プリント基板 設計に関する技術

プリント基板

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/28 16:53 UTC 版)

設計に関する技術

プリント基板設計は、他の回路との相互接続、部品配置、機能、電気ノイズ、完成品の大まかな寸法などを考慮して誤差公差解析を行い、これら要件に従って回路図・ネットリスト(Netlist)を作成する。次に使用する材料・部品を記したBOM (部品表)を作る。材料の選択は、動作環境、耐用年数を考慮し、インピーダンス整合を考慮する。実装する電子部品の選択は、スペック・入手性・予算・サイズなどを考慮する。このほかドリルファイルなど製造するためのデータを盛り込まれ、基板の設計者と製造業者との間でやりとりされるデータは、ガーバーデータと呼ばれる。ガーバーファイルの出力には「Quadcept」、「EAGLE」などのCADEDAツールが用いられる。市販のCADツールは、設計データがデザインルール(設計規則)に違反していないかを検証するためデザインルールチェック(DRC,Design rule checking)などの機能を有する(en:Comparison of EDA software参照)。 製造性考慮設計(いわゆるDFM=Design for manufacturability)や動作温度範囲における熱解析においては、CAE有限要素解析(FEM)などのシミュレーションが活用される(ダッソー・システムズ社のAbaqusなど)。 このようなプロセスで設計された試作の検証を繰り返し、最適化を図る。

基板実装に関する技術

(エッチング)レジスト
プリント基板の製造工程において、基板を覆うように塗布あるいは貼付される物質、またはそうして形成された層のこと。役割としては、エッチング工程において、配線として残したい部分の銅に薬剤が接触しないようにする。かつてはポリアミドフィルムを貼付した後ドリルで穴を開けるなどしていたが、最近では感光性の組成物(フォトレジスト)を塗布して、パターン露光、現像(→フォトリソグラフィ)により、必要な部分のみを残す方法が主流である。エッチング工程の前に穴あけおよびスルーホールめっきを施している場合は、パターンを形成する部分とスルーホールめっきを保護するために両者をレジストで覆う必要があり、これをテンティング法と呼ぶ。
またパターンやスルーホールとなる部分に、はんだ(スズ-鉛めっき)を施してこれをエッチングレジストに使用するはんだ剥離法(パターンめっき法の工程の一部)という工法もある。この工法では、最終的にはんだを剥離しないでスルーホール部のみはんだを取り除いてPWBとして使用したり、パターン上のはんだの上に直接ソルダーレジストを塗布することではんだ剥離工程を省き多少コストを低くすることも行われていたが、ソルダーレジストに凹凸が発生することや応力などによりソルダーレジストが剥がれやすいため現在は一般的ではなく、代わって全面のはんだを剥離した後にテンティング法と同様にソルダーレジストを塗布する方法が一般的となっている。
はんだ剥離法でパターン形成後、パターン上のはんだを剥離しないでソルダーレジストを形成した例
ソルダーレジスト(Solder mask)
はんだ付けが必要な部分だけを銅箔として露出し、はんだ付けが不要な部分にはんだが付かないようにプリント板上に形成する熱硬化性エポキシ樹脂皮膜のこと。プリント板製造工程の最終段階で施工される。日本では主に緑色もしくは黄緑色のものが使われるが、海外生産品では青色や赤色その他の色も使われている。従来は緑色の顔料に塩素や臭素などの難燃性材料が含まれていたが、環境への対応としてこれらが不要な青色のレジストを用いた環境調和型(ハロゲンフリーまたはハロゲン/アンチモンフリー)のレジストが開発された。プリント配線板を焼却した際にダイオキシンなどが発生しにくいため、環境調和型プリント配線板基材と共に採用例が増えている。現在では緑色レジストでも塩素、臭素を含まないものが開発されている。なお、青色のレジストを使っていても環境調和型(ハロゲンフリーまたはハロゲン/アンチモンフリー)とは限らないので注意が必要である。
永久レジスト
フルアディティブ、パートリーアディティブ工法などでは、銅パターンを形成したくない部分にレジストを形成し、電解めっきまたは無電解めっきでレジストのない部分にのみめっきを析出させる。このときのレジストはめっきレジストとして機能すると共にそれ以降は剥離せずにそのままソルダーレジストとして使用するため永久レジストと呼ぶことがある。
エッチング
層間接続
ビアの種類 (基板の断面を横から見た図)
貫通ビア(Through Hole Via、スルーホール・ビア)
プリント板の各層を接続するため、基板の全層を貫通する垂直に穿った穴の内側に導体をめっきにより形成したもの。部品実装用の穴は通常、層間の接続を兼ねるが、それ以外の場所でも必要なら貫通ビアを設けて接続する。部品実装に使わずに層間接続だけの貫通ビアは、占有面積を小さくするために出来るだけ小さな穴径が要求される。めっきによる貫通ビア作成技術が確立する以前は、はとめ(鳩目)を用いていた。
IVH (Interstitial Via Hole)
通常のビアは基板を貫通するが、IVHは特定の層間のみを接続するビアである。それ以外の層にはビアが現れないため、集積度を向上させることができる。BVH(Blind via hole、ブラインド・ビア・ホール)またはBH(Buried hole、ベリッド・ホール)などと呼ぶこともある。IVHの形成方法はドリルによる穴開け、レーザー加工、エッチング加工が代表的。基板業界ではIVH多層基板といえばドリルによる穴開けタイプのことを指すことが多く、ビルドアップ基板とは区別される場合が多い。
アスペクト比
ビア・ホールの板厚()/穴径の値。めっき処理などの制約で細く長い穴は製造が困難になる。多層基板で板厚が厚い場合は、アスペクト比の制約から穴径が大きくなる。
マイクロ・ビア
穴径の小さなビアのこと。通常のビア・ホールに比べて穴径が小さいビアを指すが、明確な定義はない。レーザーによる穴あけであるレーザー・ビアがマイクロ・ビアの加工に向いている。
レーザー・ビア
レーザーによる穴あけ。波長によって、銅に反射されるため導体層までしか穴があかないものや、全てを貫くものがある。低出力レーザーで大きく深い穴あけでは長時間の加熱で基板の信頼性が損なわれる。順次穴あけなので穴数に比例して時間がかかる。
フォト・ビア
穴あけ以外の場所をマスクして露光、現像によって絶縁層を溶かし穴を形成するにより。その後、マスクを洗浄除去する。一括穴あけなので穴数が多くても加工時間は同じだが深い穴あけには向かない。銅を溶かさないので導体層で止まるため多層に穴あけを行なうには工夫が必要となる。
パンチング
プレス機などで全てのビア・ホールを一括穴あけする。やわらかい基板に向く[4]
ファインブランキングプレス
タレットパンチプレス
シェービングプレス
スルーホール実装(穴挿入部品実装)
アキシャル部品とラジアル部品 こういった形態の部品はリード部品と呼ばれる。
スルーホールに部品リード(足)を通して部品を実装する方式。ラジアル部品、アキシャル部品、DIP、PGA、ZIPなどのパッケージはこの方式で実装するための形態である。
表面実装
表面実装技術 (Surface Mounting Technology、SMT) はプリント板に実装用の穴を設けるのではなく、基板上に部品を載せて部品実装面の表面だけのはんだ付けで部品を固定・接続する技術。
リフローはんだ
パッドの上にクリーム状のはんだを塗布し、部品を載せた後、温風やフロリナート蒸気、赤外線で基板全体を加熱してはんだ付けする方法
フローはんだ
接着剤で基板に部品を貼りつけ、加熱して溶かしたはんだの槽に基板を浸してはんだ付けする方法

フローはんだは端子が狭ピッチ化したICの実装が困難であるなどの欠点があるが、リード部品を同時にはんだ付けできるため、リフロー・フロー工程を適宜組合わせて用いたり、工程に適した基板設計が行なわれる。1990年代以降の高密度実装の技術では主流である。表面実装用部品を (Surface Mounting Device、SMD) と呼ぶ。代表的なSMDとしてチップ部品、IC、LSIのSOP、QFP、BGAなどのパッケージがある。

ランド
元々、スルーホール実装用部品を挿入する穴の表面周囲に設けた円形や四角形のはんだ付け用の銅箔の呼称であったが、表面実装部品を実装するためのはんだ付け用銅箔もランドと呼ばれることが多くなっている。
パッド(フットプリント)
表面実装部品を実装するための、はんだ付け用銅箔。銅箔をそのまま空気にさらすと酸化されてしまい、部品実装時にはんだ不良が発生する恐れがある。これを防ぐため、基板製造後に表面処理を施してパッドを保護することが多い。一般的な表面処理として、はんだレベラー、金フラッシュなどがある。前者は安価、後者はパッド高さのバラツキが少ないためピン数の多い部品や、大電流を流す箇所に適している。
コンフォーマルコーティング(Conformal coating)
ドライフィルム(Dry film)

回路パターンの作成法

サブトラクティブ法

全面に銅箔を張られた基板から、不要な部分を取り除いて回路を残す方法。

  • 配線として残したい部分に、シルクスクリーン印刷などで防蝕膜となるインクや塗料を塗布して覆い(マスキング)、金属腐食性のある薬品(銅箔の場合、一般的に塩化第二鉄溶液を用いる)で腐食(エッチング)させて必要な回路を残す方式。プリント基板という名称の語源はここから来ている。
  • 印刷によるマスキングに換えて、フォトレジストを塗布した基板を用いる。配線パターン形状を撮影したマスクフィルムで覆って感光させてから溶剤で溶かし、配線パターン部分を残してエッチングする方式。(フォトリソグラフィフォトレジストの特性により、感光した部分が耐溶解性となる(ネガ型)のものと初期状態では耐溶解性で感光した部分が溶解性となる(ポジ型)のものがあり、それに応じてマスクフィルムはネガ/ポジを使い分ける必要がある。この技術は、半導体の製造にも応用されている。
  • 腐食液を適切に処理しないと環境破壊につながるという点や、マスク作成の工程が複雑などの短所がある。
  • 全面が銅箔の基板から、不要な部分を機械的に切削、取り除いて回路を残す方式は、薬品やマスクが不要である。試作などの少量製作の場合に、簡便に回路基板を製作できる。これは手作業でも行えるが、専用の機械を使うほうが便利である。
サブトラクティブ法による製造法の一例
光硬化樹脂を塗布した銅箔面に紫外線でパターンを露光する。現像後、加熱する(ベーキング)。その後、塩化鉄(III) 水溶液で不要な銅箔をエッチングする。
銅箔のエッチング時の化学反応は以下のとおりである。
塩化鉄(III) の3価の鉄イオンが銅に電子を与えて2価になり、は銅イオンになる。塩化鉄(III) は塩化鉄(II) になる。
エッチング終了後水洗、乾燥してからはんだ付けしない部分をコーティングする。穴を開けてから多層基板の場合は重ねてスルーホールを通す。その後所定の形状に切り抜く。

アディティブ法

絶縁体基板に回路パターンを後から付け加える方法。銅パターンを形成したくない部分にレジスト(めっきレジスト)を形成し、レジストのない部分に電解または無電解めっきを施すことでパターンを形成する。アディティブ法にはフルアディティブ法、パートリーアディティブ法、セミアディティブ法などがある。日立化成、日立化成エレクトロニクス、イビデンなどはフルアディティブ法を採用している(なお、これらの企業はサブトラクティブ法による製造も行っている)。

  • メッキ電鋳の技術を応用して、回路パターンを析出させて構成するもの。
  • 導電性ポリマーを絶縁基板上に線状に絞り出して塗布し回路を構成するもの。銅箔よりは配線抵抗が大きいため、主にディジタル回路基板の試作に用いられる。
  • マルチワイヤー
    • ポリイミドで絶縁被覆した銅線を自動布線機で縦横自由に配線して絶縁多層配線構造を形成するプリント配線板。デジタル回路のバス配線長を等しくしやすいなどの特徴がある。日立化成が採用している。

切断

プリント基板は、生産性を考慮して1m四方や1.2m四方程度の1枚の大きさの基板に複数の基板をまとめて面付けして製造されることが多い。あらかじめ基板には、各基板間にNCドリルやVカットで切れ目を入れておき、完成後に折ってそれぞれを分離する[4]


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