軍配とは? わかりやすく解説

ぐん‐ばい【軍配】

読み方:ぐんばい

[名](スル)《「ぐんぱい」とも》

軍配団扇(うちわ)」の略。

軍勢配置し指揮すること。

「備へなき賊の軍兵一戦滅ぶべし。とくとく—し給へ」〈読・弓張月・残四〉

商売上の駆け引きをすること。

「さ、それも商ひの掛け引き。こりゃ、—といふもんぢゃ」〈滑・浮世風呂・四〉


軍配

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 17:16 UTC 版)

軍配を持つ武将像

軍配(ぐんばい)とは、かつて武将が戦の指揮に用いたうちわ形の道具の事である。相撲行司が力士の立合いや勝負の判定を指示するのに用いる道具として知られている。転じて、相撲のみならず様々な勝負事において用いられる言葉にもなった。

軍配団扇(ぐんばいうちわ)の略であり、本来「軍配」とは、所謂「軍配術」「軍配兵法」とも呼ばれる、戦に際して方角・日時を見極め、天文を読んで軍陣を適切に配置する法のことである。「軍敗」とも表記される。軍配術を行う者を軍配者という。

概要

室町末期以降、合戦の指揮官(大将)が采配を振る際に捧持する光景が見られるようになる。古くから軍兵の指揮を執るときは、総(ふさ)に柄(え)を付けた「采配」という道具が用いられたが、早くから実用性は薄く、もっぱら威儀を整えるために使用されるのみであった。室町期に入り集団戦術の隆盛に伴って、団扇に方位・方角や十二支陰陽・天文・八卦二十八宿梵字などを箔押しした軍配団扇が好んで用いられるようになり、武将や軍師の肖像にも多く描かれたものが残っている。当時の軍配者にとって、合戦の勝敗は本人のみならず一族の盛衰にもかかわる重大事であり、出陣の日取りや方角で吉凶を占い、天文を観察して未来を予測することは軍配者の大きな役割であった。団扇は古くから悪鬼を払い、霊威を呼び寄せるという意味合いで、神事などにも用いられてきたものである。

その形状は、円形、瓢箪(ひょうたん)形、楕円形などの板に柄(え)を付けたもので、羽に相当する板は漆(うるし)塗りの革や木、鉄製で、柄は鉄製の物が多く見られる。江戸時代以降は兵法軍学の隆興とともに流派ごとの形式化が進み、専ら儀容を繕うための装具として重みを増していったが、江戸末期の西洋軍学流入によって実用に供されることはなくなり、近現代では専ら大相撲の行司が用いるようになった。

相撲の軍配

行司の軍配

軍配といえば相撲行司が使用することで広く知られている。大相撲の「審判規則」(行司)の第一条では「行司が審判に際しては、規定の装束(直垂、烏帽子)を着用し、軍配を使用する。」とされている[1]。形状や材質に関する規則はない[1][注釈 1]。新入りの行司が最初に所有する軍配は先輩行司や部屋の師匠などから贈られる[1]。軍配を複数もち本場所用と巡業用に分けている場合もある[1]

立合いの際には、まず軍配で両者を割り、立ち上がる瞬間にこれを上げる。また勝敗が決するときに勝者の側へ向けて軍配を上げる。相撲に軍配が使われるようになった所以は、戦国時代、武士たちが陣中で相撲を取るときに、行司役の武将が勝敗を裁定する道具として使ったからであるという説がある。江戸時代、勧進相撲が始まった初期は扇子や唐団扇などが用いられていたが、元禄期に入って、それらのかわりに軍配が使われるようになった。相撲の軍配はケヤキなどで作られ、枠に金属を嵌め、柄は鉄や木などが使われた。

なお、勝負が決まったときに軍配を上げることから、一般にも勝利することを「軍配が上がる」、あるいは勝者と認めることを「軍配を上げる」というようになった。

生物種への名称の転用

生物学の分野では、軍配団扇のような、左右に広がっていて、先端部が丸みを帯び、先端部の中央がくぼんでんでいる形状を、軍配形と呼ぶことがある。以下はそれに拠って命名された種の例である。

家紋

唐団扇(とううちわ)
軍配団扇を象った家紋

軍配団扇・唐団扇(ぐんばいうちわ・とううちわ〈からうちわ〉)は日本の家紋「団扇紋」の一種である。

死者をよみがえらせる神通力を持つとされる鍾離権(しょうり けん・道教八仙の一人)の持ち物であり、軍神として信仰されていた摩利支天の持ち物であることから家紋に使用された。初見は『源平盛衰記』の児玉党が使用した旗指物の記述である。

使用
児玉党一族と児玉党に関係する一族のほか、岡部氏、猪俣氏、奥平氏などが用いた。

関連項目

  • 児玉党庄家長
  • 武田信玄
  • 軍師
  • 采配
  • 軍扇 - 日本・中国の軍師が持つ扇、諸葛亮などの軍師・策士が持っていた「鵝毛扇(ガチョウ羽の羽扇)」が有名。このことから策士の陰謀を「揺鵝毛扇(鵝毛扇を揺らす)」という成語が誕生した。
  • デンカ - 同社の商標は軍配をモチーフにしている[2]

脚注

  1. ^ a b c d 根間弘海「十両以上の行司の軍配」『専修経営学論集』第96号、専修大学経営学会、49-69頁、2013年3月15日。国立国会図書館書誌ID:024774864http://id.nii.ac.jp/1015/00004697/2019年10月30日閲覧 
  2. ^ 軍配印の由来”. The DENKA Way. デンカ株式会社 (2020年1月1日). 2023年10月11日閲覧。

注釈

  1. ^ かつては木村姓は瓢箪型、式守姓は卵型と形状が決まっていた。現代ではほとんどの行司が卵型の軍配を使う。
  2. ^ 現在は廃止。
  3. ^ 現在は廃止。
  4. ^ 現在は廃止。
  5. ^ 規定の原文では「青白」と記されているが、その文中の「青」は実際には緑色である。
  6. ^ 規定の原文では「青または黒」と記されているが、その文中の「青」は実際には緑色である。また規定上は黒でもよいことになっているが、実際にはほとんどの行司が緑を使う。

軍配

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 15:51 UTC 版)

式守家」の記事における「軍配」の解説

木村姓と式守姓での一番の違いは軍配の持ち方である。木村姓は手のひらを下に向けて軍配を握る。これを「陰の構えと言う一方、式守姓は手のひらを上に向けて軍配を握る。これを「陽の構え」という。またかつては、軍配の形も木村姓は卵型、式守姓は瓢箪型と決まっていた。(現在は卵型瓢箪型かは自由であるが卵型の軍配を使用する行司が多い。)

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軍配

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 01:11 UTC 版)

木村庄之助 (29代)」の記事における「軍配」の解説

幕内初期の頃までは木目基調の軍配を使用、9代式守錦太夫襲名後、黒漆塗りの「中道実相」と記された軍配を使用。(この軍配は後に式守錦太夫譲り団扇となる。)他にも黒漆無地の軍配を時々使用28式守伊之助昇格直前に、「平常心」と記された軍配を用いるようになり、その後立行司在任中、東京場所では主に千秋楽のみ(譲り団扇を使うため使用しないこともあった)、地方場所では15日通し使用していた(地方場所では、時々別の軍配を使用することもあった)。また、ほんの一時期ではあるが軍配の表面平常心」が書かれた面を裏面として使用していた時期もあった。 29木村庄之助昇格後は、東京場所で代々庄之助に伝わる譲り団扇交互に使用していた(期間は特にきまっていない)。

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