アメリカ合衆国の社会 技術、装置および自動車

アメリカ合衆国の社会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 04:20 UTC 版)

技術、装置および自動車

アメリカ人は多かれ少なかれ新しい技術や新しい装置に魅力を感じることが多い。技術を通じて社会悪の多くが解決されるという考え方を共有する者が多い。現代世界の新しい技術革新はアメリカ合衆国でまず発明されたかまたはアメリカ人によって広く普及されたものも多い。例えば、電球航空機トランジスター原子力パソコンテレビゲームおよびネットショップであり、またインターネットの普及である。しかし日本と比較すると電子装置の極一部しかアメリカでは発売されておらず、トイレのような家庭用品にはアジアの一部の地域で見られるようなリモコンや電子スイッチがついていることも希である。

自動車は個人の私的日常生活であれ、芸術や娯楽の領域であれ、アメリカ文化に大きな役割を演じている。都市の郊外が開発され、労働者は都会まで通勤する必要性が生じたために自動車の普及を促した。2001年時点でアメリカ人の90%は車で通勤している[25]。エネルギーと土地のコストが低いことで比較的大型で強力な車が好まれた。1950年代や1960年代の文化はモーテルドライブインレストランなど自動車に関わるものが多かった。アメリカ人は自動車運転免許を取得することを通過儀式と見なす傾向がある。比較的少数の大都市域以外では、大半のアメリカ人が自動車を所有し運転することを必要と考えている。ニューヨーク市は世帯の半数以外が車を所有しない例外的存在である[25]

ドラッグ、酒および喫煙

アメリカ人のドラッグアルコール飲料に対する態度はこの国の歴史を通じて著しく変遷してきた。19世紀にアルコールが手に入りやすくなって消費され、その他のドラッグ使用を規制する法律も無かった。禁酒運動と呼ばれるアルコール飲料を禁止する運動が19世紀後半に起こった。アメリカのプロテスタントに分類される幾つかの会派と女性クリスチャン禁酒同盟のような婦人団体がこの運動を支えた。1919年アメリカ合衆国憲法修正第18条が成立しアルコールの販売が禁じられた。この禁酒法時代に全体としてアルコールの消費量は抑えられたが、以前は合法だった蒸留酒産業がアルコールを密売する犯罪組織に置き換えられただけだったので、アルコールを徹底的に禁じることは機能しないことが分かった。1931年にはアメリカ合衆国憲法修正第22条によって禁酒法は撤廃された。州や地方によっては「ドライ」(禁酒)を強制する権利を保持しており、今日でも一握りの郡部はドライのままである。

ベトナム戦争の時代には禁酒とはほど遠い方向に振れた。18歳という年齢で徴兵され戦争に駆り出されたが、まだビールを買うことができなかった。1970年から1975年にかけて50州のうち28州が法定飲酒年齢を18歳に引き下げた。引き下げ後まもなくして、若者をターゲットとしたユース・バーが流行し、飲酒施設を利用する年齢層が若年化する現象が起きた[26]。その後、多くの州が法定飲酒年齢を21歳に戻したが、その影響は残り続けている[26]

1980年以降のトレンドはアルコールとドラッグを大きく規制する方向に向かった。しかしこの時代の焦点は、徹底的にアルコールの消費を禁じようとするよりも、アルコールに起因する犯罪行為だった。ニューヨーク州は1980年に飲酒運転を厳しく取り締まる法を制定した最初の州になった。この時以来他の全ての州がそれに倣った。「ジャスト・セイ・ノー・トゥ・ドラッグズ」運動が1960年代のより放縦な精神に置き換わった。

公衆の場での飲酒を戒める風潮・施策によって、アメリカ社会での飲酒は家飲みが主流となっている[27]。第二次世界大戦終結後から20世紀末にかけてアメリカ全体で消費される酒類のうち、レストランや飲酒施設で消費される割合は90パーセントから30パーセントに落ち込み、飲酒施設の数も40パーセント減少している。しかし、アメリカ人一人当たりの酒の消費率にほとんど変化は無く、飲酒は他の薬物と同様に、公衆から隠れて楽しむプライベートな習慣となりつつある[27]

芸術

20世紀になると、映画や演劇といった映像、舞台芸術がヨーロッパだけでなくアメリカ合衆国で花開いた。映画産業においては、カリフォルニア州のハリウッドが世界を代表する映画製作のメッカとなり、チャールズ・チャップリン(イギリス出身)に代表される著名な俳優が世界各国から集うようになった。また、ヨーロッパでオペラあるいはオペレッタといった音楽劇が発達していた演劇界において、アメリカ合衆国ではミュージカルという音楽劇が発達し、ニューヨークのブロードウェーがそのメッカとして発展した。

音楽においては、19世紀中ごろにアフリカ大陸や南米大陸よりアメリカ合衆国南部に移住した人々によって、彼らの出身地のリズムから発生したブルースと呼ばれる独自の音楽が生まれた。ブルースには彼らの苦悩や絶望感がこめられており、彼らの心を乗せた哀愁漂う歌詞や旋律とともに大衆に広まった。やがて20世紀初頭にはジャズに発展し、西洋音楽との融合という形で広まり、即興演奏を中心とするビッグバンドの演奏形態によって酒場などのホールでの演奏を楽しませた。その他にもリズム・アンド・ブルース(R&B)ゴスペルカントリー・ミュージックなど、演奏の発祥とされる民族や宗教、地域の違いによって生まれた様々な音楽が時には融合し合い、アメリカ合衆国ポピュラー音楽は一層豊かなものとなっていった。


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    トニ・モリスンは1981年の小説青い眼が欲しいの中で、アメリカ合衆国における貧しい黒人に対する19世紀の人種差別の名残りを表現している。この小説は、貧しい黒人家庭の娘であるペコラ・ブリードラブが如何に発狂するまでに白人の美の標準を内面化したかを告げている。彼女の青い目に対する熱烈な願いは、彼女が住んでいる貧しく愛が無く差別される環境から逃げ出したいという願望を意味するようになっている。

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