カルボジイミド カルボジイミドの生成

カルボジイミド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 06:41 UTC 版)

カルボジイミドの生成

カルボジイミドは尿素からの脱水反応、もしくはチオ尿素を原料として生成される。

カルボジイミドの使用

有機合成化学において、カルボジイミド基を含む化合物は脱水縮合剤として用いられる。良く使われる例としてはカルボン酸に対するアミド結合、もしくはエステル結合形成の促進である。脱水縮合を促進させ、かつ副反応を抑制するための添加剤として 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt) や N-ヒドロキシコハク酸イミド (HOSu) などが良く用いられる。

反応式 カルボジイミドを用いたアミド結合形成反応

カルボジイミドはアミンからグアニジンを生成する際にも使用可能である。

アミド結合形成の機構

カルボジイミドを用いたアミド結合の形成は1段階で進むが、その一方で様々な副反応が起こる。酸である 1 はカルボジイミドと反応し、O-アシルイソ尿素である重要な中間体 2 を生成する。2 はカルボン酸の活性エステルであり、他の物質との反応により容易に脱離し反応が進行すると考えられる。2 がアミンと反応した場合、目的の化合物である 3 と尿素誘導体である 4 を生成する。

これ以外にも 2 を出発点とした異なる反応が起き、目的のアミド縮合化合物とそれ以外の不要な副生成物が両方生成する。化合物 2 がカルボン酸 1 と反応した場合、カルボン酸無水物である 5 を生成する。この化合物 5 は活性が高いためアミンと反応し化合物 3 が生成する。不要な副生成物が生成する場合もあるが、この場合は化合物 2転位反応を起こし、安定な N-アシル尿素である化合物 6 を生成する。誘電率の低い溶媒であるジクロロメタンクロロホルムを用いた場合、このような副反応を最小限に抑えることができる。

反応機構 カルボジイミドを用いたアミド結合形成反応

また触媒量の HOBt を加えることで、活性エステルである O-アシル化 1-オキシベンゾトリアゾール体を生成するので、HOBtと共に利用する場合が多い。

ジシクロヘキシルカルボジイミド

DCC
構造式 N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)
IUPAC名N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
別名N,N'-methanediylidenebis[cyclohexanamine]
分子式C13H22N2
分子量206.33
CAS登録番号538-75-0
形状ろう状の固体
密度0.806 g/cm3, 固体
融点30–34 °C
SMILESC2(CCCCC2)N=C=N
C1CCCCC1

ジシクロヘキシルカルボジイミドDCC, 英:N,N'-Dicyclohexylcarbodiimide)はカルボジイミドの一種であり、カルボジイミドの中では初期に開発された。アミド結合やエステル結合の形成に良く用いられ、ペプチド固相合成法に用いられたこともあった。DCC はアミド結合形成において高い収率を得る事ができ、かなり安価に入手可能であるため広く用いられるに至った。

しかしながら DCC は重大な欠点も持っているため、特に必要のある場合以外では使用されなくなってきた。問題点としては

  1. 副生成物である N,N'-ジシクロヘキシル尿素はろ過である程度除去する事が可能であるが、それ以上の除去が難しい
  2. DCCは伝統的なペプチド固相合成法とは相性が悪い。副生成物である N,N'-ジシクロヘキシル尿素は脂溶性が高く且つ結晶性が高い為、ペプチドが結合しているレジンからの洗浄除去が困難であるからである
  3. DCCは強力なアレルゲン(より正確には生体高分子と結合してアレルゲンとなるアジュバント物質)であるため、皮膚に触れた場合は重いアレルギー反応を示す可能性がある

といったものが挙げられる。

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