プロテインホスファターゼ1
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/22 16:24 UTC 版)
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PP1は触媒サブユニットと、少なくとも1つの調節サブユニットから構成される[3][4]。触媒サブユニットは30 kDaの単一ドメインからなるタンパク質で、他の調節サブユニットと複合体を形成する。触媒サブユニットは全ての真核生物の間で高度に保存されており、そのため共通した触媒機構が存在することが示唆される。触媒サブユニットはさまざまな調節サブユニットと複合体を形成することができる。これらの調節サブユニットは、基質特異性や細胞内区画化に重要な役割を果たしている。一般的な調節サブユニットとしてはGM(PPP1R3A)やGL(PPP1R3B)があり、これらの名称は体内で作用する部位(それぞ筋肉'muscle'と肝臓'liver')に由来している[5]。出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでは1つの触媒サブユニットがコードされているのみであるが、哺乳類には3つの遺伝子にコードされる4つのアイソザイムが存在し、そのそれぞれが異なるセットの調節サブユニットと結合する[4]。
PP1の触媒サブユニットはX線結晶構造解析による構造データが利用可能である[3]。PP1の触媒サブユニットはα/βフォールドを形成し、中心部のβサンドイッチが2つのαヘリカルドメインの間に挟まれた配置となっている。βサンドイッチの3つのβシートの相互作用は触媒活性のためのチャネルを形成し、金属イオンの配位部位となっている[6]。金属イオンはマンガンと鉄であることが同定されており、3つのヒスチジン、2つのアスパラギン酸、1つのアスパラギンがそれらに配位する[7]。
機構
触媒機構は2つの金属イオンと水分子が関与し、水分子がリン原子に求核攻撃を開始する[8]。
調節
PP1の潜在的阻害剤としては、下痢性貝毒で強力な発がんプロモーターであるオカダ酸、他にはミクロシスチンなどの天然に産生するさまざまな毒素が挙げられる[9]。ミクロシスチンは藍藻によって産生される肝毒素で、PP1触媒サブユニット表面の3つの領域と相互作用する環状ヘプタペプチド構造を含んでいる[10]。ミクロシスチン-LR(MCLR)とPP1との複合体形成によって、MCLRの構造は変化しないが、PP1触媒サブユニットはTyr276とMCLRのMdha部位との立体障害を避けるために構造が変化する[7]。
生物学的機能
PP1は肝臓での血糖値の調節とグリコーゲン代謝に重要な役割を果たしている。PP1はグリコーゲン代謝の相互調節に重要であり、グリコーゲンの分解と合成が反対方向に調節されるよう保証している。ホスホリラーゼaは肝細胞におけるグルコースセンサーとして機能する[11]。グルコースレベルが低いときには、活性型であるR状態のホスホリラーゼaはPP1を強固に結合している。このホスホリラーゼaへの結合はPP1のホスファターゼ活性を阻害し、グリコーゲンホスホリラーゼを活性のあるリン酸化型構造に維持する。そのため、ホスホリラーゼaは適切なグルコースレベルが達成されるまでグリコーゲン分解を加速する[11]。グルコース濃度が高くなりすぎると、ホスホリラーゼaは不活性なT状態へと変換される。ホスホリラーゼaのT状態への遷移によって、PP1は複合体から解離する。この解離によってグリコーゲンシンターゼは活性化され、ホスホリラーゼaはホスホリラーゼbへ変換される。ホスホリラーゼbはPP1を結合しないため、PP1の活性化状態が維持される[11]。
筋肉がグリコーゲン分解やグルコース濃度の増加が必要であるというシグナルを発すると、それに従ってPP1は調節される。プロテインキナーゼAはPP1の活性を低下させることができる。GMのグリコーゲン結合領域がリン酸化されると、PP1の触媒サブユニットの解離が引き起こされる[11]。触媒サブユニットの解離によって脱リン酸化活性は大きく低下する。また、他の基質がプロテインキナーゼAによってリン酸化され、PP1の触媒サブユニットに直接結合することで阻害を行う[11]。
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- 1 プロテインホスファターゼ1とは
- 2 プロテインホスファターゼ1の概要
- 3 疾患との関係
- 4 サブユニット
- 5 外部リンク
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