ブランケット ブランケットの概要

ブランケット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/30 15:14 UTC 版)

プラズマ内で生じたエネルギーの80%は高速中性子の形で炉壁に衝突してくる。この高エネルギー粒子である高速中性子を受け止めて背後への漏れを防ぐとともに、そのエネルギーを熱に変えて発電のエネルギーとするための、主な炉壁を構成する重要な装置である。同時にリチウム6を核変換して燃料となる三重水素(トリチウム)を生産する機能を合わせ持つことも計画されている。

減速材・冷却材

高速中性子は原子番号の大きな、つまりは原子核が重く大きな元素の原子核には相互作用をあまりせず、高速中性子自身と同程度の規模の粒子、つまり原子番号がきわめて小さく原子核が軽くごく小さな元素の原子核に反応する傾向が強い。

このため実際に高速中性子を主に受け止めるのは、ブランケットの支持構成材の原子核ではなく、ブランケット内を流れる高圧冷却水の水素原子や酸素原子と、下記の燃料生産で説明するリチウムの原子である。

この高圧冷却水は融合炉外部より冷却水循環系の配管やブランケット接続部を経由してブランケット内に導かれ、ブランケット内の曲がりくねった配管を流れる間に周囲の高熱を冷やし、自身は熱を帯びる。高水圧に加圧されているため配管内では沸騰することなくやがて十分に周囲の熱を奪ってブランケット接続部より冷却水循環系の帰路を通じて出て行く。この高圧高温の冷却水は、炉外で直接かまたは一度熱交換器(蒸気発生器)を通じて蒸気を発生させ、発電タービンを回して発電機を回転させ発電する。タービンを回した冷却水は復水器で水に戻されるか、または設計によっては再び熱交換器(蒸気発生器)に戻って加熱され低圧タービンを回してから復水器で水に戻される。復水器で十分に冷やされた冷却水は、循環ポンプにより加圧されて、冷却水循環系を通じて再び融合炉の冷却に向かう。

このしくみは、水を高速中性子の減速材として使いながら同時に冷却材として利用する点で、現在の軽水炉型の原子炉と全く同じである。

燃料生産

核融合炉の燃料として有力視されているのが重水素三重水素である。重水素は自然水中に含まれる水素の内の0.015%から抽出することでも生産が可能であるが、三重水素は自然界には検出限界程度の割合でしか存在せず抽出は不可能である。これらの事情から何らかの方法で三重水素を作らなければならない。

リチウム6を中性子にさらすとヘリウム4と三重水素の原子核が得られるので、ブランケット内に天然リチウム(リチウム6の天然存在比は約7.6%)を置き、ヘリウム4と三重水素のガスを発生させる。これを取り出して核融合炉の燃料として使用することが考えられている。最初の核融合ではおそらく核分裂炉で三重水素を生産しなければならないが、いちど核融合での運転が軌道に乗れば重水素とリチウムの供給だけで、三重水素の供給は必要がなくなる。また、1つの中性子をリチウムに当てて核分裂させると中性子が2つ出てくるので、中性子が倍増できるためこのことも効率をよくする。さらに中性子を発生させてエネルギー生産効率を高めるために、それに適した元素による中性子増倍材も検討されている。

三重水素原子は他の小さな原子同様に多くの物質中に浸透・透過してゆくため、この放射性物質が三重水素ガス回収系の途中や冷却水循環系に浸透した後で逃げ出したりしないように、設計時に考慮する必要がある。また重水素、三重水素、ヘリウムの各原子・分子は周辺部材に浸透することで水素脆化やヘリウム脆化を引き起こすのでこれらのガスに長期間曝される力学的負荷の高い部材は高分子化合物等の被覆処理などの対応が必要となる。




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