非公開証言と日本外務省による「強制性」認定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 09:24 UTC 版)
「日本の慰安婦問題」の記事における「非公開証言と日本外務省による「強制性」認定」の解説
宮澤内閣は1993年の「河野談話」発表以前に韓国政府の強い要請を受け、元慰安婦16人の証言を聞いたが、この時の元慰安婦の人選は韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会が行い、証言には福島瑞穂弁護士などの立会い人が付き添った。日本政府はこの証言に対する質問も、裏付け調査をすることも許されず、この調査における慰安婦の氏名も証言内容も非公開とされた。 この時内閣官房副長官であった石原信雄は、当時どれだけ歴史資料を探しても「日本側には強制連行の事実を示す資料も証言者もなく、韓国側にも通達、文書など物的なものはなかったが」、元慰安婦は強制性があると証言するので、「総合的に判断して強制性を認めた」と語っている。そのような判断に至った理由を「強制性を認めれば、問題は収まるという判断があった」と語っている。石原は、当時韓国政府は国家賠償を求めていなかったため、元慰安婦の名誉回復と日韓関係のために日本軍による強制性を認めたが、もし当時韓国側が日本政府による個人補償・国家賠償を求めていたら「通常の裁判同様、厳密な事実関係の調査に基づいた証拠を求めていた」と語っており、この非公開の「聞き取り調査」における元慰安婦の証言に裏付けはなく一方的な被害証言であったことを認めている。なお慰安婦を被告として裁判したケースはないため、偽証罪や事実認定が法的に適用されたことはない。 平林博内閣外政審議室室長は、1997年3月12日の国会での小山孝雄参議院議員の質問に「政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見出せなかった」と答弁、翌日の新聞では産経新聞をのぞいてこの「裏取りもせず、非公開のものだけで強制連行を認めた」とする政府答弁について報道するメディアはなく公聴会が開かれることもなかった。西岡力は金縛りにあったように「誰も、なにもいえなかった」として、これは1988年に梶山静六がアベック失踪について北朝鮮による拉致が濃厚と答弁したときの翌日に産経と日経以外のメディアが報道しなかったことと同じ構図だったと述べている。 この時の証言認定が河野談話の前提ともなり、また、韓国政府はその河野談話を日本政府が強制連行を認めた証拠として提示するようになる。 なお、河野洋平は河野談話発表後、「半世紀以上も前の話だから場所とか状況とかに記憶違いがあるかもしれない。だからといって、一人の女性の人生であれだけ大きな傷を残したことについて、傷そのものの記憶が間違っているとは考えられない。実際に聞き取り調査の証言を読めば、被害者でなければ語り得ない経験だとわかる。相当な強圧があったという印象が強い。」と、元慰安婦の証言の裏付けをとらずに証言は真正のものと認定している。
※この「非公開証言と日本外務省による「強制性」認定」の解説は、「日本の慰安婦問題」の解説の一部です。
「非公開証言と日本外務省による「強制性」認定」を含む「日本の慰安婦問題」の記事については、「日本の慰安婦問題」の概要を参照ください。
- 非公開証言と日本外務省による「強制性」認定のページへのリンク