ディスプレイの際には鮮やかな色に染まったのかもしれない[1] 。Leonardo Maiorino と彼の研究チームは幾何学的形態計測によってプロトケラトプス・アンドレウシ Protoceratops andrewsi を分析し、雌雄に差はないとした[4]。一方、ドッドソンによる大型プロトケラトプスにおけるサイズの分析では、二形が確認された。フリルの長さと幅、頭頂孔、鼻骨の高さ、頭骨の幅、眼窩の高さ、鉤状突起、これらは全て性差に関連するとされた[10]

成長

プロトケラトプス科には三つの成長段階があった。幼体 juvenile、亜成体 subadult、成体 adult である。幼体はだいたい成体の3分の1の大きさでフリルと鼻骨の隆起も小さく、発達した頬骨をもたない。幼体を内包する巣が見つかっているが、これは子供がある程度の段階になるまで成体(直接の親とは限らない)が子育てをしたことを示す[11]。亜成体の段階では、個体は成体の3分の2になり、フリルも広く大きく成長する。頬骨は発達を始める。成体においてもフリルの成長は続き、頬骨は完全に角状になる。そして小さな鼻角が発達する[4]


  1. ^ a b c d e Ralrick, Patricia; Currie, Philip; Eberth, David; Ryan, Michael; Chinnery-Allgeier, Brenda (2010). New Perspectives on Horned Dinosaurs : The Royal Tyrrell Museum Ceratopsian Symposium. Indiana University Press. ISBN 9780253353580. 
  2. ^ Holtz, Thomas R. Jr. (2011) Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages, Winter 2010 Appendix.
  3. ^ a b c Tereschhenko, V (2008). “Adaptive Features of Protoceratopsids (Ornithischia: Neoceratopsia)”. Paleontological Journal 42 (3): 50–64. doi:10.1134/S003103010803009X. 
  4. ^ a b c d Males Resemble Females: Re-Evaluating Sexual Dimorphism in Protoceratops andrewsi (Neoceratopsia, Protoceratopsidae)”. pp. e0126464 (2015年5月7日). doi:10.1371/journal.pone.0126464. 2016年4月30日閲覧。
  5. ^ Fastovsky, David; Weishampel, David. “Dinosaurs A Concise Natural History”. New York: Cambridge University Press: 118–133. ISBN 978-0-521-71902-5. 
  6. ^ A New Mass Mortality of Juvenile Protoceratops and Size-Segregated Aggregation Behaviour in Juvenile Non-Avian Dinosaurs”. pp. e113306 (2014年11月26日). doi:10.1371/journal.pone.0113306. 2016年4月30日閲覧。
  7. ^ a b Osmolska, Halszka (1986). “STRUCTURE OF NASAL AND ORAL CAVITIES IN THE PROTOCERATOPSID DINOSAURS (CERATOPSIA, ORNITHISCHIA)”. Paleontologica 31 (1-2): 145–157. 
  8. ^ Galton, P.M. (2007). “The cheeks of ornithischian dinosaurs”. Lethaia 6 (1): 67–89. doi:10.1111/j.1502-3931.1973.tb00873.x. 
  9. ^ Tereschenko, V.; Singer, T (2013). “Structural Features of Neural Spines of the Caudal Vertebrae of Protoceratopoids (Ornithischia: Neoceratopsia)”. Paleontological Journal 47 (6): 618–630. doi:10.1134/S0031030113060105. 
  10. ^ Dodson, Peter (1976). “Quantitative Aspects of Relative Growth and Sexual Dimorphism in Protoceratops”. Journal of Paleontology 50 (5): 929–940. ISSN 1937-2337. 
  11. ^ Fastovsky, D.E.; Weishampel, D.B.; Watabe, M.; Barsbold, R.; Tsogtbaatar, K.H.; Narmandakh, P. (2011). “A NEST OF PROTOCERATOPS ANDREWSI (DINOSAURIA, ORNITHISCHIA)”. Journal of Paleontology 85 (6): 1035–1041. JSTOR 41409110. 


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